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手術は大きくわけて、二回行われた。はじめは、当然のことだが、事故当日に。二回目は入院から約2週間後に、人工頭蓋骨を装着するために。


事故を起こした日、病院に運び込まれたのは砕けた頭部と脳みそだけだった。が、幸運だったのは、その日の当直が研修から昇進したばかりの若い医者だったということだ。「若い」というのは無謀というか、チャレンジ精神旺盛というか、その医者はとりあえず、脳みそを頭のなかに戻してみようと思ったらしい。もちろん、普通に考えたら、ほぼ即死状態の人間を生き返らせようなどと考えるわけがない。よくて植物状態、せめて家族が到着するまで命だけはどうにかしよう、と思うのが自然だと思うのだが、僕を担当した医者は、そうは考えなかったようだ。


だからその日の手術は、脳みそを元に戻して、頭皮を縫い合わせただけだ。そしたらなんと僕は奇跡的に息を吹き返したらしい。まるで、パソコンのハードディスク交換みたいな話だが、本当の話だ。ただ脳みそを頭に戻しただけで、僕は生き返った。だから意識を失っていたのも、たった数日間だった。ただしその間、三途の川は渡りかけたし、白黒の点描画だけで構成された幻覚の世界にも迷い込んだりしたが。


2回目の手術は入院から二週間ほどたった頃、セラミック・カーボン製の人工頭蓋骨装着のために行われた。それまではなんと、頭蓋骨なしで入院生活を送っていたのだ。が、それではあまりに頭形が不安定だということで、人口の頭蓋骨を取りつけることになった。


「頭蓋骨のない生活はどうだったか?」と誰にも聞かれていないけれど、答えるならば「案外快適だったよ」といいたい。それまでは雨が降ったり、低気圧が近づくと吐き気がするほどの偏頭痛に悩まされていたのだが、頭蓋骨の浸透圧がなくなったせいか、気圧の変化に苦しむことがいっさいなくなったのだ。


が、後遺症がなかったわけではない。なかでも一番は、左半分の視野が全消したことだ(といっても、今はもう回復したのだが)。視力が落ちる、とかそういうレベルではなく、左半分がまったく見えなくなってしまったのだ。医者の説明によれば、それは事故で右脳が傷ついてしまったから、ということだった。


右脳は空間を把握し、左脳は言語を操作する、という学説があるけれど、この話は本当のようだ。というか、事故後、会話や筆記にはなんの障害も出なかったのに、視野だけは消失してしまったのだから、認めざるを得ない。


医者からボールペンを渡され、「真ん中はどこですか?」と質問される。が、僕はどこが真ん中なのか分からない。なにしろ、視力が半分ないのだから、ペン自体の長さを認識できないのだ。医学用語では、こういった症状のことを「視野狭窄」と呼ぶらしい。


それから記憶の一部も失った。


事故から数日後、無事に目を覚ましたときのこと。当然のことながら、僕は自分がどういう状況に置かれているのか、わかっていない。自分ではまだどこかで飲んでいると思っているのだ。が、目を開けるとそこには丸坊主に剃髪された自分がいる。その姿があまりにも、『戦場のメリークリスマス』のビートたけしに似ていたので、僕は目覚めて一声「メリークリスマス、ミスター・ローレンス!」と叫んでみた。もちろん、自分ではモノマネをしているつもりだった。が、事故を起こしたのは初夏(6月)で、それを聞いた医者は「あーっ!!」と絶叫。すかさず僕に、大量の安定剤を注射したのだった。

【その3へつづく】

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ここ、不覚にも笑ってしまったwww

も、もちろん頭と脳みそは繋がっていたんですよね?

つながってたみたいですよ。僕はこのときはもう意識を失って覚えてないんですけどね。

天川 智也

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天川 智也

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