感染対策のプロが果たす役割。3.11の災禍で誕生した「独自の被災地支援チーム」と刻まれたDNA
2011年3月11日、東日本大震災の発生から数時間後、感染対策のコンサルティングや商品販売を行うモレーンコーポレーション(以下、モレーン)は、被災地へ救援物資を届けるチームを発足しました。
現地へ向かったのは、代表の草場と社員1名の計2名。
初めて体験する巨大地震を前に、当初私たちが考えたのは「物資を届けること」でした。特に感染対策に必要な備品を届けることが最大の役割だと判断したのです。
△災害支援のため現地へ物資を運んだ
しかし被災地で気づいたのは、感染による災害関連死発生の事態でした。上下水道のダウンに加え、避難所として使われる体育館などに人が密集することで、ウイルス感染や細菌感染が発生していたのです。
以来モレーンは、その後に日本を襲った熊本地震(2016)、九州北部豪雨災害(2017)、西日本豪雨災害(2018)など、甚大な被害をもたらした現地に対し、物資の供給とチームの派遣を通して感染対策を実施してきました。
△避難所で感染対策の指導をするモレーンコーポレーション
一企業ができることに限界があることは、私たちも当然承知しています。しかし、仮に微力であっても決して無力ではないはずです。
大きな自然災害が起こればすぐに感染予防製品の供給と、正しい使用方法を伝えるためのチームを派遣し、被災地での感染制御を実施する。
今回はそんな私たちの取り組みを、代表取締役社長の草場より紹介したいと思います。
2011年3月11日の決断「被災地へ救援物資を届ける」
△災害時におけるモレーンの対応・役割を話す草場代表
東日本大震災が起こったあの日、東京の本社でも非常に大きな揺れを感じ、ただ事ではない事態が起きたことは容易に理解できました。東北地方を中心に甚大な被害が出ていることを確認したのち、すぐに被災地域の代理店や感染管理認定看護師へ連絡したのを覚えています。
現地の状況を聞かせてもらうと、グローブや環境除菌のワイプなど多くの医療備品が不足していることがわかりました。
△モレーンでは災害時に備えた感染予防グッズを被災地に提供している
そこで私たちが取った行動は、現地へ物資を届ける派遣部隊のほか、以下2チームを加えたMDAT(Moraine Disaster Assistance Team)を設置することでした。
- 準備部隊(在庫調整、トラック手配、製品リスト作成、積込み、緊急車両許可手配、等)
- サポート部隊(被災地情報、給油所情報、燃費計算、現地施設との受け入れ調整、等)
△警視庁から災害支援の許可を取り、トラックを借りて現地へ
3月16日には福島へ、翌17日には宮城県へ入り救援物資を届けました。この時は通信網も途絶えていたため、社員間の連絡にはTwitterを活用するなどの工夫も必要でした。
その後も1回の支援にとどまらず、被災地を何度も訪れることになります。ある程度の物流システムが回復しても、今度は現地に届いた救援物資を整理をする必要もあったからです。
区役所などに届けられた物資は山積みで、中には開封済みの食品や消費期限切れのものもあり、全体の1/3は廃棄することになりました。
<Before>
<After>
やがて状況が落ち着くと、次に起きたのは避難所での感染拡大でした。
上下水道が使えないなかで排泄物をどう処理するのか、手洗いなどはどこで行うのかなど、数々の問題が出てきたのです。ストレスによる免疫低下なども懸念され、事態は軽視できないフェーズに。
私たちがモレーンとしての役割をはっきりと認識したのは、まさにその瞬間でした。
「災害で打ちのめされた被災地の方々が、さらに、感染で苦しむようなことを許してはならない」。この時の想いはのちに、MDATのミッションステートメントになりました。
災害時のモレーンの役割・対応とは
大きな災害が起こった際、主に活躍するのは自衛隊とDMAT、DPAT、JMATなどの災害医療チームの方々です。
上記の災害医療チームが救援物資の現地ニーズを把握し、空路なども含めたあらゆる方法で避難所へ物資を輸送したり医療面でのサポートをします。現地の保健師の方々もチームの一員として避難所の救援活動、健康支援調査、心のケアなどを実施します。しかしながら、感染対策の専門家ではないので、日本環境感染学会の災害時感染制御支援チームDICTと協業しながら、私たちは発災直後から迅速に感染を封じ込めることができるチーム体制を整えています。
モレーンでは感染対策に有効な医療用物資を届けるほか、その運用方法を指導するチームも派遣することで、適切な感染管理に貢献しています。
ここでは具体的に、簡易トイレと消毒用ワイプについて触れたいと思います。
被災地・避難所で有用な「簡易トイレ」
△水がなくても使用できる簡易トイレ
こちらの製品は新型コロナウィルス感染症(COVID-19)など、高い感染力を持つウイルスを隔離するために役立つ簡易トイレですが、転用することで被災地のトイレとしても役立ちます。
おむつなどに使われる高分子吸水ポリマーにより、水がなくても固形化させることが可能なため、下水道が使えない被災地でも処理に困らなくなります。
被災地・避難所で有用な「消毒用環境ワイプ」
△モレーン製品の「クリネル®」と「アクアワイプス®」
上水道が復旧するまでは、手洗いなど手指衛生面の問題も続きます。そのためモレーンでは手指衛生の設備をどこへ設置すると良いか、ゴミ箱はどこに置くと効果的かなどを、自衛隊や保健士の方々に指導しています。
また、消毒用環境ワイプの使い方を詳しくお伝えすることも重要です。
医療用の製品であれば、人に使うものと環境用(テーブルやイスなど)に使うものが明確に分かれています。強力な薬剤が使われているため、万が一それで顔や口を拭いてしまうと肌荒れを引き起こしかねません。
そのためモレーンでは医療用物資をただ送るだけではなく、その運用方法を伝えるための人も併せて派遣することを必須としています。
△起こり得る感染状況と、それらの対策と製品一覧
△空気感染隔離ユニット – ミンティECUシリーズ
ネットワークを活かした物流課題の対策へ
モレーンでは東日本大震災以降、各地域での被災地支援を経験してきました。それにより、各部署で培ったノウハウは全社に共有され、大きな自然災害(地震だけでなく豪雨や台風)の際にもすみやかな対応ができるまでになりました。
国内的には2016年の熊本地震の際に、⽇本環境感染学会(JSIPC)内にワーキング・グループが誕生したことで、災害時感染制御検討委員会(DICT)が発足するなどの出来事がありました。モレーンはもちろん、DICTに参加する複数の企業がお互いに協力して災害時支援ができるような枠組みが整ったのです。
特にモレーンだけでは対応が難しかった課題の1つに、物流がストップした時の対応方法があります。西日本豪雨災害の際も物流が止まってしまい、救援物資を岡山県まで届けることが難しい状況でした。
そこで、まずは高速道路が使える神戸市まで物資を運び、そこから岡山県の営業所の方々に直接取りに来てもらう方法で対応を試みました。
△MDAT本部でも物資のピックアップポイントを検討した
現在も物流システムに関する具体的な解決策は見えていない状況で、学会としても議論が続いています。
モレーンとしては、2020年からのコロナ禍で備蓄や製造の拠点を分散させ、サプライチェーンの見直しを図りました。これにより、少なくとも「モノがない」という状況は回避できるようになったと考えています。
必要な場所に、必要なタイミングで届ける大切さ
3月11日を迎えるたびに、東北地方を襲った震災の爪痕が思い出されます。一瞬にして人々の生活を奪った地震と津波は、死生観を変えるには十分すぎる出来事でした。
同時にすべての人たちに知っていただきたいのは、災害自体ではなく、その後の感染症などで命が奪われていく「災害関連死」の存在です。私たちも感染対策のプロとして、一企業にできることには限界があると理解しつつも、無力では決してないのでできる限りの支援をしたいと考えています。
実際のところ課題がないわけではありません。これらの支援活動はすべてボランティアで行っているため、現実的にお金の問題があります。何よりも、社員の命を守る責任があるわけです。社内からは社長の私が現地へ赴くことを制止する声もあり、それも意見として当然だと考えています。
現時点では、すべての社員が命の危険に晒されないよう、現地情報を集めながらリスクを評価し、本当に危険なエリアには踏み入らないなどの対策を講じています。
すでにさまざまな自然災害に直面している日本では、今後は南海トラフ地震なども想定されています。決して他人事ではありません。だからこそモレーンの役割は大きく、それを果たす使命がDNAになっていると私は考えています。
感染予防製品を、必要とされる場所に、必要なタイミングで届ける。そのために必要な対策を今後も考え、実行し続けたいとモレーンは考えます。
<株式会社モレーンコーポレーションについて>
会社設立以来、数多くの医療施設に感染対策製品を導入。経験に基づいた運用ノウハウ、感染管理先進国の欧米の医療施設で実施・導入されているシステムや新製品を如何に施設の
現状に応じて提案できるかを基本に製品・システムの販売を行っている。
■株式会社モレーンコーポレーション
本社所在地:東京都中野区東中野5-1-1 ユニゾンモール3F
設立 :1993年5月
代表者 :代表取締役社長 草場 恒樹
資本金 :12百万円(2020年7月1日現在)
事業内容 :医療関連感染の予防に関わる製品・サービスの製造・輸入販売・コンサルティング事業
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