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日本酒メーカーとアウトドアメーカーの話題のコラボレーションはどのように生まれたのか

著者: 日本盛株式会社

日本盛株式会社は、2020年10月7日(水)にアウトドア総合メーカー株式会社モンベルとコラボレーションした「モンベル製クージ―セット」「モンベル製クージーギフトセット」を発売しました。

※商品に関してのプレスリリースはこちらから

今回のコラボレーションは、2019年6月から取り組みを始めている、株式会社モンベルとのタイアップ商品「日本盛 生原酒 200mlボトル缶 mont-bellデザインボトル(以下、モンベルボトル)」の販売を機に実現。2020年4月には第1弾、2020年7月には第2弾のコラボレーションアイテムを発売し、10月の第3弾と取り組みが続いています。


今回は、株式会社モンベル代表取締役社長・辰野岳史氏と、日本盛株式会社代表取締役社長・森本太郎に、開発秘話やコラボレーションの経緯を話してもらいました。

■「自分たちでニーズを捉える」モンベルと「チャレンジ精神」を大切にする日本盛

ーはじめに、それぞれが手がけている事業について教えてください。

辰野:弊社は、アウトドア用品の企画・製造を手がける企業として1975年に創業しました。僕の父である現・会長が、実体験をベースに「自分たちの必要なものを自社で開発して販売する」という形で事業を展開してきました。

近年は、メーカーとしての製造だけではなく、直接お客様に提案できる場として直営店を約130店舗ほど構え、製造と販売を行なっています。


森本:日本盛は1889年に創業し、昨年130周年を迎えた企業です。日本酒の製造と販売を行っています。代表銘柄には「惣花(そうはな)」というものがあります。

また、化粧品事業も展開しており、こちらは30年ほどの歴史があります。最近では、11月2日(月)に新たに50歳以上のオトナの女性向けのメイクブランドを立ち上げ、発売しました。現在は、日本酒と化粧品という2つの柱で事業を展開しています。

ー事業を展開するうえで大切にされている考え方はありますか?

辰野:基本的には、「我々がほしいものを作る」ということを軸にしてものづくりをしていますね。

僕自身がアウトドアが好きなこともあり、自分たちでニーズを捉えているんです。それを元にものづくりをすることで、これからアウトドアをスタートする方のサポートになったり、お客様がより安全にアクティビティを楽しむお手伝いができたりすると考えています。


森本:日本酒の業界は300年・400年という歴史のある企業が多く、そういった意味では弊社はまだひよっこです。

我々は若手実業家が集まって創業した、今でいうベンチャー企業だったので、「ベンチャー企業は大企業と同じことをやっていては生き残れない」という考え方は、創業当時から変わらずに受け継がれていますね。

そのため、商品でも取り組みでも“業界初”が多いことが、日本盛の特徴だといえます。差別化した商品を発表したり、取り組みを行なったりという「チャレンジ精神」が、弊社の根幹にあると感じています。

■コラボレーションのきっかけは7年前

ー今回のコラボレーションが動き出したのはいつ頃だったのでしょうか。

森本:最初の出会いは何年前でしたっけ……?


辰野:おそらく7年ほど前だったかと。


森本:もうそんなに経つんですね。当時お会いしたときに、辰野さんが「もっとコラボレーションをしたいんだ」と話していたんです。その当時が東日本大震災の数年後というタイミングだったので、モンベルさんと日本盛とで「粉末酒などを入れて一緒に防災グッズを作れたらいいですね」という話になりまして。きっかけはそのときの会話だったのではないかと思います。


辰野:そうですね。そこで話をした際に、日本盛さんが新しいことにチャレンジしていることを詳しく知りました。僕らも基本的に「売れるから作る」のではなく「よりユニークでよいものを作る」ことを大切にしているので、日本盛さんが作る面白い製品に惹かれたんですよね。ただ、その場で話がグッと進んだわけではありませんでした。

ーどのタイミングでコラボレーションの話が進んだのでしょうか?

辰野:森本さんと何度か食事や話をさせてもらう中で、生原酒ボトル缶を開発していることを知りました。それが、モンベルのものづくりの中で大切にしている“Light & Fast”(軽量と迅速)というコンセプトに近いと感じまして。とはいっても実は、僕も会長もお酒をほとんど飲まないので、「なるほど」くらいの反応だったのですが(笑)。

“Light & Fast”(軽量と迅速)というコンセプトは、軽さは速さにつながり、速さは安全につながるという考え方で、アウトドアマーケットにおいて強いことが特徴です。重装備よりも軽くて小さいものを身につけている方が、早く行動できますよね。そういう軽さを重視しています。

生原酒ボトル缶は、お酒の鮮度が保たれることはもちろん、アウトドアの宴において活躍するのではないかと魅力を感じました。お酒は、アウトドアという危険な環境でずっと行動したあとのテントサイトでの小さい宴における重要な要素。そこで楽しむために、一升瓶を担ぎあげて行ったという人もいるくらいなんですよ。


森本:ありがとうございます。結果的にモンベルボトルの話が進んだのは、辰野さんと普段からコミュニケーションを取れていたからだと思っています。「やりたいですね」とは話していたものの、ようやくタイミングがきたと。

私は普段から「日本酒と飲む人をもっと増やそう」と言っているのですが、我々が販売促進をしている相手は、結局のところ普段から日本酒を飲んでいる方なんです。モンベルさんとコラボレーションしたことで、普段日本酒に馴染みのないモンベルファンの方に知ってもらえるいい機会になったと思っています。


辰野:ありがとうございます。モンベルクラブ会員限定の「フレンドフェア」で、日本盛さんにはいつもブースを出していただいていて。そこでは、お酒好きな方からの反応はもちろんですが、初めてや久しぶりに日本酒を飲むという方からの反応も結構ありますよね。


森本:普段は日本酒ユーザーではないけれど、モンベルさんの名前が入っているから興味があるという方がかなり多いと思います。

辰野:僕らのロゴはひとつのきっかけなので。そこで美味しさに気づいてもらって広がっていくことが一番いいなと思っています。


森本:今回のオリジナル商品の話が進んだのも、フレンドフェアのときでしたね。立ち話をしているときに「こんなのいいんじゃない?」って。


辰野:フレンドフェアのコラボレーションでは、日本盛さんの商品にモンベルのロゴが入っただけの状態だったので、そこに僕らができることがないかなと考えまして。元々「ネオプレーンのカバーを作りたい」と日本盛さんから話をいただいていたので、それを元にアイデアを練りました。

ただしネオプレーンのカバーは、上部が開いている状態だと空気が入るので、保温力や保冷力が落ちてしまうんです。そして、僕は日本酒をガブ飲みできないので、チビチビ飲める仕様にしたいなと。なので、おちょこを二重構造にし、おちょことネオプレーンカバーを合わせると、裸の状態で持つよりも保温力や保冷力がアップするようにしました。

ですが、森本さんは話だけだとピンと来ていなかったようだったので(笑)、3Dプリンターでサンプルを作ってすぐに見せにいきましたね。やっぱり実物を見てもらった方が、細かいこだわりも伝わりますし。おちょこを乗せたときのあたりをよくしたこともこだわりです。ガタつかず、カチッと音がするんです。

そして、フレンドフェアに関わってくれている協力関係のある自治体の方にも意見を聞き、アドバイスを反映して形にしていきました。おちょこの口あたりのよさは、自治体の酒好きの方たちの意見によるものです。


森本:自分たちが思っているものはすでに世の中にあるんですよね。そういった意味では、これまでにない新しい取り組みをしているから実感が湧かなかったのだと、今振り返って思います。新たなところに着目するモンベルさんはすごいなと。

おちょこを二重構造にすることや口あたりをよくすることなど、モンベルさんからの提案には驚きの連続でしたね。僕らの感覚だとお酒は注いですぐになくなってしまうものなので、二重構造は酒飲みの感覚では思いつかないことでした。


辰野:確かに、弊社の飲兵衛は「おちょこは使わず直接飲んでます」って言ってましたね。

ー機能はもちろんですが、デザインも素敵ですよね。

辰野:先ほどの“Light & Fast”(軽量と迅速)というコンセプトと同じく弊社が大切にしているのが、“Function is Beauty”(機能美)というものです。ファンクション(機能)に美しさが宿ると考えているので、必要な機能を備えつつ美しい形に落とし込んでいくということを大事にしていますね。

■ものづくりの楽しさが優ったコラボレーション

ー今回のコラボは、7年前のつながりから話が進んだとのことでしたが、実現するまでに苦労した点はありましたか?

辰野:元々ものづくりが好きなこともあり、僕としては楽しさしかなかったので、正直特に苦労したことはありませんでした。日本盛さんに「こんなのどう?」と提案してOKをもらえるだけでありがたかったです。

形や経済バランスを整えるという苦労はあったかもしれませんが、ものづくりの側面としては何も苦労だと感じることはなかったですね。日本盛さんはありましたか?


森本:デザインを決めるときには少しバタついたかもしれません。モンベルさんのロゴの裏に、日本盛は宮水のつながりから六甲山のシルエットを入れたのですが、そのあたりを決めるのが大変だった覚えがあります。

あとは、どの小売企業からも「どうしてモンベルさんとのコラボ?」と言われましたね。そこに関してはポイントを営業マンに伝えていたので、納得してもらえたと聞いています。

そして、コロナの影響で工場がストップしてしまったので、入荷が先延ばしになったというハプニングはありました。


辰野:確かにそこは少しタイトでしたね。


森本:とはいえ、私は何の苦労もせず、現場のみんなががんばってくれました……!


辰野:僕もです(笑)。

■開始40分で500セット完売!今後の取り組みの展望は

ーーコラボレーションアイテムの反響はいかがでしたか?

森本:第3弾は40分で500セット完売だったと聞いています。


辰野:ありがたいですね。

ーもっと作ってほしいという声が届いているのでは?

森本:届いてますね。辰野さん、どうしましょう?また何かアイデアを考えたいですね。


辰野:椅子・テーブルとセットにして、フィールドでお酒を飲めるようなセットなんかどうでしょう。


森本:今の延長線上というよりは、趣向を変えた方がより面白いかもしれないですね。


辰野:日本酒は衣食住の食がメインではあるものの、リビングにも入り込んでいくし、日本盛さんは化粧品も手がけているし、面白いと思います。

そして、昨今のコロナの影響で遊び方が変わってきていて、自分の好きな場所で小さな宴会をする人も増えてきているという背景もありますね。


森本:今はベランダでキャンプをするとか。


辰野:そういう方も結構多いですね。そういう意味では、昨年メインとしていたお客様だけではなく、新しい遊び方が増えてきているので、新たな取り組みができそうですね。


森本:違うアイテムを使ってコラボレーションするのもいいですし、もしかしたら日本酒にこだわらなくてもいいのかもしれないとも思います。


辰野:日本盛さんが化粧品を手がけているので、山小屋での女性のスキンケアの問題を解決するアイテムを開発するのも面白そうですね。

お互いにボツになったアイデアが、反対側から見るととても新鮮なものに感じられることもあるので、コラボレーションすることで面白い案が出てくると思います。


森本:僕も、より面白いことができないかなと考えてみました。化粧品だったら、アウトドアに役立つものに変えていかないとコラボの意味がないですよね。“水が少ない山頂でも簡単に落とせる化粧落とし”なんてどうでしょう。


辰野:いいですね。あとは、アウトドアでの日焼け後のケアアイテムとか。街中での日焼けよりも強力なので、それに対応できるといいなと思います。


森本:あとは、弊社が作ったお酒のラベルをただ変えるのではなく、“モンベル盛”を作るのはいかがでしょうか。


辰野:それ、面白いと思うんですよね。酸素の少ないところでは酔いの回りが早いので、アウトドア用に作ってもいいかもしれません。あとは塩分補給の側面ですね。登山の行動食は、汗で流れてしまうので味を濃いめに作るんですよ。その理論で、スポーツ日本酒のようなものも作れたら楽しいですね。


森本:食分野でも一緒に取り組めたらいいですね。


こうやって考えているときに、企業としての技術力が増すのだなと思います。今後も、自分たちの技術力や発想力を強化するいい機会にしていきたいですね。

■日本盛×モンベルでストレスを少しでも和らげる取り組みを

ー最後に、今回のコラボレーションを楽しみにしていたファンへ向けてのメッセージを伺いたいです。

辰野:モンベルと日本盛さんとのコラボレーションによって、モンベルが元々手がけていたアウトドアアクティビティの中に、さらにお酒を楽しむシチュエーションという厚みが増したと思っています。

こういった取り組みをきっかけに、よりアウトドアフィールドでのお酒の楽しみ方やリラックススタイルの楽しみ方を考えていけたらと考えているので、ぜひ今後もご期待いただけたら嬉しいです。


森本:現在コロナの影響で巣ごもりをしている方がたくさんいることと思います。それによるストレスを抱えている方も多くいますよね。

アウトドアもお酒を飲むことも、どちらもリフレッシュにつながること。我々の取り組みによって、緊張の糸が張っている今の状態を少しでも和らげられたら嬉しいです。そして、我々とモンベルさんとで、その効果が3倍4倍になるような取り組みを今後もしていきたいとも思っています。どうぞご期待ください!




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