クーデターで学校が休みになった日

小学生だった頃の話。当時は父親の仕事の関係で、ナイジェリアに住んでいたのだが、その頃のナイジェリアはビアフラ戦争とかいう民族戦争が終結してまだ間もない頃だった。
そんなある日のこと。
朝、学校にいく支度をしていると、何やら大人たちの様子が騒がしい。詳しい事情はわからないが、「今日は学校に行かなくていい」と口々に言われる。こいつは夢じゃあるまいか!?
ともあれ降ってわいた休日に、子供たち一同は大喜びだったのだ。自分もその当時はまだ珍しかった(しかも、ナイジェリアでは特に!)ファミコンで遊べるのがたまらなく嬉しかったのを覚えている。
さて、その翌日。
いつもの通り、スクールバスに乗り込んだ子供たちが学校に向かう途中、目にした光景と言ったら・・・。
道路の脇で戦車がひっくり返っているわ、ビルがぶっ壊れているわ、いつもは水平線が美しい港にバカでっかい潜水艦が停泊しているわの有様。子供たち全員、特に自分を含む少年たちが窓に張り付いて「すっげー!」と声を張り上げ続けていたのも無理はないだろう。
そして不思議なことに死体とか、血とか、そういったショッキングな光景は一切、目にしなかった。その分、高速道路でひっくり返っている戦車の姿はひどくシュールな物に感じられたわけだが。
後で親に見せてもらった現地の新聞では、なぜか追放されたはずの前大統領と、クーデターを起こした張本人である新大統領がにっこりと微笑み合いながら握手を交わす写真がでかでかと載っていたりして、何か知らんが大人の世界はずいぶんと複雑だなー、と感じたのを覚えている。
ともあれ「クーデター」っていうのは何かわくわくするような面白いお祭りのようなもの、とまだ少年だった頃の自分に深く刻まれてしまい、大人になるまでその勘違いに気がつかなかった。

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