怖い婦長さんに出産後にほめられた話 第二部
薬品やけどで大ダメージ
看護婦さんというのは、技術者だ・・・と私は思っています。
自分が処置してもらう看護婦さんが「あたり」か「はずれ」か・・・
・・・それは、ときにその患者さんの日常をガラッと変えてしまいます。
点滴の針の抜き差しひとつとっても
やたら痛い人もいれば
え?・・・もう終わったんですか? いつの間に?!
みたいな人もいる。
入院していると、誰がどんな技術レベルなのかわかってくるので
「どうですか~?」とにこやかに病室に入ってくるのが誰か、によって
ゆううつだったりハッピーだったりしたものです。
じっとベッドに寝ていると、することがないので
自然に観察力も上がってきます。
この人、ちょっとがさつだな、と思ってみていると
案の定、お気に入りの蓋付きの湯飲みを
振り返りざまに机にぶつかって落として割られてしまったり。
「技術」と、フレンドリーさは別物だということもわかりました。
私が少し恐れていた、にこりともしない婦長さんは
何をやっても「さすが!」のスムーズさ。
また、「技術」と趣味の良さも別物で、
いつもおしゃれでスタイルも抜群でお化粧も上品で完璧
繊細できれいな結婚指輪をはめている看護婦さんの処置は
かなり雑で、しょっちゅう痛い目にあわされていたので
私は彼女が現れると、がっかりしながら覚悟を決めるのでした。
もちろん誰にお世話してもらうかは、指名できないので、
「運命のいいなり」なところが患者のつらいところだなあ
と、よく思ったものです。
トイレの頻度がへり、パンパンにむくんでしまった私への対策として
カテーテルを入れることになった時のことです。
尿道に管をいれて、強制的に水分を排泄させることになって
その処置にきてくれたのが、あの、きれいな看護婦さん。
あ~・・・彼女か~
軽い失望。まな板の上の鯉状態の私。
痛くありませんように、痛くありませんように・・・・・
と、心の中で唱えます。
「じゃあ、消毒しますね~」と、大事なところに消毒液をかけられて
恐れていたカテーテルを入れる処置は、いつ入ったのか気づかないほどスムーズでした。
・・・でも、なんだか消毒液をかけられたあたりが、じわじわムズムズして
何ともいえず気持ち悪い。
「あの~、なんだか、気持ち悪いんですけど、こんなもんなんでしょうか~?」
と聞いてみるも
「やっぱり、管が入ってますから、慣れるまでは違和感があるかもしれませんね」と。
「あ~、そうなんですね」素直な患者の私は、まあ、慣れるしかないのかと
あきらめて眠ることにしました。
ところが、時間と共に違和感は
違和感どころかどんどんわけのわからない、嫌な感覚に発展し
下半身に火が付いたような感じにパニックを起こした私は
生まれて初めてナースコールのボタンを押しました。
「あの、あの、なんかすごく変で、あの、わたし・・・」
あとはパニックの呼吸困難で言葉になりません。
異変を感じ取った向こう側にいた看護婦さんは
「すぐ行きますっ!!!」と叫んで、
本当にすぐに先生と3人ぐらいでバタバタとかけつけてくれました。
もう出産予定日まで1か月を切っていたので
産気づいてしまったのかと思った看護婦さんは
「すぐにみますから」と布団をまくって
「あっ!・・・・先生・・・」と絶句。
なんと、カテーテルの処置をした時に
消毒液の原液をかけられたために、
かなりの薬品やけどを負ってしまっていたのでした。
鎮痛剤を打ってもらって、ひんやり冷たい湿布をあててもらい
疲れ切って目を閉じながら、
「やれやれ、別に誰に頼まれて妊娠したわけでもないけど、
なんだか大変だわ~、子供を産むって」
と、私はさすがに若干ブルーになっていたのでした。
でもこれで無事に産ませてもらえると思ったら大間違い。
ドタバタはまだまだ続きます。
◆◆◆ 第三部に続く ◆◆◆
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