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弁ばねメーカーが竹事業? 地域密着SDGs挑戦!~若手の挑戦を生かしたサステナブル事業~

著者: サンコール株式会社

光を透過しない 漆黒の竹炭

 「竹炭事業」は、自動車部品メーカーのサンコール株式会社(本社:京都市、社長:大谷忠雄)が、京都府宮津市の放置竹林問題の解決をコンセプトに展開している地域貢献型サステナブル事業です。京都/宮津産の竹のみを使用した京都原産の炭であることから、かぐや姫伝説発祥の地である京都の竹林を連想させるよう「京かぐや炭Ⓡ(読み:きょうかぐやすみ)」というブランドを打ち立て、さまざまな用途への活用へ取り組んでいます。


竹炭オブジェ(中央)竹炭を使用した塗料を塗布している

  独特なマットな風合い(漆黒性)・遮光性・高抵抗性をもつことから、他には無い機能材料として注目され、2018年から自動車のインパネ(インストゥルメンタル・パネル)用のインクの材料として採用されています。



◆宮津の’’困りごと’’竹害をクリーンに生かす

宮津市は京都北端に位置し、天橋立で有名な自然豊かなまちです。京都府の竹林面積の約10%を有する同市は、荒廃した放置竹林が古来の生態系を侵食し、災害・獣害などを引き起こす「竹害」に悩まされており、竹資源の有効活用が市全体の課題となっています。


天橋立飛龍(宮津市提供)


  当社は2013年から宮津市の協力のもと、こうした放置竹林を伐採した竹を工場で炭化し、粉砕・分級した工業製品「竹炭」として販売するという新しいビジネスに取り組んできました。環境にやさしい製品化プロセスをモットーに、過熱水蒸気を用いた炭化装置により、竹を燃やさずに炭化しています。この方法により、通常野焼きなどでは大量に発生するCO2排出量を大幅に抑えることに成功しています。

弁ばねメーカーが竹事業?

弁ばね用線材メーカーとして京都に生まれたサンコールは、エンジン・ミッション等、車の基幹部品メーカーとして、70年以上に渡り日本の自動車産業と共に歩んできました。『材料から精密加工品までの一貫生産』という世界でも類を見ないビジネスモデルを踏襲し、自動車メーカーのよきパートナーとして、強固な信頼関係を築き続けています。2022年2月に発表した中期経営目標(注1)では、環境・エネルギー分野への貢献を指針の一つとして掲げ、エンジン車部品メーカーから、サステナブル企業への飛躍をはかっています。


エンジンの弁ばねを中心に製造している


◆地域に受け入れられるビジネスを 若手の発案


 竹炭サステナブル事業については、その興りは10余年前にさかのぼります。2011年の東日本大震災後、大きく転換期を迎えた日本で、当社若手チームの会’’Suncall Junior Academy(JA)‘’では、20年後のコア技術の創生をテーマに、企業価値をあげるための新たな取り組みを模索していました。世界を震撼させた原発事故では、日本のエネルギー信仰が大きく揺らいだことから、地域ぐるみの「バイオマスエネルギー開発」をテーマに選定します。

既存の自動車部品の生産という枠を超えた壮大なテーマ選定について、「自分達のもうけだけでなく、地域から受け入れられることが大事。人を助けて困りごとを解決する、ひとのことを考えた企業活動が大事。」と当時メンバーの1人だったN氏は語ります。



◆天橋立の危機?! 宮津市のプロジェクト


京都の企業が地域ぐるみのバイオマス開発を行うにはどうしたらよいのか。国内バイオマス政策の例としては、既に50年以上サステナブルな都市開発に取り組む岡山の真庭市などがあります。それらを視察しつつ、JAが着目したのが、2007年に「宮津市地域新エネルギービジョン」をうちだし、自立型循環社会への変革を模索していた宮津市です。


宮津市の放置竹林(宮津市)


 観光が基幹産業である宮津市は、海水面が1m上昇すると景勝地「天橋立」が消滅するため、地球温暖化への対応が死活問題となっています。13,500haに及ぶ豊かな森林資源を生かした「バイオマスタウン構想」の項目には、竹害を念頭に置いた「竹資源の有効活用」も含まれていました。


 竹害の脅威は、地面に浅く根を張るため山の保水力が低下すること・地盤が弱くなり地すべりが起きやすくなること・高く育つ竹に太陽が遮られるため元々の樹木が育たなくなった結果、獣が里山を荒らす獣害が発生することなど、多岐に渡ります。

宮津市はこうした悩みを抱える市民から伐採エリアを募り、切り出し回収した竹を、民間企業が販売する仕組みを始動させ、持続可能なビジネスにつなげることを目指していました。同市の開催したシンポジウムにてこの取り組みを知ったJAメンバーは、市長とコンタクト、2013年夏には同市へ訪問し、交流が始まりました。


◆先端技術との出会い


こうして出来たつながりを成功に導いたのが、当社開発チームです。当時、開発部門では過熱水蒸気を利用した連続炭化装置の活用方法に取り組んでおり、低融点の金属などの産業廃棄物の再生や、焼却廃棄されている廃棄食品・飲料残渣などを炭化して有価物に変える試験を重ねていました。ここで必須となるのが、サンコール本社工場に近い京阪神近辺での炭化資源の確保です。しかし、土地の所有権の問題、資源の運搬などの問題からなかなか提供元を見つけることが出来ませんでした。

広大な竹林面積をもち、行政が手を入れて資源の安定供給が出来る宮津市、竹の具体的な加工方法をもつ企業の出会いは双方にとって’’渡りに船’’だったのです。

2013年秋、JAメンバーが開発メンバーを伴って再度宮津市を訪問。同市の補助を頂き、竹を加工するための過熱水蒸気炭化設備を竹資源管理センター(当時)の施設内に設置することが決定しました。2015年には自動車タッチパネルへの採用による需要拡大から、建屋の改築を行い、本格稼働が開始しました。



伐採・乾燥された放置竹林(宮津市、サンコール宮津工場敷地内)



宮津の美しい自然を生かして

 こうした出会いから生まれた「京かぐや炭Ⓡ」は、宮津市里波見に位置するサンコール宮津工場にて現在も生産されています。当方チームも先日視察に行きましたが、竹が連なる竹林は、人里の裏山を侵食して押し迫り、重機の侵入が出来ません。足元に散らばる枯死した竹を取り除くだけでも大変な作業かと思われました。切り出す部分だけでも1本あたり全長8m、重さ25kgにも及ぶ竹材は、1日作業しても1人50本程度しか切り出せず、ご案内頂いた市のご担当は「昨年手を入れたエリアもまた生えてくる。何年も持続しないと意味がない」と仰っておりました。

宮津市は、8割が山の緑に覆われ、南部には大江山連峰、北には海外線が天橋立の砂洲によって結ばれる美しい街です。宮津の美しい自然保護の為、今後も拡販をすすめ貢献してまいりたいと思います。


立ち寄った道の駅より宮津湾を望む(宮津市)


注1:(※1)サンコール新中期経営計画「GLOBAL GROWTH PLAN 2024(GGP24)」(2022年2月10日)

https://www.suncall.co.jp/wp/wp-content/uploads/2022/02/20220210ggp24url.pdf





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