【広島2】ひいおばあちゃんは160歳。

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「世界の最高年齢は116歳。日本女性の平均年齢は88歳。

でも、あなたのおばあちゃんは、今年で160歳になる。長生きでしょう?

おばあちゃんと同じくらい長生きな方がね、沢山いる町があるの。どこだと思う?」

と母は言った。


子どもの頃、広島の話を聞くのは怖かった。

それは毎年夏。お盆に帰った時に行われる。

”死んでいない方の祖母”は私を膝に乗せて、私の手を握って、語り始めるのだ。


広島の夏は、少しおかしい。
運動会も、なんとなく切ない。

誰もが、少し笑うのをためらっている。

当時を知っている大人たちは、眠れない。

当時を知らない子供たちは、居場所がない。


町全体が何か薄暗い雲で覆われたみたいに静かで、ほんのりと暗い。


祖母のいつもの話に飽きてきた私は、祖母の膝から仏壇を見て、こう聞いたことがあった。


「どうしてひいばあちゃんの写真だけないの?」

おばあちゃんは、息をのんだようだった。

仏壇には、おばあちゃんの弟と、妹と、父親と、おじと、従兄弟と、姪の写真があった。

その他にもいろんな人の写真が張ってあった。20人くらいいたと思う。

けれど、ひいおばあちゃんの写真だけ、なかった。

母と父は私の言葉を聞いて慌てて駆け寄ってきたが、祖母は、それを制した。

おばあちゃんは、一瞬うつむいてから『それはね』と話し始めた。




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