「緊急事態宣言下の30日がきっかけで生まれた」VRで学ぶインタビュートレーニング講座 誕生秘話
Webメディア、書籍、雑誌などのコンテンツ制作を行う株式会社YOSCAは、2021年3月22日に「VRで学ぶインタビュートレーニング講座」をリリースいたしました。
創業して9年。理念として掲げている「ライターが幸せになるきっかけをつくる」を実現するために、様々な取り組みをしてきました。その中でも、今回のサービスリリースはもっともチャレンジングなものとなりました。
今回、「VRで学ぶインタビュートレーニング講座」がどのようにして誕生に至ったのか、そのきっかけや開発の裏側についてご紹介します。
株式会社YOSCA 代表取締役 宮嵜幸志
1984年生まれ。2008年、Webマーケティング企業の立ち上げに参画。その後、代表取締役に就任し、2012年に同社事業を売却、清算し、同年に株式会社YOSCAを立ち上げる。自身でも執筆、編集する傍ら、ライターの育成に対する強い関心から、ライター講座の企画、運営にも注力。趣味はバスケットボールと麻雀。目新しい機器や調理家電などのガジェットが好き。
新型コロナウイルス感染症がもたらした空白の時間
2020年4月7日、最初の緊急事態宣言が発令されました。その1ヶ月前頃から、直接対面して行うインタビューの仕事は延期やキャンセルとなっていき、会社の動くスピードがゆっくりになっていったことを覚えています。
いざ宣言下に入ると、勉強会などのイベントや、会食なども自粛となり、これまで使ってきた時間がぽっかりと空きました。そこで、このふとできた時間に、改めて会社として実現したいことを洗い出してみたんです。
その一つが「どうやってインタビュー経験の浅いライターさんにインタビュースキルを身につけるきっかけをつくるか」
これまでたくさんのインタビュー未経験ライターさんに、インタビューを依頼するために面談したり、現場に同行アシスタントとして同席してもらったり、逆に現場でアシスタントとして同席したりしてきました。私たちのインタビュー仕事がきっかけで、今ではインタビューを得意とするライターさんになった方もいて、とても嬉しいことです。
しかし、ここには課題があります。インタビュースキルを伸ばしていくためには、どうしても場数が必要なんです。その場数を増やすことが難しく、サポートできるライターの人数はすぐに限界が見えてしまいます。もっとたくさんの人にインタビュースキルを伸ばすための機会を作れないのか。この課題は創業以降ずっと抱えていました。
さらに、ウィズコロナの時代において、インタビュー現場に複数人で押しかけることは敬遠されます。そうなると、インタビューに同行してもらうこともはばかられ、ますますインタビュー学習の機会は少なくなってしまうと考えていました。
インタビューの同席以外に、インタビューテクニックをシェアする勉強会イベントは開催してきました。しかし、勉強会はあくまでも情報共有レベルで、そこからすぐにインタビューができるようになるわけではないことも悩みのタネでした。
学習による自信のつき方が約3倍。VR学習効果に見えたインタビューとの親和性
こうしたことを考えながら、外出もできず、自宅で悶々と過ごす日々が続き、緊急事態宣言が終わろうとしていた5月上旬。自宅を少し整理するかと掃除をしていたら、ホコリをかぶっていたVRヘッドセット「Oculus Go(オキュラス ゴー)」を発見。2年前に購入してから、放置状態となっていました。
久しぶりにいじってみるなか、突然、このVRを使ってインタビューのトレーニングはできないかと思い立ちました。普段業務に追われるなかで結びつかなかったアイディアを、たまたまできた空白の時間に立てたアンテナがキャッチしてくれました。
思い立ってからは、情報収集の日々が続きます。国内外でのVRを使ったトレーニングや研修の情報を収集し、VRコンテンツで何ができるのか、どんな利点があるのか、どう作っているのかなどを調べ、サービスの実現可能性を探りました。VRに関する展示会やオンラインイベントにも参加し、どんなVRコンテンツ制作会社がいて、何をいくらで作っているのかなども調べました。
最終的にVRでインタビュートレーニングコンテンツを作ろうとした決め手は、VR学習が通常の学習よりも学習効率が高い、学習スピードが速いという効果検証が、複数で発表されていたことです。もっとも興味深かったデータは「講義後の自分の行動への自信が、講義形式と比較して275%増加した(※)」というもの。
(※)参照:「PwCがVRトレーニングの有用性を報告、学習速度や集中力は4倍以上」
https://www.moguravr.com/pwc-vr-training-report/
インタビューは場数を踏んで、たくさんの失敗経験を積みながら、次回のインタビューでその失敗を成功に変えていき、自信をつけていくものです。この自信をつけるということは非常に重要なんです。気持ちに余裕と自信をもったライターに対して、取材相手は安心して話してくれます。不安でビクビクしたインタビュアーには、なかなか腹を割って話しにくいですよね。こうした自信がVR学習でつけやすいというのは、インタビュー未経験の方にとって、大きなメリットだと感じたのです。
また、インタビューといった身体を動かす作業は、VRによる体験学習とマッチしているとも感じました。「何度もリアルな体験ができる=場数を踏める」ということです。
こうしてVRによるインタビュートレーニングコンテンツの開発に思い切り舵を切ることとなりました。
協力者の登場と講義内容の洗練化
インタビュートレーニングコンテンツを作るにあたり、これまでライターに伝えてきたインタビューに関する知見を体系的にまとめるため、一気に洗い出しました。また、これまで貯めてきたインタビューに関する参考書類、書籍を引っ張り出し、自身の考えと照らし合わせたり、足りないところはないかを探したりしていました。
その過程で「自分の視点だけでは偏りが出てしまいかねず、一つのコンテンツとしてまとめることには限界がある」を感じます。インタビューは、基本的な型はあれど、ライターそれぞれでやり方が異なるものです。実績が多いライターには、だいたい得意な型があるほど。このように、インタビューは一言では捉えきれないものなのです。
そこで声をかけたのが、企業広報のPRをメインとしているライターの大島さんでした。これまで多少の交流はありましたが、仕事を一緒にしたことはありません。
声をかけた理由は、大島さんがネット上で発信しているインタビューに対する考え方、価値観がとても素敵なもので、共感できる部分や、自分とは異なる視点も持っていて、尊敬していたからです。数年前からインタビューに関して一緒に仕事をしてみたいと思っていました。そこで、企画書を作成して共有したところ、とても興味を持っていただき、共同開発者としてプロジェクトを進めていくことになりました。
大島さんは、これまで1000社以上にインタビューをしてきた実績もあり、その経験値をコンテンツとして一緒に形作れることには百人力の思いでした。2020年7月にキックオフし、1か月かけて、知見を洗い出し、情報を取捨選択、洗練させていきました。
手本がない、まっさらなサービスを生み出す苦労
コンテンツを精査していくのと並行して、VRサービスをどのような設計にするのか考え始めました。
VRコンテンツが肝ですが、VRは体験型のトレーニングには最適ですが、インタビューの基礎知識を伝える座学についてもVRである必要はありません。そこで2D動画による座学形式のコンテンツと、VRトレーニングの二段構えによるサービスをしました。
▲インタビューの基礎知識を学ぶ座学コンテンツ
▲学んだ基礎知識を実践するVRコンテンツ
座学形式のコンテンツを作ることは慣れていたので、すんなりと制作は進みました。しかし、VRコンテンツはまったく勝手が違います。実際のインタビューシーンを思い返して、講義用のインタビュー台本を作成していきます。これは普通の記事作成とは違う頭を使うので苦戦しました。
また、どんな画角で、どんなテロップの出し方をすると、VRによる臨場感を妨げずに、効果的な学習ができるのかも非常に苦労しました。
VR研修動画のお手本が少なく、他社のVR研修動画を見ても、インタビュートレーニングにマッチした動画はなかなか見当たりません。海外のVR動画も漁り、参考になりそうなものをリサーチしながら、何百本もテスト動画を作成して、微調整して、の繰り返しの日々。インタビュートレーニングにベストな見せ方を2か月間ずっと考え続けていました。
未来のサービスを作っている不安と時代の後押し
VRコンテンツの方向性が固まったさなか、2020年9月16日(米国時間)開催のFacebook Connectにて、新たな一体型VRヘッドセット「Oculs Quest2(オキュラス クエスト2)」が発表されました。このニュースには「これはVRがこれからますます広がるかも」と背中を押されたことを覚えています。
VRは、見たことがない、触れたことがない方にとっては、結構ハードルが高いものと感じます。こんなVR上でインタビューのトレーニングをするサービスをリリースしても、興味を持たれないんじゃないかという不安も当然ありました。
しかし、こうしたVRが大衆サービスとして受け入れられる未来が待っているなら、作ったサービスも必ず後からでも受け入れられるはず、そんな思いで開発を進めていました。
VRコンテンツの台本が最終的に仕上がったのが、2020年12月。そして、撮影、編集と進み、2021年3月にようやく完成しました。
VRコンテンツの撮影についても紆余曲折ありました。例えば、VRコンテンツ制作会社に撮影を依頼すると、一回の撮影、編集、納品でおよそ700万以上かかる見積もりの企業もあり、制作コストがかさめば、当然販売価格も上げないといけない。しかし、できるだけ安く手に取りやすい価格で提供するにはどうしたらいいかなど、色々と苦心しました。結果としてかなり提供価格を抑えて販売できることになったので、あのとき苦労して良かったです。
そのほか、色々と書きたい話はあるのですが長くなるので、要望があればまた別の機会に書かせていただこうと思います。
優秀なインタビュアーが生まれるきっかけとなりたい
いざVRコンテンツを開発して、利用者がどんな印象を受けるのかはとても心配でした。知り合いのライターに受講してもらい、率直に意見をもらったところ「インタビュー経験者だけど学ぶが多かった。何回も見返してトレーニングしたい」という良いフィードバックをもらって少し安心しました。
リリース以降も、ライター業界以外からも引き合いがあるなど、多くの方々にご興味いただき、嬉しい限りです。
ただし、まだまたチャレンジは続きます。より多くの人に使ってもらえるよう、また、愛されるよう、サービスの工夫や改善をし続けていく必要があります。VRコンテンツの追加や、インタビュートレーニングのアフターケアなど、まだまだやりたいことも山積みです。
これから生まれてくる優秀なインタビュアーの最初のきっかけが、このサービスとなるよう、今後も努力を重ねていきたいと思います。
会社概要
- 会社名:株式会社YOSCA
- 住所:〒東京都渋谷区渋谷2-14-6 西田ビル5F
- 代表者:代表取締役 宮嵜 幸志
- 設立日:2012年11月21日
- 事業内容:編集プロダクション業務/ライタースクール運営
- URL:https://yosca.jp/
本掲載に関するお問い合わせ
株式会社YOSCA 担当:宮嵜
TEL:090-6307-2668 / MAIL:miyazaki@yosca.jp
行動者ストーリー詳細へ
PR TIMES STORYトップへ