2011年6月4日、僕は事故にあった。場所は地下鉄赤坂駅千代田線のホームで、泥酔したあげく電車にはねられるという(といっても、自分からぶつかっていったのだが)という大事故だった。ケガの名称は「開放性頭蓋骨骨折・脳挫傷」。簡単にいえば、頭がぱっくりと割れて、脳みそが飛び出したということになる。飛び出した脳みそは宙を舞い、地面に強打。さらに、割れた頭蓋骨が突き刺さるというひどい状態だった。


当然僕は電車にぶつかった瞬間に意識を失い、医学用語でいうところの「深昏睡状態(脳死の一歩手前)」になり、救急車で病院へ運ばれた。搬送先はお茶の水「駿河台日大病院」だ。なぜこの病院だったのか、理由はよく分からない。知人に関係者がいたわけではないし、日大病院が脳外科の権威だ、なんて話も聞いたこともない。おそらく、空いている病院が他になかった、その程度の理由だったのだろう。


が、詳細は後述するが、偶然に偶然が重なり、僕は運良くこの病院で、九死に一生を得ることになる。ちなみに入院期間は、6月4日から7月7日の約1ヶ月間だった。「脳挫傷」で「深昏睡状態」といえば普通は即死。もし生き返ったとしても、ほとんどは植物状態になって、本来の活動ができるようになるには、十年以上かかるといわれているから、自分の場合はよほどの幸運だったのだろう。


事故当日、僕は仕事を終えて、酒を飲んでいた。職業はライターで(より正確には、事故を起こしたときはコピーライターとして広告会社で働いていた)、出版と広告業界の人間ということになる。だから、というわけではないけれど、仕事柄、酒はよく飲む。打ち合わせといえば、だいたい酒がつきものだし、一人でも飲む。実際、酒は好きだし、強いほうだとも思う。平均ペースは2日でウィスキーを1本という感じだ。でも、がんばれば1日1本はいけると思う。まあ、がんばる必要なんてどこにもないのだが。


ただ、アルコールが胃に入っていくときの、あのなんともいえないあたたかい感じは本当に好きだ。身体の緊張がほぐれて、心がやわらかくなる感じがする。もう誰かのことを必要以上に責めるなどというあやまちをこれ以上犯さずにすむような気になってくる。


よく人から「なんでそんなに飲むの?」と聞かれるけれど、正直に答えるなら、それは「ハートに火がともるから」ということになる。が、ドアーズじゃあるまいし、「ハートに火がともる」なんて、恥ずかしくて口に出せるものではない。それに、そもそもそんな寝言をいったところで理解してくれる人はほとんどいないだろうが。


ちなみに事故の当日に飲んでいたのは日本酒だ。今にして思えば、これがいけなかったのだと思う。というのも、ふだんはウィスキーなど、アルコール度数の高いハードリカーを飲むことが多いからだ。そして量もかなり多い。だから僕ははっきりいって、日本酒のことをなめていたのだ。度数も低いし、そもそも糖分の高い醸造酒なんだから酔っぱらってもたいしたことはない。そう思っていた。が、油断している隙に気がついたら、一升瓶を飲み干し、記憶をなくすほど泥酔し、よろめく足取りで駅のホームへ向かっていた。


そして、僕は電車に衝突したというわけだ。

【その2へつづく】


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天川 智也

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