生後3ヶ月から親元で暮らせない子どもたちが、こんなにもたくさんいるという日本の現実に目を向けて、実際に行動を起こした話

新規事業を起ち上げた社長のセミナーを会社でやるというので参加してみたら全然違った

会場では林さんという、自分と同い年の女性社長が元気に講演されていた。

≪林恵子氏プロフィール≫

NPO法人ブリッジフォースマイル理事長。津田塾大学卒業後、株式会社パソナに入社。副社長秘書、営業、面接、契約管理、人事などを担当。二児を出産後、子育てと仕事を両立させながら、MBA留学を目指して参加した英語研修を通じて児童養護施設と出会う。2004年12月、NPOブリッジフォースマイル創設(翌年6月法人成立)。NPOの仕事を本業とするため、パソナを退職、現在に至る。


確かに新規事業を起ち上げた起業家の話に間違いはなかった。ただ1点、「児童養護施設から巣立つ子どもたちを支援するNPO」というビジネスにおける点が、正直に言えば、ひっかかった。


ボランティアの世間一般的なイメージ


生活支援系のボランティアというと、赤い羽根や、介護犬の募金、はたまた保健所に送られるペットを助けて下さい、など、色々あると思うが、例えばそこに募金というアクションがあった場合、それは本当に困ってる人の役になっているのか?という疑問はある。


もちろん募金系のボランティア自体はいいことだと思うが、例えば飢餓の国への募金や物資は、現地に届けられる途中で盗賊に襲われて持っていかれてしまっているという話を聞いたりすると、「そういうこともあるかもしれないな・・・」、とも思うし、「ボランティアを募集しています」と聞くと、二の足を踏んでしまうというのはあった。


施設に預けられている子どもたちは日本に3万人

セミナーでは、実際にNHKで放映されたドキュメンタリーが流された。

それによると、下は生後3ヶ月から上は18歳までで、国内では3万人もの子どもたちが、親元で暮らせないという。


家族と暮らせないと聞くと、てっきり親が病死とか事故死による「孤児」かと思ったのだが、実はそういう例は少なく、親は生きているのに、親が子供を虐待したり、育てることができなかったりするケースが多いと聞いて、自分も子供がいるのでショックを受けた。


生後3ヶ月から一緒に暮らせないなんて、それだけで泣けてくる。


でも、親が子育てができなくなったのには色々な理由があると思われるが、ここで「育てられない親が悪い!ひどい!」と決めつけるのは簡単な事だが、果たしてそれでいいのだろうか?

子育てをしたことがある人にならわかると思うが、”せっかく子供が生まれたのに、育てたくない親なんて1人もいない”と思うし、それなのに育てられないということはよっぽど厳しい理由があるのだと思う。


なので、その育てられないという環境をそもそも改善できなければ問題の根本的な解決にはならない。例えばギャンブルにハマってしまって借金まみれでお金がないような場合には、そこに安直に金銭面の援助をしても抜本的な解決には向かわないと思うのだ。


人はいったい何歳からなら、自分の人生と思えるようになるのだろうか


いつからかずっと疑問に思っていたことがある。


大人になってからはある程度のことは自業自得ということで、自分で選んだ道だから自分で責任をとるべきだ、と言われるものだが、だったら、「何歳からならその人は自分ことに責任をもてるようになるのだろうか?自分の置かれた境遇に納得できるのだろうか?


少なくとも生まれてすぐに、そうはならないはずだ。


例えば生後3ヶ月ってこれくらいだ(※うちの子)

自分で立てないのは当たり前で、ご飯だって食べられないし、歯もない。


生まれ育った環境は人によってバラバラであり、もちろん親は選べない。

しかし、人は平等に成長するチャンスと成長できる環境を手にできるべきであると思う。そうでなければ、いくら望んだところで「神様のいたずらでした」、「蛙の子は蛙。残念でした、あきらめましょう」、と、与えられた環境に甘んじることが当たり前の世界になってしまう


でも、本当にそれでいいのだろうか?


自分だって児童養護施設にも入っていないし、すごく福祉や介護の気持ちが強いわけではないが、大学の頃には奨学金ももらっていたし、自分の努力だけではどうにもならないシーンも味わった。

「やりたいことがあるなら、どんな境遇でも諦めずにがんばれよ。がんばればどんな困難でも乗り越えられるよ」、というにもやはり限度はあると思う。


そしてもしかしたら、自分や自分の子供がそういう境遇になっていたのかもしれないのだ。


だからこそ、強く夢をもっている人には、もっとチャンスがまわっていくべきなのではないかと

そして、そこに今の自分にも何かができることがあるんじゃないかと。



社会からの孤立した毎日との戦い

施設からは高校を卒業する18歳までしかいられず、強制的に社会に放り出されるため、退所後は、下のグラフのように孤独感、孤立感が困ることの1位となっている。

この動画の中でも、日々の寂しさについて語られているが、大学に進学後も親元(実家)にいることと比べれば、それはもう心細く、不安になるものだと思う。

色々な事情がからみ合っていて、そしてまだまだベストから程遠い状況にある。


今まさに、労働者人口が減り続けている日本において、子供は産みの親だけの責任ではなくて国民全員の財産として、みんなで育てるという意識が低いことが読み取れる。



成人になるというのは見かけだけ大人になるのではなく、心身共に「1人で社会の中で生きていけるように、自立できるように」支援することが必要だ。


自立を支援するという形のボランティア参加へ

セミナーに話は戻り、林代表が運営するNPO「ブリッジフォースマイル」ではいくつかの種類のボランティア活動があり、そのセミナーではその中の1つの「カナエール」という、ちょっとかわったネーミングの活動のスタッフ募集締め切りが迫っていた。

これまた、イロモノっぽい雰囲気に最初はやはり一瞬躊躇したのだが、「カナエールは、児童養護施設を退所した後、大学等へ進学する若者を卒業までサポートするプログラムです。児童養護施設の子どもたちの進学格差をなくし、社会全体で「夢をかなえるチカラ」を育むことを目指します。」というコンセプトが大変自分の考えと合致した。



また、単純に金銭的なサポートをするのではなく、1年に1回夢を持った若者を厳しく選考し、通過した学生(高校3年生or大学/専門1年生)の夢を実現するために大人(ボランティアスタッフ)が4ヶ月程度メンターとして一緒になって夢を具体化していくというプログラムだった。


「もし、今、これに参加しなかったらもう死ぬまでこういう機会はないかもな・・・」


しかし、まったくの未経験の活動への参加であること、月に数回は週末に終日拘束されること、そして何より、軽い気持ちで参加するというものではなく、若者と裸でぶつかり合う覚悟を必要とする活動ということで、その日は参加について少し考えさせてもらうことにした。


「自分の会社の経営理念って、よく生きる、だよな。。。こういう活動こそが、よく生きる、ってことなんじゃないのか?」


3日考えて・・・まずはやってみよう、と事務局へ参加を表明した。もちろん参加する動機としては可愛そうだから、とかそういう同情心ではなく、この体験を通じて自分を見つめなおすいい機会にもなると予感したことも大きい。

また、ブリッジフォースマイルの林代表他、スタッフの方々が全員本気だったことにも心を打たれた。


カナエールは今年で4回目。東京、埼玉、千葉、神奈川、東北、福岡と全部で25名の若者が夢をかなえるためにその3倍の60名の大人が関わっており、そのうちの1名が自分である。参加している大人は大学生から50代まで様々な人が参加されていたが、皆、熱い人達ばかりだ。


若者たちはこれまでの辛い過去と向き合い、それでももがき苦しみながら夢に向かって進もうとしている。その過程においては逃げ出したくなること、目を背けたくなることもあると思う。


そして、その発表会がきたる2014年6月29日東京、7月6日横浜と福岡で行われる。



明日、ママがいない、というTVドラマもあったが、ドラマはドラマ。でもここには動かしようのない真実がある。確かに。


大人なんて信じられないと失望しかけていた若者たちが、ここで「夢」について強く、熱く語る瞬間に立ち会ってみたい方、ぜひ、特設サイトを見てみてください。


おしまい。



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