小学生の頃、ひたすら穴をほっていたときのこと

はじまり

小学4年の時だったと思う。突然学校が新校舎を建てると言い出し、あれよあれよという間に戦前からあった木造の校舎が取り壊された。
校舎は新しくなったものの、新しい運動場の整備やらで、旧校舎のあった場所が工事資材の置き場になっていた。
その資材置き場の隣には工事で使う(使った?)土の山ができており、山の高さは3mくらいはあったように思う。そこは小学生の男子にはちょうど良い遊び場だった。
しかし、皆の遊びはせいぜい山に登って駆け下りるくらい。それもしばらくすれば当然疲れるし飽きる。そしてそのうちだんだん人もよりつかなくなってきた頃、山を見て僕は思った。
「誰も使わない山にトンネルを掘ったら俺の山になるかもしれない」と。
そこで一番仲の良かったクラスメイトを呼びスコップで穴を掘る事にした。

基礎工事

穴は最初は1mくらいのところから掘り始めたが、子どもの力ではなかなか横穴らしくならない。また、数日で掘れると適当に予想していたが全く進まず、進行から方法を徹底的に再考した。
まず手始めに、ぼんやりしていたスケジュールを確定すべくノートに目標を書いてみた。
次に、このまま掘り続けると崩れて危ないので、その辺に落ちていた資材(正確には置いてあった資材)を頂戴して、なんとなくの基礎工事を見よう見まねでやってみた。
そして工事中はとくに大人にバレないようにブルーシートで隠すことにした。既に誰もよりつかなくなってはきていたが、たまにくる下級生たちにあえてきつくあたって来させないようにした。

クラスメイト離脱

この工事は確か一ヶ月くらいかかっていたと思う。途中クラスメイトは飽きてしまい穴掘りにこなくなった。
自分もさすがに一人でやるのは寂しかったので、昼休みにのみ給食を早めに切り上げその時間で掘り続けた。
もうどのくらい時間をかけたか覚えてないが、とにかく毎日掘った。そうするとだんだんトンネルの様相になってきた。その辺りでクラスメイトが戻ってきたと思う(調子のいいやつ)。最後は掘るメンバーも数人増え、ついに貫通。
貫通式は粛々と行われ、皆一度だけ穴を通りぬけて嬉々としていた。
しかし、その出来は非常に危険で、今にも天井が崩れそうではあったし、貫通といっても二歩くらいで通り抜けてしまう短いもの。さらに通り抜ける度に頭に土がかかって二度通り抜けたいと思えないくらい嫌だった。
ただ、毎日続けたことが成就した、そのなによりも言い表せない達成感で非常に満足だった。

崩壊

貫通した翌日くらいだったか、ついに大人にバレた。かなり怒られた。そして速攻崩された。が、全く悔しくなかった。なぜなら、翌日には燃え尽き症候群となっていて、もはや何もする気がおきなかったからだ。むしろやっと解放されたという気持ちで嬉しささえあった。

その後

その後、中学のときに深夜のテレビでやっていたフランス映画ジャック・ベッケル監督の「穴」という作品を偶然見たときは、眠いしモノクロだし見慣れぬフランス映画なのに見入ってしまった思い出付き。
*最近帰省したときに、この山のあった場所にいってみたらアスファルトが敷かれ、プールができていた。写真の○の部分がそれ。

著者のヒグチ ツヨシさんに人生相談を申込む

著者のヒグチ ツヨシさんにメッセージを送る

メッセージを送る

著者の方だけが読めます

みんなの読んで良かった!

STORYS.JPは、人生のヒントが得られる ライフストーリー共有プラットホームです。