アウトドア初心者が、アフリカで中古車を買ってテントを張りながら100日間旅をしてみた話<1>「プロローグ」

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26才だったボクは、南アフリカで中古の4輪駆動車を手に入れて彼女と二人きりで無計画の旅に出た。

100日にわたった旅を振り返ってみれば、ナミブ砂漠を縦断し、カラハリ砂漠を横断し、大陸を大西洋からインド洋まで横断し、毎日テントを張りながらアフリカ9カ国を走破した。

そのほとんどが未舗装の凸凹道であったが総走行距離は2万1000キロに上り、地球を半周したくらいの距離を運転したことになる。



これだけを聞くと、ボクが普段から自然と触れ合うのが大好きなアウトドア派であるかのように思ってしまうかも知れないが、それは完全に誤解である。

アフリカ旅行の直近でキャンプに行ったのはいつのことか、記憶の中を辿ってみたら小学生の頃まで遡ってしまった。

それ以来のキャンプともなると、26才のサラリーマンがランドセルを背負って通勤してしまったくらい久しぶりの事である。

通勤電車でサラリーマンがランドセルを背負っているのを見かけたら違和感を抱くように、ボクもアウトドア派呼ばわりされると違和感を抱くのは十数年というブランクのせいだ。

しかもよくよく考えてみると、一人でキャンプに出掛けるほど他人から憐れみを抱かれるような寂しい小学生期を過ごした記憶もないので、間違いなく誰か他の人と、しかも大人と一緒に行っているはずである。

ということは「己の力でテントを張ったことなど今までに一度もない!」と胸を張って断言しても許されるだろう。

そんなボクが26才にして本格的アウトドア・デビューを果たしたのは、素人のデビュー戦としては最適と言われている、あのアフリカ大陸だった。



当時、ボクは喜望峰で有名な南アフリカ共和国のケープタウンに留学していた。

勘違いしている人も多いが、アフリカでは至るところで野生の動物が闊歩しているわけではないし、至るところで槍をもった戦士が無邪気にジャンプしているわけでもない。

ケープタウンに限って言えば、本場に一度も行ったことがなかったボクが「ヨーロッパはきっとこんなところなんだろうな」と勝手に想像してしまうような街だ。

さらに人口比率では「カラード」と呼ばれる人たちが黒人よりも多く住んでおり、実に全人口の約半数を占める。

カラードというのは混血の人たちのことで、その中には17世紀頃に今のインドネシアから奴隷として連れて来られた人々の子孫「ケープ・マレー」も含まれている。

黒人は人口のわずか3割ほどで、残り2割が白人だ。

公用語だけで11言語あるこの国では、実に様々な民族が集まって「レインボウ・ネイション(虹の国)」を形成し、アフリカ・ヨーロッパ・アジアの文化が入り混じる不思議な雰囲気で他のブラックアフリカ諸国とは一線を画している。

内戦をしていない国の中では世界最悪とも言われる治安さえ脇に置いてしまえば素晴らしい国だ。

最初の頃こそ真面目に学校に通い、異文化の空気と仲間たちとの楽しい酒に酔う新鮮な毎日を過ごしていたボクだが、半年も過ぎる頃にはただ酒に酔うだけの毎日になっていた。

シャンペンを飲みながら授業を受け、昼からクラスメイトと安ワインを10本空け、陽が落ちたらバーに行くような生活はある意味でアフリカを満喫していると言えなくもないが、アフリカでなくても出来る。

マンネリ化していた生活を打破する目的もあったが、ボクはせっかくアフリカに来ているのだからアフリカっぽいことをしようと思い立った。


でも、「アフリカっぽいこと」って一体何だろう?


アフリカといえば・・・野生の動物?


野生の動物といえば・・・サファリ?


サファリといえば・・・アウトドア?


アウトドアといえば・・・キャンプ!!


そうだ、キャンプをしながら野生動物を見に行けばいいんだ!

残念ながらボクが住んでいたケープタウンは一般的なアフリカのイメージとは少しかけ離れていて、それなりに旅をしないとイメージと合致するようなアフリカには出会えない。

連想ゲームで簡単に答えが出てしまったが、問題はどのような形で実行に移すかだ。

アウトドアというのは硬派な娯楽であるはずだ。地平線まで続く広大なサバンナの中心で、生まれたての姿にガウンだけを纏い、ブランデーを転がしつつ葉巻をくゆらせて「地球って丸いよね」と呟いてしまうようなダンディズムこそアウトドアの真骨頂ではないのか。

それを、どこの馬の骨とも分からない人たちと一緒になってツアーで行ってはボクのダンディズムを遺憾なく発揮できない恐れがあるばかりか、万が一にもツアーメイトがチャラチャラした軟派な奴だったらアウトドアを冒涜することになりはしないかと心配だ。

そう考えると、己の力で行くしか選択肢は残っていなかった。

あとは行く手段が問題であったが、これは消去法で簡単に答えが出た。

自転車は漕ぐのが疲れそうだから却下。

バイクはずっと風に当たっていたら喉を傷めてしまいそうだから却下。

そうなると、自力で漕がなくても済み、風に当たらなくても済む自動車で決まりだ。

こうしてボクはアフリカで華々しくアウトドア・デビューを飾るという素敵な思いつきを早速実行に移すことにした。

もちろんボクだって、思いついたことを何も準備せずにいきなりぶっつけ本番で実行に移すほどバカではない。

そこには綿密な計画と周到な準備があったのだ。

自分で車を運転して行きたい場所に行き、キャンプ生活を送りながら普通の旅行者がなかなか訪れることが出来ないアフリカの深部に足を踏み入れるために必要なものは何か?



・・・・



まずは・・・



運転免許証だ・・・


酔っ払って南アフリカで日本の免許証を失くしてしまっていたボクは、計画を思い付いた時点では無免許だった。


読んでよかった
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海外経験は多少ありますが、アフリカも砂漠も未知で、新鮮でスリルがあります!文化的、歴史的な側面についての記述にも、知的好奇心ゆさゆさに揺さぶられました。

砂漠横断ってすごーく怖いイメージあります。途中で車が故障したら、って考えると...°Д°;;

砂漠のど真ん中で故障したら・・・行く前は考えてませんでしたが、実際には壊れました(笑) その話も後ほど書ければ・・・

17世紀に移住してきたアフリカーナー(オランダ系)や、その後に南アを植民地化したイギリス系が多いです。

コメントありがとうございます。徐々に続きを書いていきたいと思いますので、よろしくお願いします。

もの凄いバイタリティですね!憧れます!!
続きも必ず読みたいので楽しみにしています^^

小林さん、ありがとうございます。全10話を目指してたんですが、まとめるのが下手で全15話くらいになっちゃいそうですm(_ _)m

面白かったです!ありがとうございます.

深浦さん、コメントありがとうございます。南米・・・いつか行ってみたいです。

はい,ぜひ!

遠藤 譲

遠藤 譲の人生のストーリー

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