「ゆずの種」をヘアオイルに活用。捨てられるはずだった「1億個」の種からつくられた「ゆず油」の開発スト

株式会社ウテナは1927年の創業から、97年目を迎える化粧品メーカーです。「ウテナ」とは花の萼(がく)のこと。花の美しさを支えるように、「すべての人の美しさを支えたい」という想いで化粧品を開発してきました。

ウテナのヘアケアブランド「ゆず油」は、広がる髪を艶やかにまとめるヘアオイルとオイルミストのシリーズです。それまでは廃棄されていた高知県北川村の「ゆずの種」を有効活用し、オイルを抽出して製品に使用しています。2021年には、より環境に配慮した商品パッケージにリニューアルしました。

髪にも環境にもいいヘアオイルとして注目され、シリーズ累計出荷500万個（※）を超える人気ヘアケアブランドとなった「ゆず油」の開発ストーリーをお届けします。

出会いは９年前。捨てられていた「ゆずの種」には良質なオイル成分があった

「ゆず」は「捨てるところがない」と言われ、北川村でも果汁や皮などが幅広く活用されてきましたが、ゆずの「種」だけはどうしても使い道がない状態で廃棄されていました。それを知ったウテナがその種の一部の買い取りを打診したところから、このプロジェクトはスタートしました。ゆずの種には、栄養豊富なオイル成分が豊富に含まれています。ダメージをケアするヘアオイルにはぴったりの原料だったのです。

しかし、そこからオイルを抽出するまでは険しい道のりでした。

まず種を関東の工場に輸送し、しっかり乾燥させます。ただ熱をかければいいわけではなく、種の中の成分が壊れないように何度も試験を繰り返し、最適な乾燥工程を導き出しました。そんな風に試行錯誤を繰り返して生まれた商品なのです。

高知県北川村との奇跡の出会いから生まれたヘアオイル「ゆず油」の話

https://www.utena.co.jp/yuzu-yu/kitagawa-story/

いちはやくSDGsに取り組み、再利用できたゆずの種は約１億個

ゆずの種のオイル抽出にチャレンジしたウテナと北川村の共同開発プロジェクトが開始されたのは、2015年。SDGsが国連で採択されたのとほぼ同時期です。世の中で「SDGsが叫ばれるずっと前から」地球環境や社会に良い取り組みをスタートさせていたのです。

再利用することのできたゆずの種は約１億個。北川村ではこれまでかかっていた種の廃棄費用も大幅に軽減できたといいます。

パッケージもエシカルに配慮し、より環境にやさしい商品づくりを

2021年には、より環境や社会への貢献を図るため商品パッケージを刷新しました。ヘアオイルは再生ガラスを90%以上使用したエコロジーボトルを採用。オイルミストは植物由来素材のバイオマスPETを、オイルミストのつめかえ用はボタニカルインキ印刷を採用しています。

「サステナブルコスメアワード2022」では審査員賞を受賞

そんな取り組みが認められ、昨年の「サステナブルコスメアワード2022」では「ゆず油/ヘアオイル」が「審査員賞コストパフォーマンス部門」を受賞しました。

サステナブルコスメアワードは、環境省の森里川海アンバサダーでもあるアクティビストチームMOTHER EARTHが主催する“人にも地球にもやさしいコスメ”を表彰するアワードです。

「ゆず油」の持続可能な社会に向けてのさまざまな取り組みやコスメとしての製品クオリティに加え、サステナブルコスメでありながら手に入りやすい価格を実現していることが評価されました。

最近はエシカル商品への注目も高まり、直近10年間で累計500万個以上（※）も売れる商品に育ちました。

※「ゆず油」シリーズ出荷個数自社調べ

サステナブルコスメアワード2022　https://sustainableaward.jp/

「ゆず農家の高齢化」「人口減少」村の問題にも協力。１０年後２０年後まで「ゆず油」が存在するには

ウテナが北川村とかかわりを深める中で、北川村が抱える課題も目の当たりにしました。

北川村は、江戸時代からゆずの栽培を続ける日本有数のゆずの産地で、日本で初めて青果の状態でEUへ輸出するなど、その品質の高さが評価されています。

しかし、人口減少とゆず農家の高齢化・後継者問題など、今後のゆず産業には様々な課題があるのが実情です。人手不足で、収穫時期に実を獲りきれないまま時期を終えなければならない年もあるといいます。ウテナは、社員がゆず果実の収穫をお手伝いするところから、支援を開始しました。

「ゆず油」にとって、良質なゆずの安定的な生産は必要不可欠です。ウテナは北川村が品質の高いゆずを永続的に生産していけるよう、パートナーとして、北川村の支援をすると決めました。

このような活動にドラッグストアのウエルシアグループにも賛同いただき、北川村、ウテナ、ウエルシアの3者で包括連携協定を結びました。メーカー、小売りが協力して支援をすることで、北川村ゆずを使った商品のプレゼントキャンペーン、ウエルシアグループ限定の寄付対象商品の発売、村の中学生と共同開発した商品の発売など活動を広げています。

収穫支援を実施した農園の方からは「私たちはこれまで休みなく作業を続けていたので、翌日は従業員一同つかの間の休息をいただくことができました。」とのお言葉をいただきました。

高知県北川村の中学生が、高知県知事を表敬訪問　特産品のゆずを使った「ユトワ洗顔石けん」の完成を濵田知事に報告しました

PR TIMES

「村を盛り上げたい」同じ思いを持つ北川村の中学生と、ゆずを使った石鹸を共同開発

村づくりの時間軸は、20年～30年。「ゆず油」も「じわじわ」広がってほしい

北川村の上村村長は「ゆず油」が必ずないといけない「定番」になってもらいたいと語っていました。

「とにかくじわじわ広がったら、こけることはないと思うんです。一気に広がったらこけます。CM流して花火を打ち上げるように、集中的に周知していくというのをやったとしても続けなければ意味がない。やっぱり「ゆず油」はじわじわじわじわ広がっていくのが一番だと思います。

そこはもしかしたら『村づくり』の考え方と似ているかもしれません。20年から30年というスパンで、地域社会というのは循環しだす。普通マーケティングでは、出てこない時間の流れです。北川村では、ゆず産業に教育や福祉までリンクさせて地域社会の循環を考えています。そうすると、『北川村ゆず』というのは、なくならない。「ゆず油」もこのくらいの時間軸で考えてもらいたいんです。」