ウジ虫に食べられたことがある

昔、アフリカに住んでいた頃の話。
ある日、突然脇腹が異様に痛み始めた。それはもう、キリとか刃物でザクザクと穴を開けられているような鋭い痛みである。マジでシャレにならない。
しかし、傍目から見ると脇腹には一切、外傷がない。なのに、寝ても覚めても痛い。シャワーを浴びているとき、うっかり温水を脇腹にかけると飛び上がるほどである。この痛み、経験したことのある人にしかわかるまい。
さて、2、3日たってもまるで痛みが引かないのでさすがに不審に思った両親が、オレを医者に連れていった。すると、その医者の先生、牛乳瓶の底みたいなメガネを外してまじまじとオレの脇腹を見ること数秒。「あーこりゃ、入っとるなーw」とか含み笑いをしながら言いやがる。
入っとる? 何が?とオレが疑問に思う間もなく、その先生、ごつい親指の腹を使って、無造作にぐいと押し出すようにオレの脇腹の肉からつまみ出したもの。
それは今にも孵化しそうなウジ虫。白くて、丸々と大きくて、頭のあたりに少しだけ数本の毛が生え始めている奴。
ハエの種類の名は、ウマバエ。「ウマバエ」で画像検索すると、大体、どういうヤツかわかると思う。
※ただし、食事時などはやめておくことを強くオススメする。責任を持てない。
ウジ虫を試験管に入れ、アルコール漬けにして、「ほーら、これが君の体の中に入ってたんだよーw」となぜか嬉しそうに見せびらかす医者。当時、10歳くらいだったオレはなんだか夢の中にいるような心地でその医者の顔と試験管を交互に見つめたものである。
ウマバエに寄生された原因。それは洗濯したTシャツを屋外に干しておいたこと。まずハエが洗濯物に卵を産みつける。そうとは知らずにTシャツを着たオレの体温で無事、卵は孵化。そして、極小のウジ虫が毛穴より皮膚の下に侵入。その後は・・・まあ、食べ放題のビュッフェの中で、ウジ虫がすくすく育った、というわけ。・・・まったく、どうりで痛いわけだ。オレの肉を返せ、コラw
さて、その後のしばらくの間、オレが学校で一躍人気者になったのは言うまでもない。どいつもこいつも、同級生も教師も、小さな穴が開いたオレの脇腹をやたらと見たがった。
先生の一人なんか、「記念写真〜♪」とか言いながら、嬉々としてオレの脇腹の写真を撮っていたが、聖職者としていかがなものかと今になって思わずにはいられない・・・。
当時、さすがに女の子たちは気味悪がって近寄ってこなかったのだが、脇腹の穴がふさがった今もなぜかその距離が縮まっていない。
まったくこの世は不思議なことばかりである。

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