日本発メタバースプラットフォームのクラスター、52億円の資金調達実施。クラスターの起業からスケールまでの道のりと、これから
5月17日、日本最大級のメタバースプラットフォーム「cluster」を運営するクラスタ―株式会社は、52億の資金調達(累計66億の資金調達)を発表しました。
このストーリーではクラスターの代表・加藤直人が創業の経緯と当社のビジネスモデルについて解説しながら、わたしたちがプラットフォーム事業を通じて実現したい世界について語ります。
日本発、メタバースプラットフォーム『クラスター』創業の経緯
きっと「メタバース」は一過性のブームだろう、と考えていた方も多いかもしれません。でも実際はこのように多くの投資会社の皆様から、クラスタ―に期待をかけていただいているという結果となりました。
なぜクラスタ―は、「メタバースの未来」を信じ続けることができるのでしょうか?
クラスタ―の創業は2015年。当時ひきこもり生活を送っていた加藤に、Oculusの体験が与えた衝撃と感動が始まりです。
そうです、クラスタ―は純粋な「ワクワク」や「ドキドキ」から始まった会社なのです。
それまでのインターネットでは、情報や物は届くけれど、体験は届きませんでした。「体験を届ける」、それが出来る世界の可能性をメタバースに感じ、その純粋な感動を原点として、2015年の25歳の時に、クラスタ―を起業。
その歴史と、プラットフォーム運営の立場から見てきた「メタバースとは何か」という疑問については著書で詳しく解説しています。
(『メタバース さよならアトムの時代』(集英社)https://amzn.asia/d/cbtpi8e
イベント累計動員数2,000万人を突破。クラスター独自のビジネスモデルとは
2022年の「メタバース」のバズワード化により、多くの「メタバース企業」を名乗る企業が参入してきたが、実際に日本のメタバースの中心地である、とクラスタ―が言われるのは、クラスタ―が実現しようとしているものが「誰もが思い描くメタバース」であるプラットフォーム事業だからということに他ならない。
プラットフォーム事業は、日本をあげて力を入れていくべきものだ。なぜなら、アメリカや中国、韓国など、海外ではすでに大規模投資をしてサービス開発をしている。メタバースの未来というときにイメージされるのはBtoCのメタバース事業である。
我々がプラットフォーム事業で成し遂げていこうとしていることについては後述する。では、どの原資をもって、プラットフォーム事業を推進しているかというと、これも日本独自の進化を遂げている「イベント事業」だといえる。クラスターでは「エンタープライズ事業」と呼んでいるが、いわゆる法人のメタバース空間の受託開発や、イベント制作運営を実施している。
ポイントは「OEMではない」「一気通貫で対応」「ほとんどを内製化」「イベントを実施するための専用のスタジオ」を構えているところだといえる。年間に200件以上のイベントを手がけるクラスターは、2023年1月にはイベント累計動員数2000万人を超えた。
法人から期待されるイベントの種類としては主に、①自社商品・サービスの広告・販促プロモーション、②VR入社式などの社内活用、③リアルでできないことの実現、④コミュニティ活動などを期待されるケースが多い。
肝はプラットフォーム事業。イベント事業の利益をプラットフォーム開発に投下
上記で述べたようなイベント事業で得た利益をどこに投下しているかというと、「プラットフォーム事業」の開発である。あくまでクラスターが目指すのはBtoCメタバースであり、「人類の創造力を加速する」ミッションを達成するための、クリエイターのためのメタバースである。法人イベントのところでスマートフォン対応が大きな転換点となったと言及したが、実はプラットフォーム事業にも2020年大きなリリースがあった。
それが「ワールド機能」の実装である。
それまではバーチャルイベントのために発展してきたclusterが、ユーザーがワールドという常時開設しているバーチャル空間を自由に作ることが出来る「ワールド機能」をリリースすることで、人がそこに集まるようになり、「生活する場に変わった」大きな境目だった。住む場所になったことで、誰もが「アバター」として仮想空間に当たり前のように訪れ、コミュニケーションをとり、遊ぶ、話す、暮らすという今のクラスターの住民が生まれていくきっかけになったといえるだろう。
目指すのは「最も敷居の低いメタバース」とクリエイターファーストの世界
目指しているのは「最も敷居の低いメタバース」の実現だ。
20年のスマホアプリ版のリリース。21年後半から「創造力を加速する」に与する機能のアップデートに比重を置き、その結果として生まれたのが「アバターメイカー」「ワールドクラフト」という機能だ。これらの機能では外部ツールを使うことなくcluster内でアバターもワールドも創造することが出来る機能だ。
スマホでも使えることもあり、想像もしなかったような創造・使い方が生まれてきている。さらに『売買機能』を実装。
ユーザーがワールドクラフトで使えるアイテムを販売・購入することができるようになる「ワールドクラフトストア」、また、アバターに追加できる「アクセサリー機能」と「アクセサリーストア」を追加し、経済圏を作る動きを加速している。最終的には「アバターストア」も予定しており、ワールド・アバター・アクセサリーの3種を売買できるようにしていく。
最終的に目指している場所がバーチャルの、経済圏のインフラであり、様々なニーズに耐えうるものを目指している。今後もAPIの解放やワールド収益化も含め、進化していく予定だ。
「メタバース研究所」を設立し、研究成果をプラットフォームに還元
クラスターは、「メタバースの未来」をよりよいもの、よりクリエイティブな世界を実現していくために、「メタバース研究所」を設立。日本社会におけるメタバースの在り方を再定義し、真の価値創造を図るのを目的とした取り組みである。未来への投資ともいえる。科学的な知見やプラットフォームに蓄積されるデータをもとに、CV/CG/HCI/VR/BMIおよび、全体をまたぐML領域の研究に取り組み、プラットフォームであるclusterに短期的・長期的を問わず成果を還元するほか、人類全体を前に進めるアカデミックな成果(例えば論文やカンファレンス発表)を生み出し、融合していくことを目的としている。また、東京大学稲見研究室、京都大学神谷研究室の協力のもと、研究を推進していく。
「モノや人が移動せず、家で完結」する世界。メタバースの未来予測について
世界の流れとして、SDGsに対応しないと投資されないようになっている今、物理的なモノを作ったり運んだりするのは環境に悪いという考え方がある。
もちろん20年後には自動運転車がたくさん走っているかもしれないが、物理的な移動に環境税がかかるようになるだろう。これからはモノや人が移動せず、できる限り家で完結する方向になるという予測をしている。
むしろそれが当たり前になることで、新しいニーズが市場を作っていくだろう。VRゴーグルありき、バーチャルとの接続ありきの生活に合わせた建物や部屋なども含めて。
一方で、リアルというものが「贅沢なもの」になっていくと予測する。
バーチャル空間はデフォルメされた空間のため、リアルに比べると圧倒的に情報量が少ない。相手と握手も、ハイタッチもできないし、雰囲気だけは味わえるが触れ合うという情報は欠落してしまう。
例えば岩をバーチャル空間に持っていくと、実際の岩は1Kgの中にも1兆個×1兆個くらいの原子が入っているが、バーチャル空間ではその全原子をシミュレートする必要はない。岩の形やテクスチャ、重さ、材質などの情報だけを切り取っている。バーチャル空間はそうやって都合よくデフォルメされている。
デジタルネイティブな世代が主流になったとき、「情報」や「リアル」「デジタル」のとらえ方の価値観は大きく変化すると考えられる。
また、コミュニケーションも変わってくるだろう。遠く離れた人間と、今以上に気軽にコミュニケーションを取れるようになると同時に、その対象が人間だけでなくAIなどに代わっていくかもしれない。情報量が多いリアルの世界では、人間のようにふるまうロボットがいたら気付かれるかもしれないが、バーチャル空間でずっと生活する人にとって、botだと見抜けなくなっていく可能性は十分にある。
また、恋愛や結婚にも新たな可能性があるだろう。
結婚式も仮想空間でまったく違う形式で実施することができる。出会い自体もバーチャル空間、コミュニケーションを深めていく、関係値を深めていくのもバーチャル空間、というような新しい恋愛や結婚の形はすでに生まれている。
さらに、マーケティングという分野では大きな影響力をもつようになるだろう。睡眠時間を除いて、意識があるのが1日16時間だとすると、そのなかでスマートフォンの画面をどれくらい見ているかというと、おそらく半分もない。だから、まだまだディスプレイを見る余白がある。将来的には企業の広告コミュニケーションに24時間触れるという生活スタイルにも変わりうる。バーチャル空間を使った広告は、数年以内には発明されているだろうし、20年後には一大産業になるだろうと予測できる。
例えばオフラインイベントでは、「入場者5000人でした」というデータがとれるとする、しかし、メタバース空間でイベントを実施した場合、「入場者は5000人で、このタイミングで300人離脱しました、最後までいた100人は主に〇〇という商品を見ていました、参加者は○○という会話をし、この商品の中では紫がもっともコメント数が多かったです」までとれるわけで、これはマーケティングでこれまで「データが取れない」と思われていたところまで踏み込んで数値化できることを意味する。ここには大きなチャンスがあると考える企業が増えてくるだろう。
さらに、周辺技術のビジネスチャンスももたらすだろう。セキュリティの技術やVRゴーグルをより快適・軽量化する技術、あるいは高齢者や小さな子供にも見やすく使いやすいメタバース、言語の壁を取り払うアプリなど、多くの新しいニーズがあり、だからこそ大きなチャンスが眠っている分野である。
日本の得意とする「デフォルメ文化」「豊富なIP」「独自のネット上でのコミュニケーション形成」などの強みを生かしてプラットフォームは伸びていくだろうし、その周辺技術もまた、進化していくだろう。
■クラスター株式会社について(cluster)
誰もがバーチャル上で音楽ライブ、カンファレンスなどのイベントに参加したり、友達と常設ワールドやゲームで遊ぶことのできるメタバースプラットフォームを展開しています。スマホやPC、VRといった好きなデバイスから数万人が同時に接続することができ、これにより大規模イベントの開催や人気IPコンテンツの常設化を可能にしています。本リリースの「バーチャル大阪」のほか、渋谷区公認の「バーチャル渋谷」、ポケモンのバーチャル遊園地「ポケモンバーチャルフェスト」の制作運営など、メタバースを実現し、全く新しいエンタメと熱狂体験を提供し続けています。
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