グローバル刃物メーカー貝印のこだわりを凝縮した『関孫六』 新製品『要』の開発までに込められた“ものづくり”に対する思いとは The Story of 要(かなめ)ーーー関孫六 マスターライン 第四章
国内家庭用包丁シェアNo.1ブランド※『関孫六』からいよいよ発表された『関孫六 要』。その誕生にまつわるストーリーをお届けしてきたこの連載もついに最終回の第四章を迎えます。11月にローンチとなった『関孫六 要』、今後に向けた想いを語ります。
※自社調べ
調査期間:2021年1月-2021年12月まで 国内家庭用包丁売上金額において
「関孫六 要」リリース:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000394.000025105.html
語っていただくのは、『要』の“要”とも言える、この三方。
第四章(最終章) ――― 目標点〜めざす未来
お披露目(2022年11月8日)
本日は2022年11月8日。毎年実施している“いい刃の日”メディアイベントです。この日、『関孫六 要』の発表の場となるのは、東京・銀座にある商業施設GINZA SIX(ギンザシックス)の地下3階に構える観世能楽堂。かつては渋谷の松濤にあった伝統ある檜舞台が、最新のテクノロジーを備えた商業施設に移築され、新たな時代の能楽堂として生まれ変わりました。ここは、日本の伝統美と高度な技術が融合した『関孫六 要』のデビューに、まさにうってつけの舞台と言えます。
―――今回もどうぞよろしくお願いいたします。これまで三章にわたり、『関孫六 要』の完成までの道のりを話していただきました。こだわりや想い、苦労が伝わったのではないでしょうか。
さて、お披露目の式典も無事終了して、それぞれに期待感などが高まっていることと思います。この『関孫六 要』をどのようなお客様に買っていただきたいですか?また、どういったところに感動していただきたいですか?
大塚
はい。『関孫六 要』の特徴である“シンプルさ”や“日本古来のルーツ”に魅力を感じていただけるお客様に買っていただけると嬉しいですね。リブランディングを検討する段階で話していたんですが、これを機に、『関孫六』ブランドのイメージをより“オーセンティック”なものにしていきたいと考えました。主に海外向けに販売している高級包丁ブランド『旬』とはある意味“対極”となるプロダクトとして、日本はもちろん、海外のお客様にもそういった魅力を感じていただきたいと思います。
―――なるほど。お披露目でも社長から、この『関孫六 要』を皮切りに、ブランドの刷新に注力したいと力強くおっしゃっていましたね。いかがですか?
丸山
私はよく週末に料理をするのですが、ゆっくりできる時間があって、道具にこだわり、楽しみながら料理をするのって、とても有意義なことだと思うんです。そういったお客様に『関孫六 要』を買っていただき、使っていただけたら嬉しいですね。
―――“いい道具”を使うとテンションが上がりますし、心も豊かになりますよね。
百瀬
今回、『関孫六 要』に採用されたのは新しい鋼材ですし、素材には相当こだわっています。先ほどの通り、道具にこだわるお客様で、さらに、素材にもこだわるような方には、ぜひ一度手に取っていただきたいと思います。前回にもお話しさせていただきましたが、今回この新鋼材を使用した包丁は、今後より注目を浴びると思っています。
―――素材もそうですが、この『関孫六 要』は、パッケージにもこだわりが詰まっていますよね。
大塚
この四角いブロックのような形に行き着くまでに、たくさんの試作を繰り返しました。既存の『関孫六』ブランドの薄型の紙製ボックスのスリーブを変えるなど、既成のものをアレンジすることから始まり、全くちがう形もいろいろ模索しました。そんな試行錯誤の中で生まれたのが、この“重み”を感じるプロポーションでした。
――― “鋼材”のような“かたまり”感もありますね。
大塚
実はこれ、“墨”のイメージなんです。
黒くて硬い、重量感のある墨を表現するにあたり意識したことは、“紙”の質感を活かすことはもちろん、いかにシャープでエッジの効いた、工作精度の高いボックスに仕上げるか、ということでした。このパッケージには、中身である『関孫六 要』の品質の高さを表現する役割もありますので。
―――この仕上がりは、中身への期待感が高まります!
大塚
取り出し方にもひと工夫あるんですよ。包丁は“平置き”に梱包するのが一般的なんですが、“縦置き”にしているんです。これは、日本刀を収納する桐箱を参考にしていて、包丁を取り出す所作が日本刀のそれと同じように、ちょっと“儀式的”になるように意図したんです。
―――これ、とても凝った演出ですよね。
大塚
余談ですが、縦置きにしたことで工場でのアッセンブリ(梱包)作業の効率が良かったと聞いています。また、輸送コストの面でも、ロスの少ない形状が功を奏しているようです。
丸山
縦置きの発想はほんと斬新でした。縦置きであるからこそ、あの存在感のある直方体のフォルムに説得力がありますよね。
―――確かに。表面のマットな質感もいいですね。
大塚
箱を開けると中に薄紙が入っていて、それを開くと包丁が現れるのですが、その一連の開封の所作は、『関孫六 要』の世界観と、高級感を演出しています。
―――“開封の儀”が動画サイトにアップされるかもしれないですね(笑)。
大塚
そうなるとありがたいです(笑)。
―――ところで、『関孫六 要』を、今後どのようにシリーズ展開したいですか?
丸山
まだ具体的なことは決まっていないのですが、今後の市場の状況やニーズ次第といった感じでしょうか。今回、『関孫六 要』のラインナップは、切付包丁3種でのリリースとなりましたが、今後は発売後のお客様の声を聞いた上で検討していきたいと思います。また、このシリーズの続編を検討中です。
―――続編!これもまた、こだわりの詰まった商品になるんでしょうね。楽しみです。
百瀬
今回の『関孫六 要』では、その“こだわり”を具現化するために、生産体制ではかなり試行錯誤しました。製造の視点で言うと、八角柄の研磨が難しかったので、どうしたら綺麗に研磨できるかトライ&エラーを重ねてきました。でも、今までできなかった、難しいことができるようになったことは、とても有意義なことだと思います。今後、高級包丁をつくるうえでも、そういった技術が蓄積されることで、ユニークな表現が可能になるからです。ラインナップが増えても、それぞれの包丁に個性を出すことができれば、差別化のポイントにもなりますし、商品として訴求もしやすくなります。
―――なるほど。お客様に響く商品がつくれそうですね。
百瀬
また、自分にも現場にも“今までとは違う”というマインドが生まれてきたように感じています。これまでのように、品質を維持してたくさんつくる、という考えだけでなく、『関孫六 要』をきっかけに、難しいことに挑戦する意味や意義を多くの社員が感じたように思います。
―――『関孫六 要』によって、“意識改革”ができた、というわけですね。
大塚
『関孫六 要』って、“一つのことで十語る”ことができた商品だと思います。カミソリなんかはそうなんですが、“要素”をたくさん盛っていって、特徴をアピールするということが多いんですが、『関孫六 要』はそれとは逆で、要素を削ぎ落とした先の一つ、二つのことに価値があると考えます。今後の続編は、そういった商品群にしたいと思っています。
―――なるほど。引き算の美学ですね。
大塚
また、先ほどお話しした工場のレベルアップの話にもつながるんですが、デザインのアイデアを具現化するうえで、ハードルが高過ぎるものにいきなり挑むのではなく、みんなで話し合いながら、少し高いハードルをクリアする。そういったことを着実に続けていくことで、少しずつ会社全体がステップアップできるし、商品としての“新しい価値”をきちんと提供できると思うんです。
―――それはまさに、KAIグループがめざすところの…「一人の百歩よりも、百人の一歩」ですね!
大塚
はい(笑)!
―――今回のプロジェクトでは、みなさんの他にも多くの方々が携わっていらっしゃると思います。“チームワーク”で大変だったことや、印象に残っていることはありますか?
大塚
DR(デザインレビュー)に至るまでのフェーズが大変でした。『関孫六 要』としての、そもそものコンセプトの話から始まり、設計を決めて、工場で、「できるorできない」という話があり、デザイン的にやりたいこと、企画的に実現したいこと…、そういったみんなの意見や要望をすり合わせて、新しい商品としての価値についても考えながら、落としどころを決めていくんですが、そのあたりのコミュニケーションにはとても時間をかけました。
―――それだけ“時間をかけるべき”フェーズとも言えるかもしれませんね。
百瀬
今回、デザイン部大塚から『関孫六 要』のデザインを初めて見せていただき、アイキャッチとなる“刃文”の意匠の再現について考えました。ダマスカス模様などもそうですが、意匠をそのものズバリ(100%)再現することはとても難しいことです。そこで、どの部分が“再現すべき”デザイン上の要素なのかということを、関係各所で何度も打ち合わせをしました。そして、意図された刃文の、連なった山々の高低差や間隔などのポイントを押さえながら、『関孫六 要』の特徴である“三本杉”の意匠を再現することができました。
大塚
包丁の鋼材は、素材が“層”になっていることもあって研削すると、どうしても刃境の紋様にバラツキが出ます。でもそこに、私の意図する抽象性の高い刃文を再現するため、百瀬はそれを数値化しようと注力してくれました。
―――かなり難易度が高そうですね…。
大塚
はい。それで、百瀬といっしょに“再現すべき”部分とそうでない部分について細かく決めながら、理想的な刃文が安定して出せるよう、調整していきました。
百瀬
刃の模様って、きちんと意図通りのものを安定的に再現することは、ほんと、至難の業なんです。
大塚
『旬』でけっこう鍛えられたんじゃない?
百瀬
そうですね…(笑)。私は、Kai USAに所属している『旬』のデザイナーとも仕事をすることがあるんですが、彼も細部へのこだわりがすごくて(笑)。「この模様の間隔は◯ミリじゃなきゃダメ!」という風に難しい注文をぶつけてきたかと思えば、「なぜなら、△△が□□で…」と、裏にあるロジックで切り返されるので、こちらはどう実現するか考えさせられます…。彼には相当鍛えられています(苦笑)。
―――頭が切れる方なんですね(笑)。丸山さんは、いかがですか?
丸山
はい。起案からDR(デザインレビュー)までで、8〜9割くらいは骨組みが決まります。その間に、デザインをはじめ、製品の細かい仕様、価格など、いろんな要素を擦り合わせながら、これならいけるという“解”を探す作業をみんなで重ねるわけです。私は、営業職が長かったので、価格感や市場動向に関しては知見があるものの、製造面やデザイン面では、わからないことも多々あります。ものづくりは、自分だけでできるものではないですから、企画の立場だけで押し通すのではなく、“できる”ことの中で、コストや価格をふまえ、みんなの意見をかみ合わせ、ひとつにして、営業が販売できる、ストーリーのある“商品”にすることを意識しました。
―――丸山さんのように営業経験や実績があると、企画業務でその知見がかなり活きてくるように思えます。
丸山
確かにそうなんですが、良し悪しかもしれません。知り過ぎるあまり、固定観念や先入観になるという弊害もあるので…。
―――なるほど、それもあるかもしれませんね。それでは最後に、みなさんにとって、このプロジェクトチームの感想をお聞かせいただけますか。
丸山
よかったと思っています。ふたりともとても信頼できる仲間ですし、とてもいい環境でしたね。
―――百瀬さんはいかがですか?
百瀬
同じですね(笑)。というのも、この3人のプロジェクトは、初めてじゃないので、何を求められているのか、そういったことがわかるというか、肌感があるので、やりやすかったです。
―――大塚さんはいかがですか?
大塚
そうですね。よかった、というか、私もやりやすかったです。製造上の難易度が高そうなデザインを提案しても断られるシーンも多かったのですが、百瀬さんは、「こうすればできますよ」と、ちゃんと条件を出してくれる。丸山さんは、状況の変化に応じて、企画内容をうまく調整してくれるので、とても柔軟性があるプロジェクトだったと思います。
―――また組みたいと思いますか?
丸山
(他のふたりと顔を見合わせながら…)もうすでに次が始まってます(笑)。
―――そうでしたね(笑)!次なる商品にもぜひご期待ください。
ついにお披露目となった『関孫六 要』。岐阜・関の地で生まれ、遠く、東京・銀座の街でデビューを飾った、魅力あふれるこの包丁には、お三方をはじめ、たくさんの貝印社員のみなさんが関わっています。KAIグループという、ひとつの大きな“チーム”で、一人ひとりが同じ目標に向かって一丸となって、これからも、よりよい“ものづくり”をしていきたいと思っています。
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