~リストラの舞台裏~ 「私はこれで、部下を辞めさせました」 3

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上司から、部下に対するリストラを命じられた翌日、「正しいリストラの仕方」レクチャーを受けるために、役員が待つ会議室で所在なさ気に座っていた。

レクチャーの場に集められたのは、わたしと同じ名ばかり管理職が10名。

合法的な管理職が2名だった。普段は役員が(恐らく)正しい経営について

語るために仕様する豪華な会議室。

役員専用の会議室が、そのときばかりは重苦しい空気に包まれていた。

管理部門を統括する役員が、講師として前に立つ。

努めて和やかな口調で、リストラを実施する理由を述べていた。

景気が悪いことは理解していた。

それでも会社全体で考えると充分に利益の出る仕組みがあり、

受注額が減っているにも関わらず100億円以上の内部留保を抱える財務状況で
あった。先を見越しての経営判断という説明がなされる。

その話自体は、右から左に聞き流すことで退屈な時間を紛らわしてみた。

しかし、予想だにしなかったセリフが、熱弁を振るう役員の口から飛び出した。

「このまま在籍させても、本人のためにならない社員が大勢います。彼らの人生のために、このタイミングで退職を促すことが、人生を預かった会社としてしてあげられる最善の優しさなんです」

潤沢な資金を有する会社において、リストラ敢行の大義名分が成り立った瞬間だ。

歴史的瞬間に立ち会えたことに、熱いものがこみ上げてきた。

同時に、どうしようもない破壊的衝動が腹の底から沸き起こるのを感じていた。
わたしは、しがないサラリーマンである。会社の決定に従えないのであれば、

自らが退職をするしかない。本音をいうと、大義名分のもとでリストラを

行なう処刑人となるか、怒りに任せて退職をするか迷っていた。

どうにもならない不景気の最中。

退職して新たな仕事を探すことは、そう簡単ではないと理解していたからだ。

思い返せばなさけない話だが、その程度のサラリーマンだった。
ただ黙って話を聞いていたわたしは、会社の導いた大義名分を認めたということに

ほかならない。沈黙は肯定を表すという言葉の重みを感じていた。
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