若年性脳梗塞になってみた  その5 ~ 大事な事は普通の顔でやってくるから厄介だ ~

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 ちょっと今回は暗い話があるのでご注意ください。


 HCUに入れられてまだ二時間余り。

 それでもその異様な雰囲気に飲みこまれ、さっきまでのハイテンションはどこへやら・・・

 というか最初のベッドは「ICUに入る手前の人用HCU」みたいな場所。

 煌々と着いた電気に正直周りから聞こえてくるのは「かなり重篤な人たち」を思わせる、機械音、うめき声、医師たちの会話・・・

 自分のベッドの横にもアラームが付いた心電図と酸素濃度の機械のディスプレイが置かれ、2時間ごとくらいに「ビーッ」と音を立ててくれる・・・


 落ち着きたい。

 本当に落ち着きたい!


 だんだんおかしくなっていく精神状態。これか?これがICU症候群か!!!HCUだけど(笑)



 しかしそこはさすがに人員が多いHCU。

 確かに『再発・突然死』の可能性の高い患者ではあるんだけど無駄に元気な私にはこの空間は辛かろうと考えてくれた看護師さん。

「同じHCUだけどもうちょっと落ち着いたところがいいかな?」

との申し出に飛びつく私。


 結果入れてもらったのは「手術後などで一般病棟よりは重篤だけどまだそこまでではない」という感じのドア付の4人部屋。一般病棟の6人部屋を4人で使っている・・・というイメージでいいと思います。


  そこの3人目の住人となりました。


 こちらはライトも薄暗く、ある程度静かなのでさっきよりはかなり落ち着けました。

 それでもテレビはなし、うめき声はあるんだけど・・・


 でも先ほどよりずっと静かで「やっと息ができる」そんな感じでございました。

                 

 そうこうしているうちに夕食の時間・・・

 他の人はお食事(といってもおかゆだったりなんでしょうか)が来ましたが絶食の私には何もきません。しかし雰囲気に飲まれたのか・・・まったく食欲が湧かないのです。

 食べるの飲むの大好きな自分がほぼ丸1日、絶飲食なのにここまで興味が出ないことに少し違和感は感じました。(のちに自分を苦しめる「自律神経失調症」がここで始まっていた様子)


 テレビもなければネットもない、持ってきた小説は疾うに読み終わり、疲れているから寝ようと思っても変な興奮で眠れません。

 きっとこれはHCUが悪いんだ・・・と思いぼんやりしてたら「大丈夫かい?」と姉がやってきました。

「聞いてびっくりしたよ!とりあえずネットで入院準備を調べて実家近くのスーパーで買ってきたよ!」

 素晴らしい、さすが女性!女性の気持ちは分かります。


 中には新品のパジャマが二着、バスタオルとタオル数枚、マグカップ、下着類数枚、カップ付タンクトップ(これが超便利だった!)、スリッパ、上着、ノート、ペンなどなど。

 欲しいものがほぼすべて入っていました。これには感動!

 HCUに入っても来たままの格好で休んでいており(襟ぐりが開いているTシャツにカーディガン、緩やかなズボンを着ていた。なのでまだましだったけど・・・)、機器が付いているために今日の着替えは無理でも明日からはパジャマで過ごせるのがありがたい!


 唯一なかったのが歯ブラシと生理用品くらいでほぼパーフェクトな入院準備でした。(歯ブラシと生理用品は翌日夫に買ってきてもらう)

 あともう一ついうならば基礎化粧品があれば女性は喜んだかもしれませんが、なんせ風呂も入れず上半身も起こせない自分にはあっても無用の長物だったと思います(笑)


 それに喜びながら今までの経緯を簡単に説明してた頃、今度は夫がやってまいりました。

 朝以来なはずなのに・・・なんだかえらく長い時間会ってなかった気がしました。


 そして夫もとりあえず入院準備をもってくれましたが・・・w

 古いパジャマ代わりにきてたオンボロTシャツにジャージ、流石に捨てようとしてた穴の開いた下着が一枚(爆)・・・唯一つかえたのがタオルくらいでしたかね・・・(笑)

 なんでも洗濯ハンガーにかかってたのを持ってきたらしい・・・


 よかった、姉が来てくれて(笑)

 心底そう思うも彼は彼なりに考えて・・・・

こういうのできる人じゃないのに、一生懸命考えてやってくれたんだな・・・と思うとなんだか嬉しくて嬉しくて・・・

姉の手前、そんなイチャコラ(笑)できるわけではないですが荷物を受け取る際にふと手が触った瞬間、波のようにパニックが引くのが分かりました。

そして申し訳ないけど姉よりもだれよりも夫に会いたかった、とても心細かったのだということに今頃気が付きました。


「いやー、出張先で『妻が脳梗塞で入院したみたいなので懇親会出ず帰ります』って言ったら『なんでこんな出張に来てるんだ!!そういう場合付き添うのが普通だろ!というかいつ電話来た?一時間前???馬鹿!そういう時は報告してすぐ帰るもんだ!とりあえずいますぐ帰れ!!!』って上司に怒られちゃったよ~。普段悪い言葉使わない上司だからなおさらビックリした~(笑)」

「私も看護師さんにそばにいても何にも出来ないんだから仕事行けって言って、一人できたって言ったらびっくりされたしちょっと怒られた~(笑)

『こういう時は付き添いか救急車で来てください!』って。同じようなことでお互い怒られているね~」


そんなばかばかしい話をすればするほど、緊張がほどけていくのが分かります。


 ああ、大事なことは普通の顔してくるもんだな・・・と思った時でした。


                                             


 そんな中、主治医が来てくれ病気の顛末を簡単に説明、夫に入院や検査の同意書を渡し次回来た時に看護師に渡すよう頼み、主治医が帰る頃にはもう面会終了時間を過ぎていました。

 夫は車で来ていたそうなので近くの駅まで姉を送るように頼みその日はお別れ。



 ちょっとさみしいな~と思いだしたころに「いいですか~?」と看護師さんがいらっしゃいました。

 さみしがってた矢先なので嬉しくて「どうぞどうぞ」とお招きすることに。


「Kaoさんのご宗教はなんですか?」

「自分は無宗教ですが親は○○宗、婚家は○○宗です。」

「じゃあ宗教的には輸血をしてはいけないとかそういうのはないですね?」

「全くありません。」

「あの・・・ちょっと聞き辛いんだけどドナーカードみたいなのって持ってます?」

「あ~~~あれね、免許の裏の。すいません書いてないです~」

「そうですよね~、普通書きませんよね(^^)

休みたかったのにごめんなさいね。なかなか落ち着かないかもしれないけどゆっくり休んでくださいね~」


 そう言って看護師さんは去っていきました。

 最初は何のことやらわからなかったのですが「きっと最近は日本でも多宗教だからそれに配慮してるんだろう!」と思いました。そして地味に感動をしたのですが・・・・


 退院してから気が付きました・・・・

 あれ、霊安室の形式のために聞いたのだと!!!(爆)

 予測では仏教、キリスト教、無宗教の3パターンであると見た!

 そしてドナーカードということは脳死状態の時はどうするのかを聞かれたわけです(笑)


 感動して損したよー!!!とずっと思ってましたが今思えばこれもホスピスでもないのに患者本人に聞いちゃいけないんじゃ・・・(笑)

 まあきっと想像以上に早く家族が帰してしまった(爆)ので当人に聞かざるを得なかったのではないかと思います。


 こーゆー大事なことも普通の顔してくるから入院中は気を抜いてはいけない(笑)


                           


 さて、消灯時間も過ぎましたがHCUの所は先ほどよりはやや暗くなったもののやはり眠るには明るいくらいの明るさ。私がいるところでも結構明るく寝付けないな・・・と思っていました。

 明るさのせいか少しはウトウトはするもののすぐに目がさめてしまい、その上、時折ビーッとなるセンサーのせいでよく寝付けなかったその晩。

 たぶん1時か2時くらいまで起きてたと思います。


 暇なのでぼんやり開け放たれたドアの外を眺めていたら小声で家族を案内する看護師の姿・・・・



見てはいけないもの、見てしまった???い、いやいや見てない!!私はな~~~んにも見てはいけないものなんて見てませんよ!

だから不安がることもないですよ!!あれはお手洗いの相談だよきっと!!もう二時だしいい加減寝なきゃね~~~!!!(^^)



そんな風に自分を納得させ無理やり目を閉じることしばし・・・


ずっと開かれてた病室の扉が静かに閉められました。



その瞬間『寝ろ!!!3秒で寝ろ!!!今すぐ寝ろぉぉぉ!!!』と自分に命令。あんなに眠くなかったのに不意に眠気が来て3秒とはいきませんでしたが1分くらいで眠りました。



何があったのかは知るすべもなければ、知りたくもありません。




翌朝、起きると昨日と同じでした。

看護師さんもお医者さんもキビキビと働き、医療機器はビービーとうるさく、うめく声も苦しそうな呼吸も聞こえます。

そう、何もかも同じ。



ただ、ここでも思ったことは「大事なことは普通の顔してくるから結構厄介である」ということでした。





                               その6へ続く

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Kuribara Kao

小中学校イジメられっこ&親との不仲 → 定時制高校でハッチャケ→ キャバ嬢やったり日雇いやったり → 鍼灸師になったら学歴コンプ に→ 社畜3年で挫折 → 半年後なぜだか結婚? → 新婚やってたら脳梗塞ですとも! → 鍼灸師+病人+自宅警備員。 現在軽い片麻痺で杖をつきつつ低空飛行中の鍼灸師。

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