"家族" のタグがついたストーリー

父さんにもしものことがあったら読んでほしい手紙(最終回)

「6センチ、6センチやよ」 執刀する外科医、麻酔科医、臨床工学士らに囲まれ、麻酔ガスを吸って一瞬に昏睡してから7時間が経っていた。母さんの声が聞こえたとき、父さんは混濁した意識の中で胸腔鏡下手術が終わったことを知った。 「うまくいったって、先生が言っとるよ」 すぐ近くに母さんいることがわかった。 父さんは目を開けることはできず、何か言おうとしても口を動かすことができなかった。悪性腫瘍が6センチならば
松本 晃一
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父さんにもしものことがあったら読んでほしい手紙(10)

澄みきった水色の空を切り裂いてヘリが舞い、機影は次第に大きくなって中庭を横切った。プロペラが旋回する音が近づくと、緊急事態を知らせる館内アナウンスが流れた。 「コードブルー、コードブルー」 日赤に入院したその日、病棟の窓に父さんが最初に見たものは、屋上に飛来するドクターヘリだった。 「コードブルー、コードブルー。6号エレベーターは、緊急搬送専用となります。」 三年前に新築された日赤は、一辺100メー
松本 晃一
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父さんにもしものことがあったら読んでほしい手紙(9)

父さんは、右肺の3分の1を切りとる。 リンパ節もとる。 朝9時に全身麻酔。手術の時間は3時間程度。手術中に病理診断をする。悪性の腫瘍であれば切除する。腫瘍が3センチ以下のステージⅠAであれば5年生存率は70〜80パーセント、5センチを超えるIIBであれば50〜60%に下がる。もし胸水や胸膜播種が見つかったりしたら、何もせずに縫合する。ステージは一気にⅣになり、一年生存率が50パーセントになる。手術や
松本 晃一
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父さんにもしものことがあったら読んでほしい手紙(8)

手術まで二週間余。 呼吸器外科の外来診療ではいくつかの飲み薬を処方されたよ。痰を出しやすくするゼオチン錠とムコソルバン錠、胸に貼って気道を広げるホクナリンテープという貼り薬。それに、特殊な容器に入れて吸入するスピリーバというカプセル。調剤薬局ではカプセルを容器に入れるやり方や吸い方の説明を聞いた。 風邪薬くらいしか飲んだことのない父さんにとって、説明書を読んだり、扱い方を教えてもらったりしなければな
松本 晃一
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父さんにもしものことがあったら読んでほしい手紙(7)

桜木町、赤レンガ倉庫、大桟橋。大型客船のロイヤルウイングに乗船し、ディナークルーズへ。ランドマークタワーはオレンジ色に染まり、みなとみらい21が大きなパノラマとなって迫ってきた。いつになくあわただしく過ぎていく夏の日の鮮やかなサンセットだった。 家族三人、新幹線に乗って横浜に行ったね。 母さんとサチのいつもと変わらない様子が何よりも嬉しかった。普通に振る舞ってくれたことがほんとうに心強かった。この小
松本 晃一
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父さんにもしものことがあったら読んでほしい手紙(6)

ここまでやってきて、もう一つ、父さんには思い悩んだことがあった。それは遺書を書くことだった。 肺がんにならなければ、絶対にそんなことはしないし、考えもしなかっただろう。けれでも、このとき父さんは真剣に考えて、レターセットを買ってきて、真っ白い封筒に「母さんとサチへ」という宛名を書いた。便箋にも同じように書いた。 しかし、そこからまったく何も書けなくなった。 便箋を破り捨て、母さんとサチの名前を渾身の
松本 晃一
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父さんにもしものことがあったら読んでほしい手紙(5)

それからしばらくの間は、これでも大病なんだろうかと思っていたよ。 胸が痛くなるとか、息が苦しくなるとか、そんな症状がまったくなかったし、体調はすごくよかったから、今までと同じようにジョギングをしたり、ロードバイクに乗って50キロ走ったりもした。それでもこのまま放置すれば、あと一年か二年しか生きられない。とても信じられないことなんだけれども、外科医は、はっきりとそう言っていた。一刻も早く手術をして、運
松本 晃一
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ウツで10代のうちに人生を壊され、道路に寝そべり、線路に寝そべり、もう二度と夢を見ないと決意したウツ男が、あることを意識するだけで 「180度変わった」と言われるまで成長したハイジャンプストーリー エピローグ ~ウツが教えてくれたこと~

僕がこんなこと平気で言えるようになるなんて あの頃は到底思えませんでした。 「僕だけは報われない人間なんだ」 「生きるのが辛い」 「体がしんどすぎる・・」 こんなことばかり思っていたせいか、 青春時代の記憶はほとんどなくなりました。 今まで、たくさんお話してきましたが、 何時間もかけて『あの頃』を思い出して、書きました。 あまりにもいろいろなことがありすぎて あまりにも辛くて、 僕は楽しかった記憶さ
小崎 真作
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父さんにもしものことがあったら読んでほしい手紙(4)

外科医は青い手術着だった。 「松本さんですね。本人確認のために、フルネームと生年月日を言ってもらえますか。」 坊主頭、無精ひげ。細い目の奥の眼光は鋭い。呼吸器外科の執刀医として生死を分ける瞬間をいくつも見てきたのだろうな。内科の主治医とは違って、金属的なメスの臭いがするような気がしたよ。 「松本晃一です。昭和35年10月…」 その日には、母さんと一緒に日赤に来るよう看護師から言われていた。がんの告知
松本 晃一
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父さんにもしものことがあったら読んでほしい手紙(3)

10年日記を買ったよ。1日4行、1ページに同じ日にちのことを10年間書く。 筆不精な父さんにとっては、小学生のときの絵日記以来のことだったし、大人になってもその日を振り返ることなんてことはほとんどなかったから、ちょっとした思いつきだった。毎日書かなくとも、日赤に行って診察を受けたときには診断結果を書きとめようと思ったんだ。 たとえば、 「7月27日、伊勢日赤、呼吸器内科、初診。レントゲンと造影剤CT
松本 晃一
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父さんにもしものことがあったら読んでほしい手紙(2)

8月中、会社をたくさん休んだし、お盆休みの間もずっと日赤に通って検査ばかりしていた。 小学校最後の夏休みの思い出にと、サチと約束していた山登りや海釣りにも行けなくなったよね。あのとき、父さんの意思とは無関係に周りが急に動き始めていて、ついていくのが精一杯なくらいに忙しくなっていた。肺がんになったんだという現実から目をそむけることができなくなって、後戻りはできないところまできていたんだ。 日赤に行くた
松本 晃一
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ウツで10代のうちに人生を壊され、道路に寝そべり、線路に寝そべり、もう二度と夢を見ないと決意したウツ男が、あることを意識するだけで 「180度変わった」と言われるまで成長したハイジャンプストーリー part3 ~家族全員ぶん殴ってやる~

僕は親が大嫌いでした。 周りから見たら普通の親だったかもしれません。 ただ、僕には合わない親でした。 お父さんは頑固で無口で古い考えしか 持っていませんでした。 自分が英語を話せるからといって 子供にも教えようとして 小学5年生の頃からNHKの基礎英語を強制的に聞かせ、 夜には自分のところに復習に来させる習慣を義務付けしていました。 僕は最初は喜んでやっていましたが 大きくなるにつれ 強制が嫌で仕方
小崎 真作
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母がアルコール依存症だと気づいてから10日間地獄を見た話。最終話。

精神科の受診 今日も医師は大粒の汗をアゴから垂らしながら母の診察をしていた。 医師 とりあえず、落ち着いてますね。 医師 薬はこのまま続けて飲んでください。 昨日お酒をぺっと吐いたのを見て、良い兆しかもしれないと思い、 後は父に託して私は学校へ戻ることにした。 それからは毎日父と母に電話をして様子を尋ねた。 ちゃんと薬を飲んでいるか? お酒は飲んでないか? 心配するなと言われ続け、そのうち電話をかけ
森田 望美
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母がアルコール依存症だと気づいてから10日間地獄を見た話。9日目。

宴会 宴会の準備が終わり、母は久しぶりに身だしなみを整え、 軽くお化粧をし、小綺麗な格好をしていた。 その姿を見てほっとした。 つい数日前からは想像がつかない、いつもの母に戻っていたから。 近所に住む母の幼馴染が、宴会に顔を出しに来ていた。 私はその人に、宴会の間母がお酒を飲まないように見ていて欲しいと頼んだ。 母はもうお酒を飲んではいけないんだ、と説明した。 今日飲むとまた元の木阿弥。 せっかく回
森田 望美
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母がアルコール依存症だと気づいてから10日間地獄を見た話。8日目。

回復の兆し 今朝も借金のことを口にしていた母。 悲しいかな、もうルーティーンだからしょうがない。 しかし昨日までと決定的に違うのは、 計算が出来るようになっていた。 数日前から考えると、想像もできない。 おそらく毎日きちんと飲ませていたビタミンの薬が功を奏した。 思い切って精神科に連れて行って良かった。 医師に言われる通りに薬を飲んでて良かった。 占い師のようだった医師を信じて良かったと思えた。 後
森田 望美
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母がアルコール依存症だと気づいてから10日間地獄を見た話。7日目。

闇金事務所 超回復。 母は顔色が随分と良くなった。 顔つきも柔らかい。 おかゆを昨日から食べ始め、食事を経口で摂れている。 何よりも幻覚がないようだ。 落ち着いていて、いつもの勝ち気な母に戻り始めていた。 ただ、借金の返済が頭から離れないらしく、落ち着きがないのは変わらなかった。 母 返済に行く。お父さん、車で連れて行って。 行く、と言ってきかなかった。 とにかく返済期限が迫っているのだ、と。 昨日
森田 望美
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母がアルコール依存症と気づいてから10日間地獄を見た話。6日目。

眠れる森の母 よく寝る。 これまで削られていた睡眠時間を補填するかのごとく、寝る。 これまで母から目が離せなかった私たちは少し安心した。 規則正しく薬だけは飲ませた。 忘れないように薬箱も作った。 曜日と朝、昼、晩と区分けした薬箱で飲み忘れを防ぐことができる。 疲れもピークに達していた私は寝ている母を見てとても不安になった。 もしこのまま回復せずに、 計算が出来ず落ち着かず幻覚が見えるような人と生活
森田 望美
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母がアルコール依存症だと気づいてから10日間地獄を見た話。5日目

精神科へ行こう 今朝は父を説得することから始まった。 わたし お母さんを精神科へ連れて行こうよ 父 いかん。あそこだけはいかん。 わたし そんなこと言ってる場合やないと思うよ。 見たやろ?明らかにおかしいやん。 父 お母さん二度と家に帰ってこれなくなるぞ。 こういった会話が何度も繰り返されたが結果父は同意してくれた。 この日はすごくいい天気だった。 精神病院の中庭の芝生が青々しく光っていた。 外来は
森田 望美
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母がアルコール依存症だと気づいてから10日間地獄を見た話。4日目

計算が出来ない 朝から母はゴソゴソ何かを探していた。 わたし 何探してるの? 言ってくれたら一緒に探すけど。 母 うーんと… 今日はどこやったっけ… わたし 何が? 母 返しに行かないといけない。 けどどこやったかな…。 今日、返済をどこかにしないといけないのに、どこに行けばよかったのかわからなくなった。 と頭を抱えていたらしい。 こんな状態で考えることではないのに、気になることはお金のこと。 借金
森田 望美
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母がアルコール依存症と気づいてから10日間地獄を見た話。3日目。

母、帰る 昨日の出来事と母がどこに行ったかわからない状況にとても落ち込んでいた。 今日も行方が分からなかった場合、警察に相談しようと考えていた。 朝バイトに行く前、父に電話する。 母は帰ってない。 暗い気持ちでバイトに向かう。 午前中だけの勤務だった。 帰り際に父に再度電話。 母がいた。実家に帰っていた。 しばらくの間バイトを他の人に変わってもらうように手配し、 昨日の失態を取り戻すかのように 私は
森田 望美
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