ベンチャー企業〜カリスマ社長 or 調整型社長

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 よく「大企業に行くべきか、ベンチャー企業に行くべきか」という話を耳にしますが、中小企業も仲間に入れてあげて下さい(笑)!

 冗談はさておき、みなさんの気持ちもわかります。中小企業という言葉からくるイメージはどこか地味ですからね。大企業は豊富な資金力で歴史に残る大きな仕事ができそうで人脈も広がりそう。ベンチャー企業は異彩を放つカリスマ社長の元、若い人たちのアイデアやエネルギーが満ちあふれていそう。そんなイメージありますよね。Startupsを「ベンチャー企業」と日本で命名した人のイメージ戦略能力に感心します。

 AERAの記事にあるように、大企業とベンチャー企業のマッチングもすでに始まっているようです。この記事の中で、ベンチャー企業を「異物」と表現している箇所がありますね。言い得て妙です。もしかしたら「異物」と言われて至福の喜びを感じる人はベンチャー企業向きかもしれません。もしベンチャー企業を選ぶなら、まず社長がどんな人か見極めた方がいいと思います。中小企業も同じですが、ベンチャー企業は「社長=社風」の場合が多いです。

(1)立ち上げ〜成長期

 ベンチャー創業者と聞いて、カリスマ性のある社長をイメージする人が多いと思います。大企業と違いベンチャー企業は最初は認知度が低いので、やはり強烈な個性を持ったカリスマ性のある社長で一気に名前を売るのもひとつの方法かもしれません。ただカリスマ性だけでは会社を成長させていくことは難しいと思います。社内外問わず、調整能力が要求されます。

 立ち上げ時は未来を夢見て仕事しているので、多少、勤務時間が長くてもお給料が安くても、ちまたで言われるようなブラック企業だと騒ぐ人はほとんどいないでしょう。その会社が生み出した新しい技術にほれ込んで、社長と社員が一体となって仕事していけます。そこでは、いろんな新しいアイデアが飛び交い、会社というよりはキャンパス。時間を忘れて仕事して終電に乗り遅れてしまい、会社に泊まる人も少なくない。朝、出社した時に、応接セットのソファで毛布にくるまって熟睡している人を何度も見かけたことがありました。雑誌からベンチャー企業紹介の取材が入ったりで少しずつ注目されるようになり、何かが起こりそうな予感と高揚感の中で仕事していました。

 成長期にさしかかり、創業時のメンバーだけではこなせない仕事量に膨れ上がった時、社員を増やす必要が出てきます。その時こそ、社員を採用するにあたって社長の人を見る目、そして社内の調整能力が問われることになります。たとえば創業時は10名くらいのチームだったのが、いっきに30名以上になったとします。人間が30名以上集まると、やはり派閥が発生します。この大事な転換期に社長が会社に不在なことが多く、社員とのコミュニケーションがうまく取れない状況が長く続いた場合、ナンバー2が社内をまとめることになります。社長とナンバー2の役割分担・協力関係がうまくいけば、ベンチャー企業が大きな成長を遂げるための第一関門を突破することが出来るでしょう。

 ベンチャー企業の成長期において大きな障害となるのは、

*社長とナンバー2の利害が一致せずに小さな組織が分裂(仲間割れ)

*天変地異・経済状況の激変など予期せぬ出来事で資金調達が困難

*技術が早すぎて時流に乗るまで年月を要し、それまでの資金調達が困難

*長期にわたる訴訟を抱えて莫大な弁護士費用がキャッシュフローを圧迫

等が挙げられます。

(2)崩壊期

 カリスマ社長にしろ、調整型社長にしろ、社長になる人の「あきらめないエネルギー」はスゴイものです。立ち上げ〜成長期において、あらゆる難題を片付けたそのあきらめない精神が、崩壊期には悪い方向に向かうこともあります。元も子もない言い方かもしれませんが、どんな新しい技術にも旬があります。早すぎても遅すぎても時流に乗れません。そして数年後までその技術がずっと新しいままでいつづけることは少ないですね。変化が激しい業界では、どの会社も負けずに日々変化しなくちゃいけない大変さがあります。ところが、そういう大切な時期に仲間割れ等社内のゴタゴタへの対応に時間を割かれると、どんどん世の中の流れから取り残されていきます。崩壊期では社長はイエスマンだけを周りに置くようになることが多いです。いろんな意見が自由に飛び交うことがベンチャー企業の良さなのに、耳の痛い意見を言う社員を排除するようになると、社員の士気がいっきに下がって崩壊速度を早めます。

 仲間割れで崩壊するにしろ、資金調達不能で崩壊するにしろ、散り方を間違えると悲劇です。小さな組織ではいろんな出来事が嫌でも社員ひとりひとりの目に入ってしまいます。そういう負の状況がダラダラ続くと、社員は動揺し、ひとり抜けふたり抜けとドミノ倒しのように社員は辞めていきます。すると一家離散のような形で消滅する道をたどることになり、素晴らしかったはずの技術さえ何も残らなくなります。これはあくまでも私個人の考えですが、会社がなくなるのはしょうがないにしても、せめてその技術だけは事業売却等でどこかで生き続けることが出来たなら、それはそれでベンチャー企業の終わり方としては良しとしようと思うのです。何も残らないよりはマシです。

(3)最後に

 私の周りでベンチャー企業からスタートして成功している社長はこんな感じの人が多いです。

*ほどほどのカリスマ性(=派手ではないけど人を惹きつける魅力がある)

*ある程度大きな会社でたくさんの人をマネジメントした経験あり

*社内外問わず調整能力が高い(=不必要に周りの人たちと軋轢を招かずにうまく立ちまわる交渉力)

*あきらめないし、方針がブレない

*投資家等に対して会社PR能力が高い(=資金調達能力高い)

*「この人のためなら何とかしてあげたい」と自然に周りの人が思ってしまう人望がある

*心身ともにタフで、普段から面倒見がいい

*技術に溺れすぎない冷静さがある

*社員の前で感情の起伏を見せない

*社員を信用して仕事を任せる(決して一人で仕事を抱え込まない)

*運が強い(運も実力のうち)

*物事を悪く考えない

 入社前に、社長がどんな人かここまで見極めるのは相当難しいですよね。ヒントがあるとしたら、雇用契約書。雇用契約書は会社の歴史です。日本人しかいないベンチャー企業では詳細な契約書は交わさないかもしれませんが、多国籍な社員がいる会社では英文契約書もしくは英文を元にした日本語訳の雇用契約書があるはずです。それをじっくり読んで会社の歴史を理解し、それに自分が合うかどうかを判断する材料にはなると思います。あともうひとつは、その会社を面接等で訪問する時間帯は業務終了後にするといいかもしれません。就業中よりは終業時間前後の方が、その会社の本当の姿が見えてくることが多いです。どんよりと空気がよどんでいて社員に元気がないようなら、ちょっと???かもしれませんね。

 私が勤務したベンチャー企業は上場できなかったという点では失敗例かもしれませんが、調整能力に長けた社長が多かったので散らせ方も上手だったし、経験を積む上でも結構いい会社だったように思います。ただ一社だけは激しく崩壊する様子を近くで見ちゃったものですから、カオスな人間関係の中で相当な精神力が要求されました。うまく散ったベンチャー企業の場合は、解散後も社員同士の交流は続いて、また別の機会に一緒に仕事することもあります。しかし、一家離散のように激しく崩壊した場合は、音信不通になることが多いですね。たとえ、それがコップの中の嵐だったとしても、必死にもがいたことは決して無駄ではなかったと今は思います。私くらいの年齢になるとベンチャー企業の最前線で仕事するのは体力的に無理ですが、ピンポイントで役に立てる仕事をしたいと今でも思っています。

 何もないところに種をまき、それを育てていく作業が理屈抜きに好きで、その過程において多少の嵐に遭ってもすぐに立ち上がる〜おそらくこの精神こそが、ベンチャー企業の踏まれても踏まれても何事もなかったようによみがえる「雑草魂」なのだと思います。



読んでよかった
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この写真は一体・・w

イメージぴったりの画像見つけました。立ち上げ時のオフィス、こんな感じでしたよ...(^_^;

強く同感な内容。ベンチャーの定義を広げて中小企業も、俺たちはベンチャーだ!と言ってしまえば良いと思う

小林さん、私もそう思います。誰もやろうとしなかったことをやってみたいというベンチャー企業では当たり前のチャレンジ精神は、若い人にしか宿らないものだと昔は思っていました。しかし、自分が中年になった今もそういう気持ちが衰えないことに喜ぶ?と同時に、最近出会った70歳近い大先輩が私以上に好奇心旺盛で、こういうものは年齢に関係ないのかなと最近感じています。^_^

かの本田宗一郎や日清の安藤さんなど、40を過ぎてから会社をもう成長させた例などもあることから、若者だけの特権ではないと思いますね。どれだけ既成観念、既得権益と戦えるハングリーさを持てるか、だとおもいます。

まさに仰る通りです。ここ何十年もジャパン・パッシングな状態が続きましたが、オリンピックに向けてようやく日本に注目が集まってきました。私は今、夏に向けて創業準備しているのですが、海外のITやライフサイエンスの人たちと話していると、日本市場への反応がかなりいい感じで高まってきているのを肌で感じます。日本はこれから数年が勝負ですね。今、踏ん張らないと、いつ踏ん張るんだろうと思います。ハングリー精神をフルに活発化させていきたいものです。ストーリーでこんなお話ができるとは思いませんでした。ありがとうございます。小林さんの益々のご活躍をお祈りしております。

Sasajima Kayo

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