精神科看護師として働いていた時の衝撃的事件簿⑪経験は巡り巡って次の世代へと繋がっていく話。



ちょっと前に右も左もわからず働き始めたと思ったら、もう4年半も働いてたある日。

スタッフの出入りの激しい病棟で、ふと気付くと主任の次に古い看護師になってしまっていた。


おいおい、大丈夫なのか?!この病棟???


なので毎年入る後輩にもいつのまにかでかい顔して先輩面をかましてる今日この頃。

新卒だけでなく、毎年様々な経歴を持った人が既卒で入ってくるので、本当に楽しい。


しかし、その年入った後輩の一人が昔の俺に良く似ていた。



その子は自分の感情に気付くのが苦手で、判断を周りに求めずすぐに自分一人でなんとかしようとしていた。

がんばりやで負けず嫌い。

自分の個性を磨くことを好み、自身の抱く自己像を大事にしてる感じ。


一人でなんとかしようとするのはいいんだけど、仕事上一人ではどうしようもない部分まで抱えようとする時がある。

仕事上スタッフ間で上手くコミュニケーションを取って行かないと、業務も回らんし患者さんに対する認識もずれてしまうので結構危険なのだ。


こちらが心配して「大丈夫?」と聞いても、いつも「大丈夫です」としか返ってこない。

それじゃあ何が大丈夫かもわからんし、大丈夫じゃなさそうでも「大丈夫です」と返ってきてしまう。

こちらとしてはなかなか困ってしまう。



恐らくその子は早く一人前になりたいのだ、と思う。

そのために出来る事をなるべく自分でやってみたいのだろうけど、このままでは大きな事故も起こりうる。

なので、病棟の仲間とどうやってその子に伝えていこうか話をした。


自我理想が高く、いまいち掴みどころのないその子のキャラクター、あれ?誰かに似てるぞってことになった。

あ、俺だ・・・


そんで、夜勤でその子と一緒だった日に俺の入職した頃の昔話をすることにした。

(以前書いたこれ http://storys.jp/story/7091 )


自分の感情に気付くのも表現するのも苦手で一人で抱え苦しくなってたこと。

仲間に正直な感情をさらけ出すことの大事さ。

自分が感情に気付きたくなかったのは、自我理想と等身大の自分とのギャップを受け入れるのが苦しいかったからなどなど。


自分の感情に気付くことは案外難しい。

もともと俺はしんどくてもすぐに「がんばって」明るく前向きになろうとしていた。


本当は苦しかったり、辛かったり、悲しかったり、怖かったりしててもそれを見ないようにして明るく元気に振舞ってた。

「大丈夫!」って自分に言い聞かせたりしながら。


「がんばってる」時点で自然体でないので、そのうち疲れるのは当たり前なのに。

そんなことも気付かずただただ猪突猛進していた、若い日々・・・。


けど少しづつ仲間に素直に感情をさらけ出すうちに、昔より素直に感情を認めることが出来るようになった。

そしたら楽になったし、すぐに冷静に振り返れるようになっていった。


患者との関わりが嫌だったり、苦しかったり、傷ついたり、むかついたり、頑張れてない自分がいても昔より辛くなく仕事ができる。

「だってしゃあないじゃん、人間だもん」って思える。


今ではたまに患者に理不尽な怒りを抱いて、詰所の椅子や休憩室のソファーを蹴ったりしてる。

それはちょっと変わり過ぎですが・・・



普段おちゃらけている俺がそんなことを話してたら、後輩は結構真剣に聞いていた。

「私いつからか感情に鈍くなろうとしてたかも。なんでだろう…」と自分を振り返ったりもしていた。


その答えはあえて踏みこまずそっとしておいた。


結局後輩には、

「自分の心にもっと耳を傾け、一人で抱えこまないこと。

自分の感情に鈍いやつは、他人の感情にも鈍くなる。

そして、仲間にはもっともっと自分の感情をさらけ出しても大丈夫だぞ」と伝えました。



まあそんな感じで、なんだかちょっとづつ先輩になって戸惑ってた日々。

この頃はもう自分も退職を決めていたので、自分の経験が巡り巡って次の世代へと繋がっていくことに驚きを感じた。

これからも人との繋がりを大事に生きていきたいもんですね。 



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