グローバル教育の一環としてのワールド・ビジョン・サマースクール。15年間の取り組みを担当者が振り返る
世界の子どもを支援する国際NGOワールド・ビジョン・ジャパン(事務局:東京都中野区、事務局長:木内真理子、以下WVJ)は、2023年の夏休みに、小学生の親子を対象とした参加型オンラインイベント「ワールド・ビジョン・サマースクール2023」を開催します。
このストーリーでは15年間WVJのグローバル教育に携わる担当者・松本謡子スタッフが、これまでの歩みを振り返ります。
グローバル教育の一環「ワールド・ビジョン・サマースクール」とは
ワールド・ビジョン・ジャパンは、日本の子どもたちに世界の貧困や紛争等の影響を受ける子どもたちの現状を知って欲しいと願い、毎年夏休みに「ワールド・ビジョン・サマースクール」を開催しています。
サマースクールは、日本に住む子どもたちに世界のことを知り・考える機会を持ってもらうための参加型イベントです。世界の子どもたちを取り巻く課題を知り、解決のために自分にできることを考え、行動する「グローバル・キッズ」になってくれることを願っています。2022年は、全4回のサマースクールに、のべ602人が参加しました。
2023年のサマースクールでは、バーチャルツアーでケニアの子どもたちに会いに行きます。まるで現地に行っているかのような演出を交えながら、水衛生や保健の問題に理解を深める参加型オンラインイベントとして企画しています。さらに塩野義製薬株式会社の協力により、感染症を取り巻く社会課題に対して私たちに何ができるのか、子どもたちと一緒に考えます。
「あ」ではなく、思わず「え!?」と言ってもらいたい
グローバル教育担当の松本謡子です。
ワールド・ビジョン・ジャパンのグローバル教育は1987年の団体設立当初から実施しており、サマースクールは2009年から基本的に対面プログラムとして実施してきました。
新型コロナウイルス感染症により、その対策として、2020年からはオンラインに切り替えて実施、2023年も、オンラインならではの強みを積極的に活かし、オンラインにて開催します。
私はグローバル教育の仕事を通して、「あ」ではなく、思わず「え!?」と言ってもらうことをねらっています。「あっと言わせる」とは、人の意表を突いて驚かせる、目をみはらせること。安全な水、豊かな食生活、何不自由ない日常を当たり前と感じている日本に住む子どもたちに、途上国の子どもたちの現状を伝える活動を通して、参加する子どもたちの「えー!?」が引き出せるような仕込みに励んでおります。
サマースクールで紙芝居を読む松本
近年では未就学児向けプログラムの希望が増え、幼稚園や保育園を訪問させていただき、大きな写真紙芝居を使ってルワンダに住むエリックくんという男の子の生活を紹介したりしています。彼の食事は1日に1回。そのことを園児さんにお話しすると大きな「えー!?」が飛んでくる。思わずニヤリ。「ごはんが1かいだけ…」「そんなのいやだよ…」「おなかすいちゃう…」園児さんのささやきが聞こえてくる。帰宅後に親御さんにエリックくんのことを話してくれたという報告を聞くこともあります。5歳さんの心に刻まれた「えー!?」が親御さんにも波及しているのだと思います。
修学旅行の一部として事務所訪問してくださる学生さんたちもいます
お年頃の中学生の「え!?」は意外に素直です。途上国の子どもたちが水を汲む川の写真を見せると、ちょっと控えめな「え!?」。この水で生活し、手洗い、料理、そして飲み水もこの川の水と説明を加えると、さっきより大きな「えー!?」。実際に途上国で使われているタンクを出して「では皆さんに体験してもらいます!」と今度はちょっとワクワクした様子が入り混じった「えー!!」が返ってきます。そして意気揚々とタンクを持ち上げようとした瞬間、予想以上の重さに思わず短い「えっ!?」という驚きの声が漏れる。私はこの声を聞き逃しません。
水汲み体験
20リットルのタンクを持って6時間歩くレウィスくんの生活を中学生が実感を持って知ってくれました。聞いた話は忘れられてしまっても、感じたことは忘れないでいてくれるかもしれない、そう願って途上国の水汲みタンクを片手に学校へ向かいました。
「え!?」と言ってもらうことをねらって活動しているつもりが、逆に「え!?」と言わされる出来事も少なくありません。
ある時、チャイルド・スポンサーシップにご参加くださっている小学校では児童の皆さんが毎週月曜日に「おかずなしお弁当の日」を設けて、100円等を持ち寄ってくださっていました。このように児童の皆さんが途上国のチャイルドを「もう一人のクラスメイト」と呼んで支援を身近にしてくださっているお話をうかがうことは本当に大きな喜びです。
小学生も水汲み体験で「えー!」
「私にできること」、生徒さんから一番多く聞かれることです。私は「たくさんあると思います。考えてみましょう」と答えています。グローバル教育では「知ること」が最初の一歩とも言われています。伝える人がいれば「知ること」は広がっていく。「え!?」と言わせる何かを投げてみるということは、すぐに実行可能な「私にできること」の1つではないでしょうか。
人にあっと言わせるような話をすることは難しいかもしれませんが、思わず「え!?」と言わせることは、ほんのちょっと勇気を出すとできることだと思います。そしてそれは途上国の子どもたちの現状を伝える「私にできること」の1つだと思います。
サマースクール参加者との嬉しい再会
このサマースクールを長年続けていると、「参加してくれた子どもたちが今どうしているのだろう」と思うことがあります。すぐに大きな変化はなくても、大きくなって世界に目を向けた時にサマースクールで体験したことが何かつながったらいいなと願って取り組んできました。
そしてついに、小学生の時にサマースクールに参加した小倉くんと再会する機会がめぐってきました。小倉くんが通っている高校の文化祭で取り組みたいと考えている企画について、相談したいとお問い合わせをくださったのです。事務所に来ていただき、お話を伺うことになりました。
2011年のサマースクールに参加してくれた小倉くん(左から2番目)と世界の子どもたちについてレクチャーする松本(中央)
忘れられない、水汲み体験のインパクト
ご両親がチャイルド・スポンサーシップの支援をしてくださっていた小倉さんご家族。ご子息のりん君は小学生の時にワールド・ビジョン・ジャパン(WVJ)が主催する夏休みの小学生向けイベント「サマースクール」に参加してくれました。当時を振り返り、「父は仕事が忙しく、二人で出掛けるというのが珍しいことだったので、サマースクールに連れて行ってもらったことは記憶に残っています」とのこと。
「水汲み体験をして、タンクがとても重かったことは覚えています。子どもながらに、このタンクは持って歩けないなと思いました」と、嬉しい反応をいただきました。やはり、体験活動はインパクトがあったようです。
参加した小学生が大きく成長。高校の生徒会広報委員長に
事務所でお話をうかがう際、小倉くんが小学生だった時にサマースクールに参加した時の写真もお見せしました。
2011年のサマースクール。右から3番目が小倉くん
グループごとに「自分たちにできること」を発表している様子を指さしながら、「この頃は人前で発表するとか恥ずかしかったんですよね」と振り返ります。そんな恥ずかしがり屋さんだった小倉くんは、高校生になり、なんと生徒会に立候補し、広報委員長になられたのです。そして、文化祭の企画として、途上国の子どもたちを取り巻く課題を写真パネルや掲示物で紹介し、ご自身がサマースクールで体験された「水汲み」の体験コーナーを設けてアピールし、ドリンク販売の売り上げチャイルド・スポンサーシップの支援を始めたいと考えてくださったのです。企画書を持ってWVJ事務所を訪れてくださった小倉くんの姿は、サマースクールに参加した恥ずかしがり屋さんとは、かけ離れて大きく成長していました。
グローバルキッズは、リーダーとなって世界へ
小倉くんの活動は、ついに世界へ広がりました。
生徒会や他校との交流など大活躍
小倉くんは、日本全国から選抜された高校生10名をジュニア・フェローシップとして3週間アメリカへ派遣する取り組みに応募し、見事に選ばれたのです。トレーニングを経て初めての海外。現地の同世代との交流やグローバルに活躍する人々から大いに刺激を受けたそうです。小倉くんは世界の人々とのつながりを視野に入れた将来のビジョンを描いています。
サマースクールでゴールとして掲げる「グローバルキッズになろう!」を体現してくれた彼との出会いは、当時、10年目を迎えるサマースクールを目前にしていた私に、大きな喜びを与えてくれました。「世界のお友だちを大切にし、お互いに助け合い、行動を起こすグローバルキッズ」、小倉くんは「キッズ」から「リーダー」になっていました。
1回のサマースクールでできることは限られていますが、体験したり、見たり、聞いたり、感じたり、考えたりする、そんな時間をたくさん作っていきたいと思います。
これからもたくさんの「グローバルキッズ」が誕生することを願っています。
塩野義製薬株式会社様とのコラボレーションを開始。ワールド・ビジョン・サマースクールは進化してゆきます
「ワールド・ビジョン・サマースクール」は、日本の子どもたちに世界の現状をリアルに伝え、自分にできることを考えるきっかけになるよう工夫を重ねてきました。
2019年からは、ケニアのおける母子保健支援事業「Mother to Mother SHIONOGI Prooject」にご支援いただいている塩野義製薬株式会社様との、サマースクールにおけるコラボレーションも始まりました。感染症対策に注力する塩野義製薬の社員の方から正しい手洗いを学ぶことを通して、途上国と日本で状況は違っていても、水衛生・感染症対策という共通の課題があり、自分や周りの人を守るためにできることがある、ということに理解を深めました。2022年には、支援事業×グローバル教育というコラボレーションで、日本の子どもとケニアの子どもがつながるという新しいコンテンツもお届けできました。
2022年開催報告
https://www.worldvision.jp/news/shien/20220810.html
今年2023年のサマースクールはバーチャルツアーでケニアの子どもたちに会いに行きます
■「ワールド・ビジョン・サマースクール2023」概要
*すべて、Zoomによる生配信、参加費は無料、お申し込み締切は7月20日(木)正午です。なお、プログラムの内容は変更になる場合があります。
詳細・お申し込みはこちら:
https://www.worldvision.jp/donate/wvsummerschool.html
日時:2023年7月27日(木)10:00-11:20
(イベント終了後に自由参加の質問コーナーを11:20-11:50設けています)
対象:小学1~6年生と保護者
定員:500名
テーマ:バーチャルツアーでケニアの子どもたちに会いに行こう
塩野義製薬と一緒に感染症からみんなを守る方法を考えよう
手法:オンライン(Zoom)※パソコンまたはタブレットやスマートフォンでご参加ください
ご用意いただくもの:筆記用具(VRゴーグル等は使用いたしません)
参加費:無料(通信にかかる費用はご負担ください)
主催:特定非営利活動法人ワールド・ビジョン・ジャパン
協力:塩野義製薬株式会社、シオノギヘルスケア株式会社
後援:中野区教育委員会
自宅にいながら、アフリカ体験ができます
好評をいただいているワールド・ビジョン・ジャパン主催のバーチャルツアーを小学生向けに初開催します。まるで現地に行っているかのような楽しい演出を交えながら、ケニアのお友達に会いに行きます。アフリカの大自然や日本とは異なる家・食べ物・暮らし等を感じることで、お子さまの世界への興味を引き出します。
グローバルな視野を持つきっかけになればと願っています
プログラムを通して、世界の同世代が置かれている現状に目を向け、アクションを起こすことの大切さを学びます。その学びが、グローバルな視野を持つことにつながります。
サマースクールに参加し、朝とは違う表情になっていた子どもたち
ワールド・ビジョン・ジャパンが過去に開催したサマースクールでは、途上国の子どもたちのの生活を紹介し、実際に途上国で使っている道具で「水汲み」やアフリカの生活を疑似体験等をしています。今年のオンライン開催では、クイズやスタッフからの説明を通して、世界の子どもたちの生活を具体的に想像し、日本での日常生活が恵まれていると気づきにもつながることを願っています。
参加型のオンラインベントだから、楽しくご参加いただけます
クイズや質問コーナー等を交えてお気軽にご参加いただけるプログラムです。ただ聞くだけの講義ではなく、参加者の皆さま自身で発見をしたり、意見を出し合ったりする参加型ですので、最後まで飽きることなく楽しくご参加いただけます。また、オンラインイベントですので、天気が崩れやすく気温の高い真夏でも、当日の天候の心配がなく、移動の混雑等もありません。お子さまのペースに合わせてご家族皆さまでクイズに挑戦したり、話し合ったり、リラックスしてご参加ください。
自由研究のテーマにぴったり
アフリカの子どもたちの家庭や学校を訪問し、国や地域による生活の違いを知ることができます。「安全な水が十分に手に入らない」、「病院が近くにない」等の課題を参加者の皆さまと一緒にリサーチし、SDGsにも理解が深まるので、夏休みの自由研究にもぴったりの内容です。さらに塩野義製薬株式会社の協力により、感染症を取り巻く社会課題に対して私たちに何ができるのか、一緒に考えます。ご参加くださった方には親子で楽しくふり返りができる「夏休みの自由研究キット」をお送りします。終了後にアーカイブ視聴ができる録画もご用意していますので、見直して考えることもできます。
皆さまのご参加をお待ちしています。
詳細・お申し込みはこちら:
https://www.worldvision.jp/donate/wvsummerschool.html
<ワールド・ビジョン・ジャパンとは>
キリスト教精神に基づき、貧困や紛争、自然災害等により困難な状況で生きる子どもたちのために活動する国際NGO。国連経済社会理事会に公認・登録された、約100カ国で活動するワールド・ビジョンの日本事務所です。
詳細はこちら: www.worldvision.jp
<チャイルド・スポンサーシップとは>
途上国の子どもたちが健やかに成長できる環境づくりを目指し、水衛生、保健・栄養、教育等の地域の課題に取り組む支援プログラム。チャイルド・スポンサーになると、支援地域に住む子ども「チャイルド」をご紹介。手紙や現地訪問等を通じて、チャイルドとのつながりを持ちながら支援の成果を実感していただけます。なお、WVJは認定NPO法人として認定されており、皆さまからのご支援金は寄付金控除の対象となります。
詳細はこちら: https://www.worldvision.jp/childsponsor/
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