ピアノメーカーの河合楽器がハイブリッドピアノという新たな挑戦をした理由
株式会社河合楽器製作所は、1927年に創業しアコースティックピアノを中心にデジタルピアノや知育玩具などの製品を展開している楽器メーカーです。2017年には、アコースティックピアノとデジタルピアノの技術を融合させたハイブリッドピアノを発売し、国内外のお客様にお楽しみいただいております。
2021年5月21日にはハイブリッドピアノNOVUSシリーズの新製品『NV10S』『NV5S』を発売。発売から1ヶ月経ちましたが、お客様から多くの反応を頂き、特約店での展示も順調に増えてきており、好調なスタートが切れております。今後、さらに多くの方にNOVUSシリーズの魅力を知っていただけるよう、本日新製品のプロモーション動画を公開いたしました。
今回は、ハイブリッドピアノ誕生の裏側などについてNOVUSシリーズの開発に携わった河合楽器製作所 電子楽器事業部の鳥居克彦がお話しします。
ハイブリッドピアノという新たな挑戦
ハイブリッドピアノNOVUSシリーズは、当社の創立90周年を記念したモデルとして、グランドピアノアクションを搭載した『NOVUS NV10』は2017年に、アップライトピアノアクションを搭載した『NOVUS NV5』は2019年に発売しました。
当社は、1993年からANYTIMEという消音ピアノ*1を販売しておりましたが、年々
ANYTIMEの需要が増えておりました。住宅事情などの関係で消音機能を求めるお客様が増え、アコースティックピアノとデジタルピアノの生産を行っている当社に対して、デジタルピアノにアコースティックピアノと同じアクション*2を搭載してほしいという期待の声も届いておりました。楽器というものは弾き手がいてこそのものですので、お客様が求める期待には応えたいと思い、アコースティックピアノとデジタルピアノ両方の技術を持つ当社ならハイブリッドピアノをつくることができると考えNOVUSの開発が始まりました。
*1消音ピアノ…アコースティックピアノに鍵盤の動きを読み取る非接触型光センサーと電子音源を搭載することで、弦の音を消して電子音源で演奏できるため、音量変更が可能なアコースティックピアノのこと。
*2アコースティックピアノアクションとデジタルピアノアクションについて…アコースティックピアノは、鍵盤を押すと鍵盤の奥にあるハンマーが動き弦を叩くことで音が鳴りますが、デジタルピアノは弦が無いため、ハンマーの動きをセンサーで読み取り電子音を出しています。音を出す仕組みが違うためデジタルピアノのアクションは、アコースティックピアノアクションの構造と異なります。しかし、ハイブリッドピアノではアコースティックピアノアクションと同じ構造のNOVUS専用アクションを搭載しているため、アコースティックピアノの弾き心地を実現しています。
ハイブリッドピアノの新しいカタチをつくりだす
ハイブリッドピアノをつくる技術は揃っていましたが市場にはすでにハイブリッドピアノが存在していたため、それらと同じものをつくっても意味がない。楽器をつくる企業としてお客様に新たな価値を提供しなければならない。このような想いから今ある技術だけでなく何か新たな機能を開発し、カワイにしかできない新しいハイブリッドピアノを目指そうということになりました。
“新しさ”を生み出すということはとても難しい課題でした。当社のデジタルピアノ開発では、鍵盤や音源、電子基板、スピーカーはすでに着手して改良を続けていたので、その部分を刷新しても“新しさ”という意味ではインパクトが弱いと感じていました。お客様が一番求めているのはやはり「アコースティックピアノの弾き心地」ですので、その部分で“新しさ”を考えたときに注目したのがダンパー機構*3でした。それまで業界でダンパー機構を搭載したデジタルピアノやハイブリッドピアノはありませんでしたので、ダンパー機構の開発により、アコースティックピアノのタッチ感にさらに近づくことができましたし、カワイ独自の“新しさ”を生み出すことができました。2年後に発売したNV5についても“業界初の奥行きの薄さ”を実現し、NV10とは違った新しさを備えました。企画から発売まで“新しさ”というポイントをとても大切にしてきたので、ラテン語で“新しい”という意味の『NOVUS』を製品名としました。
*3ダンパー機構…アコースティックピアノに備わっている機構で、弦の振動を抑えたり解放したりする役割を担っており、ペダルを踏むことで弦の振動を開放する。そのため、アコースティックピアノでは、ダンパー機構によりペダルを踏んだ時と踏まない時のタッチに差が生まれる。NOVUSにダンパー機構を搭載することでそのタッチの差を再現している。
▲NOVUSに搭載しているタンパー機構
新しさを生み出す苦労
ダンパー機構を搭載するにあたり“アコースティックピアノのタッチ感に極限まで近づける”という点が一番重要だったので、そのために構造の調整を何度も繰り返し行いました。デジタルピアノにアコースティックピアノのダンパー機構を組み合わせることは今まで前例がなく、どうしたらよいか行き詰ることもありましたが、部品1つ1つの重さにまで着目し、目標である鍵盤タッチを実現しました。
NV5についてはコンパクトさを重視していましたが、鍵盤や電子基板、スピーカーなど本体内部に搭載されているものが多く、“業界初の奥行きの薄さ”を求めるには必要な機構を搭載するだけでもギリギリな状況で、ここにダンパー機構も搭載するということは難しい課題でした。それでも“業界初の奥行きの薄さ”というのは妥協できない点だったため、多くの時間をかけ構造や取り付けを工夫することで薄さとダンパー機構搭載の両方を実現することができました。様々な苦労の末に目標が達成でき、アコースティックピアノの演奏感を求めるお客様に最高の製品をお届けできましたので、苦労の甲斐があったと感じています。
NOVUSの可能性を引き出す
NOVUSが誕生してから4年が経ち、音楽愛好家からピアニストまで幅広い方々に弾いていただける機会が増え、嬉しく思っています。NOVUSは、アコースティックピアノ特有の複雑な音を再現するため、ハンマーが弦に当たる瞬間の音、鍵盤を押した時に下に当たる瞬間の音などとても細かな音までサンプリングしていることで、演奏者の表現に応えることのできる製品だと思っています。お客様からは「思い通りに音が出る」「強弱の表現がグランドピアノのよう」などの反応や、タッチにこだわりのあるピアニストの方々からも「アコースティックピアノを弾いているみたい」「ずっと弾いていたい」など想定を上回る反響をいただき自信につながっています。
ハイブリッドピアノは、家での練習用と捉える方も多いかもしれませんが、演奏会でも使っていただける製品だと思っています。今後、NOVUSによる演奏会が増えてくると嬉しいです。
楽器は演奏者がいてこそのものです。だからこそ弾き手が求めるものを目指していかなければならないと思っています。NOVUSシリーズにはまだまだお客様の期待に応え進化できる可能性があると感じていますので、演奏者の声を集めながら今後もさらに高みを目指して取り組んでいきたいと思います。
NOVUSシリーズの新製品 NV10S(左) NV5S(右)
今回ご紹介したNOVUSシリーズの新製品『NV10S』『NV5S』は、音源システムのバージョンアップやスピーカーシステムの改良などで、よりアコースティックピアノに近づきました。カラー液晶タッチパネルのデザインの刷新など操作面においてもより充実した製品となっておりますので、新しくなったNOVUSシリーズをご自宅や演奏会など幅広いシーンでお楽しみいただければと思います。
◆NOVUSシリーズ新製品動画
◆NOVUS特設サイト
https://www.kawai-global.com/novus/jp/
◆NOVUS NV10S製品サイト
https://www.kawai.jp/product/nv10s/
◆NOVUS NV5S製品サイト
https://www.kawai.jp/product/nv5s/
行動者ストーリー詳細へ
PR TIMES STORYトップへ