研究室の教授に「卒論書かないけど、卒論の単位ください」と言った結果 

その日は、この上なく緊張していた。


いつものように、最寄駅に向かう俺。
ただいつもと違うのは大学入学以来、こんなに考え込んで通学したことないだろって位、セリフを繰り返してた。
頭の中で、昨夜(正確には電車に乗る数時間前まで起きていた)考えたことをくり返す。一言一句、そして何パターンも。
電車に乗り、数分間下を向きながら、何度も何度も、繰り返した。


「?やけに今日は生足多いな」と思い

ふと顔を上げると・・・


ガヤガヤ・・・うわー気づいてないよー。いたーい。ってかバカじゃね?(時間帯的に通学の女子高生とバッティング)

・・・女性専用車両!!!!!

お、おります!!!!
思わず叫んだ。でも、降りられないんだって。もう出てるし電車。
・・・ひと駅分、ハーレムとは到底言い難い視線を浴びた。
そんな大ポカをやりながら、いつものように大学へ。
そして教授の部屋の前についた。

「いいんじゃない?だってそうしたいんでしょ?」


教授
「いいんじゃない?あげるよ、単位。」
「・・・えっ(#゚Д゚)いいんですか?」
教授
いいんじゃない?だってそうしたいんでしょ?
「そ、そうなんですけど、もっとこう、なんていうか、すったもんだというか、俺昨日、結構考えたんですよね先生を説得するにはどうしたらいいかとか。だか・・・」
教授
じゃあ辞めようか?
いや、お願いします!ありがとうございました(そそくさ逃げる)
えっ?いいのこんなに簡単で?あっけなく終わった。
そんな形で、卒論を書かなくても単位をもらえることになった、俺。
ちなみにどんな環境かというと・・・
・遺伝子系の研究室に所属
・一緒につるんでいたのは同じクラスで12人
そのうち俺含め3人が学部卒で就職。その他は院へ進学。院へ進むやつはもちろん、就職した奴らも卒論はもちろん、書く。
・修得単位のうち卒論単位がもらえるかもらえないかで、4年の比重が大分変わってくる。(取らない場合は一般科目で5科目取らないといけなかったはず)
つまり、院に行こうが、行かなかろうが、大学生活を終えるには卒論を書くというのが当たり前。(というか、どの大学でも大体そうだと思うのだが。)

そんな、”割と卒論が必要な”環境で、「卒論書かないで単位くれ」っていうこと自体おかしいし、万一(いやもちろん、もらうつもりでいたけど)OKをだしてもらうには相当あーだこーだ言い合うはず・・・と思っていたのだが・・・。
と思っていた所に教授出現。

教授
あ、いたいた。なんかただ単位上げるのも癪だから、今からいう3つのこと守って。
と言い放った教授。

教授からの3つの指令


※()は聞いた時の俺の気持ちです。※
①時間あるときだけでいいから、基礎研究は手伝いなさい。
(まぁ確かに。。。相方にも迷惑かけるしな・・・)
②成績を落とすな
(これもわかる。万一教授会の審議になったときに、困るだろうし)
③週に一回来て僕と話をしてください。
(・・・(#゚Д゚)どゆこと?いや、そもそも先生だって週一いるかいないかじゃない?なのに先生捕まえて話せ?何言ってんの?)

思い返してみると、意味があった。


①時間あるときだけでいいから、基礎研究は手伝いなさい。
⇒これはどれだけ、タイムマネジメントがうまくできるかってこと。
特に時間を見積もることを覚えた。研究の下準備だけでも結構時間かかる。
その時間を計算して就活したり、自分でちょっとモノ売ってみたり、企画書作ったりするためには、スケジュールの前倒しと、当日のスケジュールに充てる時間の見積もりが必要。それを学べたのは大きかった。

②成績落とすな
これは大学時代の1つの結果を残せという意味はもちろん、「継続せよ」というある種挑戦状だったようだ。確かに研究はしなかったけど、間違いなく遺伝子のことに関しては、(当時は)勉強しきった感はあったと思う。つまり継続できた。

③週に一回来て僕と話をしてください。
一番謎だったこれ。最初はよくわからなかった。週一回先生を捕まえること自体がすっごく難しいのに。。。
ただやってみると、うまくいかなかった時に先生にいろんなことを話せたおかげで気持ちがリセット出来たり、自分の思考が整理出来たりと当時思ってもみなかった効果があった。
「ひとつのことに集中するものいいけど、客観的に見る時間をつくれ」ってこと
が言いたかったのだと思う。研究者としても大事なことだって先生は研究質の説明会のときに言っていた気がする。

「結局なんだっていいんです。夢中になれれば。」


教授
「僕はマスターまで進む必要はないと思うし、寧ろドクターだって行かなくてもいいと思っている。ようは、興味のあることに矢印をむければいい。それが”研究”であれば良いし、仮にそうでなかったら、自分のやりたいようにやればいい。」

あの時

「いいんじゃない?だってそうしたいんでしょ?」

って言ってくれたおかけで、本当にいろいろな経験や、一生付き合いたい友人もたくさん出来た。すっごく軽く教授に背中を押してもらったことで、後ろめたさなく、研究室もひとつの”居場所”にすることが出来た。本当に感謝。
毎年社販があるときに商品送ってるんだけど、タイミングが合わなくて電話でも話せていない。
そろそろ次のステップに進むことを考えてるし、会って感謝伝えてこないといけないなと、切に感じている。


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