祇園で過ごした子ども時代

次話: その弐 舞子さん

祇園の一日。


わたしは幼少期、おばあちゃんの家で過ごすことが多かった。
このおばあちゃんの家というのが、とっても不思議な異次元空間。
京都の中で最も京都らしい?
祇園のお茶屋。
そう、舞子さんや芸姑さんがいるあの「お茶屋さん」です。


お茶屋さんの一日は、まずお掃除から始まる。
玄関が広くって石張りの三和土になっているんだけど、そこを水を撒いてごしごし清める。
水は家の前の井戸水をがんばってくみ上げる。

冬は井戸水の方が水道水より暖かいので、その井戸水で、拭き掃除をはじめる。
二階の廊下が長い。
6畳の部屋が4つ。
10畳くらいでお茶を立てる炉が切ってある部屋がひとつ。
12畳くらいの大きな部屋がひとつ。
その部屋に続く踊り場も板の間で広い。

毎日毎日、雑巾で、だっだっだって拭き掃除をする。
物置に続く階段や一階に降りる二つの階段もごしごし雑巾をかける。

この仕事は「あば」と呼ばれている人の仕事なんだけど、わたしのお家ではおばあちゃんの妹が「あば」役。
おばあちゃんは「女将さん」
わたしは家の子ども。

だから、わたしもごしごしを手伝うんだ。

夕方からは、舞子さんや芸姑さんが挨拶に回ってくる。

舞子
こんばんわ、今日もよろしゅうおたのもうします。
おばあちゃん
へえ、おきばりやす。
次々、きれいどころが現れる。
一段落したら、夜の帳が下りる。

お客さまがいらっしゃったら…。
この続きはまた。

続きのストーリーはこちら!

その弐 舞子さん

著者の大川原 千代子さんにメッセージを送る

メッセージを送る

著者の方だけが読めます

みんなの読んで良かった!

STORYS.JPは、人生のヒントが得られる ライフストーリー共有プラットホームです。