【連載】カタリスト・データ・パートナーズが目指す未来(1)
■第1回:
学研ホールディングス デジタル事業本部副本部長兼デジタルソリューション室長
山内 秀樹(やまうち ひでき)様
2021年7月に『データシェアリングで「社会の発展」や「個人の幸せ」を実現する』をビジョンに掲げ、誕生した(株)Catalyst・Data・Partners(以下、カタリスト)。このビジョンのもと、パートナーと共に目指す未来とは?様々なパートナー企業との対談を連載でお届けします。
第一回目となる今回は、出資企業である(株)学研ホールディングス(以下、学研HD)デジタル事業本部副本部長兼デジタルソリューション室長 山内秀樹様にご登場いただきます。
(左)カタリスト・データ・パートナーズ 田中 康正/(右)学研ホールディングス 山内 秀樹様
■学研HDにおけるDX戦略のカギは「学研ID」
田中:
山内さんが学研ホールディングス(以下、学研HD)に入社されたのは2021年ですよね。
まずはそれまでのご経歴から簡単に教えていただけますか?
山内:
2000年に日本経済新聞社に新卒入社をしました。
最初は、無料のニュースサイト「NIKKEI NET」や、「iモード」向けニュースの開発、その他ネット関連サービスの開発や企画、データ解析に携わりました。
2008年のリーマンショック以降は、世界的に新聞社の台所事情が厳しくなり、社内でも新聞のデジタル化への機運が盛り上がってきました。2010年には「日経電子版」を立ち上げましたが、このプロジェクトで今後の生き残りをかけたサービス企画や開発に携わりました。
田中:
そこで取り組まれたのが「日経ID」ですね。
山内:
はい。顧客により良いコンテンツ提供をするために、顧客と直接つながって、顧客志向でサービスを提供していく必要があります。IDから得られる顧客情報やデータを活用し、具体的なニーズを捉える必要があると考えました。そのために、単なるログインIDではなく、「日経ID」を1つのサービスととらえて立ち上げました。その後、社内やグループ各社とのIDの統合を進めながら、電子版の成長に合わせて1000万人規模のIDに成長しました。この「日経ID」を通じて単にPVだけでなく、「どんな人がどんな風に読んでいるか?」まで分かるようになったので、それをいかに活用し、コンテンツやサービスの質を上げるのか、つまり記者やビジネス担当者が活用できるデータの仕組みを整えました。
多岐に渡る顧客のニーズを捉えながら、グロースハックに貢献するためのプロダクト開発体制にデータをどう活用し、最適化するか、という仕掛けづくりにも取り組んできました。
田中:
その後、2021年に学研HDにジョインされたのは、どういったところに魅力を感じられてのことでしょうか?
山内:
実は母親が「学研のおばちゃん」だったんです。ですので、幼少期から「科学」「学習」などの学研のコンテンツが身近にありました。
また、自分も小さい子どもがおりまして、学研が提供するような子どもの興味を伸ばしてくれる楽しいコンテンツで育ってほしいと考えたことも理由のひとつです。
学研は、さまざまな形で提供する学びの提案を通じて、今後社会で求められる多様性や探求力、考える力を伸ばす会社だと思っています。
今後教育がどんどんデジタル化するなかで、学研のサービスもデジタル時代に形を変えて価値を提供していく道を考えているということでしたので、自分がお手伝いできることがあるのでは、と可能性を感じてジョインさせていただきました。
学研HDの事業は大きく「教育」と「医療・福祉」です。教育分野では、「学研教室」等のリアルな学びの場の展開と、出版事業。医療・福祉分野では、サービス付き高齢者向け住宅の原型となる仕組みを作り、パイオニアとして社会に貢献できるさまざまな取り組みを展開しています。
教育と医療・福祉を通じて、すべての人の一生の幸せをサポートする。これが学研グループの大切にしていることです。
その軸のもと、多くの事業を展開していることが魅力でもある一方で、それぞれの事業のシナジーが生み出せていないことが課題でもあります。また、顧客において「学研のコンテンツやサービスを使っている」という認識が低いという課題もあります。
それをこれまで自分が培ってきた「ID」の考え方も活用し、学研グループのポートフォリオをどうつなげていくか、そしてそれを顧客に提案していく関係性の構築が今後自分のライフワークになると感じています。
<学研グループの主な事業>
田中:
たしかに、最初に山内さんとお話をしたとき、学研HDの事業は人生のはじまりと終わりの接点はあるが、その間が抜けているのがもったいないと感じ、そこをつなぐ提案をお持ちしていたところに、「学研ID」の構想を伺って、想いは同じだと感じました。
山内:
そうですね。学研のDX戦略として重要なのは、「学研ID」を軸に顧客との関係性を改めて深めていくことだと思っております。
先ほども申し上げたとおり、我々のサービスは多岐に渡っていますが、それぞれが繋がっていません。
学研IDを通じて顧客のニーズと向き合い理解することで私たちの提供するサービスはどうあるべきかを考え、様々な事業をデジタル化し、繋げながら、IDも活用して顧客ごとに提案していきたいと考えています。
■カタリスト、そして「オープンデータ」への期待
田中:
その実現に向けて、カタリストのオープンデータ構想に賛同いただいたのでしょうか。
山内:
はい。
これまでひとつの事業会社だけで顧客のニーズを明確に捉えることは難しいということを経験してきました。
「ID」を通じて顧客と向き合うことで、商材やサービスへのフィードバックは貯めることができます。一方で、顧客が我々の商材やサービスと接していない時間は何をしているのか、他にどんなものに興味があるのかは分からない。さらに今後の潜在顧客はどんな人がいるのかも見えてきません。
これらを知らなければマーケティングとして完結しないし、顧客へのおもてなしとしても完結しないことに課題感を感じていました。
カタリストがやろうとしているのは、まさに私たちが求めているデータの活用。
私たちの顧客になる前の状況や、他にどんな興味関心があるのか、それを踏まえて私たちに寄せている期待はなにか、ということを理解するための材料をオープンデータという形で一緒につくっていくことができると感じています。
継続的に出版業界をはじめとした様々なデータを集め、そこから顧客の潜在嗜好やニーズ、そしてその先のサービス提供の在り方まで議論を重ねながら取り組めることは一つの事業会社ではできないことですし、私たちの顧客に対してよりよい価値を一緒に創っていけることに魅力を感じています。
田中:
ありがとうございます。
まずは学研のデータと私たちのTSUTAYA購買データを、適法な範囲でつなぎあわせることからスタートすることで、課題として捉えていらっしゃる学研コンテンツとの接触が抜け落ちてしまう期間においても学研のコンテンツを提案できる仕組みづくりに取り組みたいですね。
併せて、私たちは「商品データ」(感性データ)をよりリッチにし、「購買データ」と掛け合わせることでより顧客のインサイトに踏み込み、最適化されたマーケティングに活かしていきたいと考えているので、ぜひ一緒に取り組みたいです。
山内:
顧客のライフスタイルを考えたとき、個社ごとのデータでは顧客を断片的にしかとらえられません。それをオープンにみんなで取り組み、より深く明確な顧客ニーズをとらえることで、新しい価値がどこにあるかを一緒に探し、お客様にもよりよいコンテンツやサービスを通じてその成果をお返しさせていただきながら、新たなものを創造していけるはずです。
田中:
我々はデータが世の中を変えると信じています。
今後は、できるだけいろいろな方向性での連携を検討していきたいと考えていますし、そのためにもまずは学研HDとの先行事例をトライアンドエラーしながら積み上げていきたいですね。
■データによる“個人の幸せ”とは
田中:
一方で、データ活用というイメージでは「企業がデータを入手して」という感覚があるかもしれません。
しかし本来は企業がデータを顧客から「お預かり」していますので、個人の幸せに直接フィードバックできる方法がもっとあってもいいのではないかと思っています。
山内:
どうしても現状だと企業にデータが「集約」されているイメージがあるのだと思います。
それに対してKEYとなるのは「能動性」だと思います。
情報化社会の現代において、溢れる情報の中から能動的に自分が何を選択してきたのか、自分が知らない自分の足跡がデータとして残るわけです。これが蓄積されることによって、自分に向いているものはなにか、自分はどういうところを伸ばせばいいのか、そんな自分の新しい可能性が示されることはみんなが求めていることではないでしょうか。
田中:
そうですね。そんな風にデータの活用はもっと顧客にとって楽しいものであるべきだと思います。
山内:
今は、自分のデータが何のために使われているのかが見えないところが「怖い」という印象も持っている方もいらっしゃると思います。なので、顧客に対して十分な説明を行い、顧客から信頼を得てデータを預けていただくかわりに、データを新たな価値として提供するという文化を創っていきたいです。
田中:
人々のライフスタイルが多様化してきているなかで、個人情報をお預かりしている企業の責任として、適法かつ、顧客の十分な理解を得ながら個人の可能性を示す、そしてその可能性を実現するサービスに活かし、提案していく。それがデータによる“個人の幸せ”に繋がる気がしています。
山内:
社会にデータを還元することで“個人の幸せ”を実現する、これに共に取り組んでいきましょう。
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