東南アジアの社会課題に挑む! --スマートドライブ のCSOは海外事業をどのようにドライブするのか?
交通渋滞や大気汚染、交通事故、、、東南アジアが抱えるモビリティ業界の課題は非常に大きく、大都市圏の交通課題が経済成長の疎外要因になっているとも言われています。このような深刻な社会課題に対し、スマートドライブCSO(戦略責任者)の菅谷は「難しさと同時に、社会に良い変化をもたらす可能性が大きく、挑戦し甲斐がある」と語ります。
一方で東南アジア各国では新型コロナウイルスによるロックダウンが発令される等、必ずしも事業展開にとって追い風ではない状況も。そんな中、スマートドライブが今後の海外事業の展望をどのように考えているのか、たっぷりと伺いまいした。
スマートドライブ の海外事業の現状について
ーまず、スマートドライブが海外展開する理由や、海外事業の現状について教えてください。
スマートドライブは2019年から海外展開を開始し、現在は東南アジアに注力しています。なぜ東南アジアなのかというと、どこも交通渋滞や大気汚染、交通事故など、移動に関する大きな課題をかかえているからです。スマートドライブは創業当初から「移動の進化を後押しする」というビジョンを掲げて事業展開してきております。データ活用に強みを有しており、弊社ならでは方法で社会課題の解決ができるのではないか、と思っております。
ありがたいことに、東南アジアには親日の方が多く、「日本企業と働きたい」という声をよく耳にいたします。これもこれまで日本企業の諸先輩方が現地で事業を展開し、信頼を培ってきたおかげだと思っております。また、昨年末からJETRO(日本貿易振興機構)によるマレーシアでの「SGDs型スタートアップ支援プログラム」に参加させていただいております。こうした、様々な形での支援もございまして、東南アジアはスマートドライブとして注力すべき地域だと感じております。
ーJETROからの支援プログラムはどういったものなのでしょうか?
JETROさんに現地の財閥企業であるSUNWAYグループに弊社を紹介していただいて、一緒にSDGsを強く意識した事業開発を行っていくという主旨のプログラムになっています。SUNWAYグループは、経営の中でSDGsを非常に重視していることもありますが、我々が提供するサービスによって、東南アジアならではの社会課題(交通時事故や渋滞など)を解決することは持続的な開発につながると思っていますので、どういった形で協力できるか継続的にディスカッションしている状況です。
もともと不動産デベロッパーがメインの事業の会社ですので、SUNWAYシティという街をつくり、そこに拠点を構えて従業員の方が通勤したり住んだりしています。そこで、通勤する従業員の方を対象に、安全運転を促して交通事故を減らしたりとか、それに加えて渋滞を減らしたりといった取り組みができないか、とスマートシティについてもディスカッションをさせていただいています。
ーSUNWAYさまとスマートシティについてディスカッションをしている、とのことですが日本同様にマレーシアでもスマートシティは注目されているのでしょうか?
そうですね、マレーシアやタイでもスマートシティのプロジェクトに関する引き合いは頻繁にいただいております。スマートドライブのサービスを利用すると、移動体から走行データを集めて、データを可視化して、行動変容を促すことができますので、よりスムーズな交通を実現できるかもしれません。この「行動変容」というのが動態管理サービスではなかなか難しく、ドライバーに対して何らかのメリットがあるからこそ、行動変容を促すことができると考えています。そうった意味で、運転に応じてポイントを提供できるSmartDrive Carsは、スマートシティにおいても興味を持っていただいております。
例えば、工業団地では工場に出社するために大量の車やモーターバイクが一気に道路に押し寄せ、「1時間に数センチしか進まない」というようなひどい渋滞が起きてしまいます。そこで、SmartDrive Carsを活用して「混雑していないルートを通るとポイントを付与します」ということをすると、車両を分散させることができますね。さらに安全運転に応じてもポイントが付与されますので、安全運転に気を付けて運転することで事故が減り、事故渋滞が減ることで全体の通勤時間も短くなります。
企業にとっても、その工業団地内外での移動時間が減るというメリットがあり、工業団地を運営している会社からすると、企業の誘致がしやすくなるというメリットがある。これはあくまで一例ですが、渋滞や事故を減らしつつビジネス的にもメリットを生み出せますので、SUNWAY様だけではなく、様々なスマートシティ関連のプロジェクトにおいてディスカッションが進んでいます。
ーなるほど、ありがとうございます。マレーシアでは新型コロナウイルスの影響によりロックダウンが発令されましたが、影響はありましたか?
ちょうど、サービスをローンチしようかというタイミングでロックダウンが発令され、外出を伴うビジネス活動は一旦休止となりました。最近になって新たな感染者数も減ってきたということで、ロックダウンも部分的に解除され、経済活動が徐々に再開されてきています。
経済活動の再開以降の進捗は目覚ましいものがありまして、特に日系の物流企業から引き合いが強くあります。動態管理のサービスは現地にも数多くあるのですが、スマートドライブの安全運転にフォーカスしたサービスは珍しい、と高く評価をいただいております。
「安全運転にフォーカスしたサービス」とは、先ほど述べたSmartDrive Carsのことなのですが、これは安全運転の度合いに応じてポイントを付与し、ポイントが貯まるとギフト券や商品・サービスとの交換ができるサービスで、従業員向けに福利厚生の一環として提供する、といった形での利用も可能です。こうした、スマートシティだけでなく従業員満足度向上という部分に興味をもらいまして、物流関係の企業様からスマートドライブの海外事業における初受注をいただきました。
また、ありがたいことに日系企業に限らず現地企業とも複数の商談をさせていただいております。その一つが、多数のドライバーがラストワンマイルを支えているEコマースの会社でして、こちらも動態管理だけなく、ドライバーに対しても安全運転を促したいということで、ディスカッションが進んでいます。
東南アジアが抱える社会課題とは?
ー東南アジアでスマートドライブが解決しようとしている社会課題について教えてください。
マレーシアやタイで様々な方と会話しましたが、やはり皆様「交通事故の削減」に大きな課題感を抱えていらっしゃいます。特にモーターバイクの交通事故は非常に多く、なんとか減らしたいと。通勤時にバイクを利用する方が多いため、そこでの事故が多いのです。怪我をすることで働けなくなってしまうリスクもありますし、従業員の安全を守るため、改善できる方法を探している企業が多いように感じます。
だからこそ、弊社の安全運転を促すサービスの採用につながっているのだと思います。
ーSmartDrive Carsのように運転者の方にインセンティブを提供して、安全運転を直接促すようなサービスはあまり無いのでしょうか?
そのようですね。「これは珍しい」とよく言われます。動態管理はできているけど安全運転の推進はできていない企業が多く、ドライバーにもメリットがある形のほうが心理的ハードルが下がるので、管理者としてもドライバーに説明しやすく、導入しやすいのでしょう。
ーなるほど。先ほど日本と違ってバイクの交通事故が多いとの話がありましたが、バイクならではの難しさもあるではないですか?
二点ありまして「データ取得」と「プライシング」にバイクならではの難しさを感じています。
安価にバイクから走行データを取得できるIoTデバイスはまだ世の中にないですし、スマートフォンから走行データを取得しようにもGPSデータを取得・送信ことをブロックする流れもありするので、バイクは自動車のように簡単にデータを取得することが困難なのです。次にプライシングです。バイクに乗る方の所得は比較的低い傾向があるので、価格設定も慎重にならざるを得ません。
とはいえ、難しさはありますが台数が非常に多いので、大きなポテンシャルがあるのも事実です。
ーマレーシアやタイならではの商習慣で苦労したなというようなことはありますか?
比較的親日派の方が多いので、やりにくいと感じることはそこまでありません。あえて一つあげるとしたら、やはり価格のところですね。多くの方に使っていただいてこそ大きな価値を提供できると考えていますので、現地の方の感覚にフィットした価格帯と機能、かつ二輪車が多いという特徴に合致したサービスを作ろうと、挑戦しています。
スマートドライブ の海外事業が目指す先
ー海外事業の体制について教えてください。
現時点では日本からの駐在員が1名と現地採用の営業が2名、総務が1名です。マレーシアは多民族国家で、大きくはマレー系の方と中華系の方がいて、それぞれにアプローチするという意味合いも含めて採用しています。その他、日本に今後駐在予定の社員が2名います。コロナの影響もあり今は日本にいるのですが、マレーシアの事業が軌道になったタイミングでマレーシアに駐在する予定です。
さらにいうと、多言語対応や日本で展開しているサービスの海外対応など、開発チームからも数えきれないほど多くのメンバーが何らかの形で関わっていますし、走行データを取得するためのデバイスの調達や検証周りでも多くのメンバーが関わっています。つまり、ほぼ全社員が関わっているような形になりますね。
ー現地のスタッフと情報共有だったり指示を出す時に気を付けていらっしゃることはありますか?
「我々は現地のマレーシア企業になるのだ」というメッセージを常に出しています。日本からやってきて現地の方を雇って日本人がビジネスを展開するというより、現地のマレーシアの方がいずれリーダーとなって事業を展開していく形にしたい、ということを現地スタッフには常々伝えています。
ー海外展開ならではの「やりがい」や「楽しさ」はありますか?
ビジネスという視点からは少し離れるのですが、日本の現役世代は社会人になった時点で世の中が全体が低成長で、高度成長を体感したことがありません。一方、東南アジアは高度成長中なので、ダイナミックな雰囲気を体感できるというのは、単純に面白いなとワクワクしています。
あとは、繰り返しになりますが、やはりモーターバイク中心のマーケットは難しくて、越えるべき壁が沢山あります。一方で、モーターバイクが抱える課題を解決することは社会的インパクトも大きく、挑戦のしがいがあります。スマートドライブならではのやり方で、チーム一丸となって、東南アジアが抱える社会課題を解決したいと思っています。
ー最後に、海外展開における今後の方向性を教えてください。
スマートドライブは創業当時からモビリティ分野におけるグローバルなMobility Data Platformをつくることを目指してビジネスを組み立ててきました。データ活用を通じたサービス作りにおいては強みを有していると自負しております。マレーシアでも、弊社のプラットフォームはパートナー企業様にとっても使い勝手が良い、というご評価をいただいており、販売やサービスの共同開発といった様々な切り口での協業の話をいただいております。そういった事業開発の側面を進めつつ、
まずはマレーシアでしっかりプロダクトマーケットフィットさせ、本当に必要な機能は何なのかや適正な価格帯を見極めて、マーケットにあったプロダクトをしっかりと作っていきます。それができれば、他の国や地域にもサービスとして横展開できるのではないかなと期待しています。
市場にマッチしたサービスをしっかり考えるというマレーシアでの経験は、日本でもサービスを作る上で役立つと思っていますので、しっかりと進めていきます。
【本記事の関連プレスリリース】
行動者ストーリー詳細へ
PR TIMES STORYトップへ