日本の伝統文化の灯を消させない!コロナ禍で“ 歌舞伎 ”と“ お香 ”がタッグを組んだ!
お香や線香、香木など香りにまつわる商品を製造販売する(株)菊谷生進堂。名古屋・銀座・上野桜木・ECサイトで、「香源」の屋号で店舗運営をおこなっています。「香源」のコンセプトは、“お香の世界を旅する人々のための案内人(コンシェルジュ)”であること。新商品の「歌舞伎演目香」は、歌舞伎ファンや歌舞伎に関わっておられる方々のお客様の相談を案内人(コンシェルジュ)が受けたことから生まれました。その誕生までのストーリーを、(株)菊谷生進堂 代表取締役社長であり調香師でもある菊谷勝彦に聞きました。
新型コロナウィルスの流行により、日本の伝統文化が未曾有の事態に。歌舞伎の本拠地である東京歌舞伎座は、現在定員1,900名に対して800名の人数制限で公演。ほか多くのイベントも中止となり、厳しい運営を余儀なくされています。
お香や線香、香木など香りにまつわる商品を製造販売する(株)菊谷生進堂。名古屋・銀座・上野桜木・ECサイトで、「香源」の屋号で店舗運営をおこなっています。中でも銀座本店は東京歌舞伎座のすぐ近く。日頃より歌舞伎関係のお客様も多く来店され、コロナ禍で直面している歌舞伎の厳しい現状を聞くことになります。「同じ日本文化である歌舞伎を何とか応援できないか…。」そういう声が、店舗スタッフから出はじめました。そして、これをきっかけに“歌舞伎”と“お香”がタッグを組む、『演目香プロジェクト』がスタートすることになります。
◆松竹株式会社の反応
日本のお香には2000年近い伝統があり、歌舞伎と同じように江戸時代に庶民に広まったものです。歌舞伎の演目イメージをお香で表現できれば、自宅でも演目を思い浮かべるきっかけになる。また次の公演へ繋がるのではないか。その社内アイデアをさっそく企画に練り上げ、松竹株式会社へ提案に行きました。その反応は……、なんとすぐにご賛同いただき、ライセンス契約を結ぶことに。
私たちが選んだ演目は「菅原伝授手習鑑」「義経千本桜」「仮名手本忠臣蔵」の3本。どれも香りをイメージするのにぴったりな演目です。香りについては松竹株式会社と銀座本店にて何度も打合せいたしました。度重なる自粛の中でも、「ではリモートで!」というわけにはいきません。タイアップの大変さを通常よりも感じました。
また、今回は香りを一から調合するため、まずは舞台のイメージにあった香りを言葉で表現してもらい、それをメインの香りと合わせて香りにしていく。イメージに近づくよう、何度も試作を作り試行錯誤する、骨の折れる作業でした。
◆お香作成の大変さ
お香はどうやって作成するのか。一般の方は想像しづらいかと思うので、ここで少し説明します。
お香とアロマ製品の香りづくりの大きな違いは、温度の差です。アロマは常温から100度代までの香りが理解できていれば調合が出来ます。一方、お香は常温からお線香状のお香が燃える温度の800度ぐらいまでの温度の変化を読みながら調合に入ります。
1.頭の中で、香りのイメージづくり
最終的なお香の色決め、パッケージづくりも同時に行います。(これは段階ごとに、繰り返し香りを焚きながらイメージをデザイナーに伝えて行きます。)
2.香原料にてパウダーにて試作(1品につき、5種類~10種類を作ります。)
※パウダー状のものを燃やしてテストを行います。ここで合格のものを線香状にします。
3.線香状の試作品(=テスト成型)(1品につき5種類~10種類を作ります。)
※ここでパウダーでは、良い香りが出ていたけれども、線香状にすると駄目な場合も多々あります。
※線香状にしないと、合格かどうかは、判断できないので、線香状にしなければなりません。
※出来立ての状態でまずは、香りチェックした後に、線香を保管します。(熟成期間数か月)
4.一か月熟成させて、再度香りをチェックします。
※ここでダメなら(納得できなければ、)1に戻り再度イメージ作りからやり直しです!
5.香りがイメージ通りならば、線香状に本生産に入ります。
◆タッグの輪はさらに広まる
歌舞伎演目香の商品開発の際、パッケージデザインについて、松竹株式会社が保有している演目の絵から2種類使用させて頂きました。
残る1種類の演目香のデザインに頭を悩ましていた時、ここでも不思議な土地のご縁がありました。「香源」の上野桜木店は東京藝術大学の近くにあり、大学に相談したところ画家の方を紹介して下さいました。
パッケージは前提として、松竹株式会社の歌舞伎に対する真摯な情熱があり、顔の位置、足の位置、背景に至るまで細かなこだわりや要望がありました。画家の方も何度となく要望に応えて下さり、試行錯誤の末、素晴らしいパッケージデザインを完成することが出来ました。
◆3つの歌舞伎演目香の完成
①「菅原伝授手習鑑」
商品情報
長さ:約14cm・15本入
燃焼時間:約30分
商品価格:税込2,200円
物語について
菅原道真公といえば、藤原時平により太宰府に左遷され、失意のままその地で没した人物です。本作品はこの菅公にまつわる史実をもとに、菅丞相の配流の場面や、大詰で時平一味を滅ぼす場面が歌舞伎らしく脚色されています。 歌舞伎では道真ゆかりの三つ子の兄弟が敵味方に分かれて争う「車引(くるまびき)の場」など見どころの多い演目です。
香りについて
【菅丞相星梅香(かんしょうじょうせいばいこう)】(菅原道真イメージ)
梅花のレシピをアレンジして、菅公の書の「三聖」のイメージから墨のような渋みのある香りを表現。
②「義経千本桜」
商品情報
長さ:約14cm 源九郎判官香5本・初音鼓香10本 計15本入
燃焼時間:約30分
商品価格:税込2,200円
物語について
義経千本桜の主人公は義経ではありませんが、源頼朝に追われる義経を取り巻く人々のストーリーをそれぞれに描いた大作となります。初音鼓香は、主人公の一人・狐忠信(きつねただのぶ)の親狐の皮が張られた鼓に由来します。この鼓は義経が静御前に贈った品で、静御前が吉野の桜の中を義経をたずねゆく道中でこれを打ち鳴らす場面が印象的です。
香りについて
【源九郎判官香(みなもとのくろうほうがんこう)】(源義経イメージ)
義経にまつわる颯爽とした風のようなイメージから、香木沈香のそのままの香りで爽やかさを表現。
【初音鼓香(はつねのつづみこう)】(静御前イメージ)
静御前が吉野の山桜の中をゆくイメージから白檀で静御前の女性らしさを表現。
③「仮名手本忠臣蔵」
商品情報
長さ:約14cm・15本入
燃焼時間:約30分
商品価格:税込2,200円
物語について
武士の嗜みとして香を薫くのが習いとなってきた南北朝時代。討たれた南朝方の大将・新田義貞の兜を、47個もある兜の中から探し当てるという、長い物語の発端のシーン(「大序」)があります。ここで登場する新田義貞の兜にたきしめられたとされるのが有名な「蘭奢待(らんじゃたい)」であり、正倉院御物に列せられる超国宝級の香木。凡俗の者が持てるはずのない蘭奢待の香りを聞き当てたことで兜の特定に至ったというお話です。
香りについて
【新田義貞香(にったよしさだこう)】(新田義貞の焚き染めた蘭奢待のイメージ)
蘭奢待をイメージした沈香の香りで武士の潔さを表現。
◆『演目香プロジェクト』が始動!
3つの歌舞伎演目香の完成とともに、CAMPFIREにてクラウドファンディングもスタートさせました。(5月31日まで実施。商品のお届けは6月予定)
https://camp-fire.jp/projects/view/396547
新型コロナウィルスの拡大から1年が過ぎ、文化芸術は悲鳴をあげています。まずは歌舞伎からスタートしましたが、今後はさらにシリーズを増やす計画もあります。
私たち「香源」の経営理念は、「お香文化をすべての人々へ、そして未来へ」。お香文化に限らず、文化芸術は私たちの心豊かな社会に欠かすことができないものです。また、連綿と続く伝統文化の灯も消えることがあってはなりません。この危機的状況を脱するために私たちは手を取り合い、そして応援し続けたいと思っています。
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