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人の数だけ、物語がある

20周年を迎えた「細タペ」。10センチ幅の麻タペストリーから伝える、日本文化とサステナビリティ。

著者: 株式会社ルシエール・ジャパン

株式会社ルシエール・ジャパンは、日本の四季、春夏秋冬を色鮮やかな手染めで表現した、麻のれんやタペストリー、麻小物を販売する京都洛柿庵というブランドを運営しています。京都洛柿庵の人気商品の一つである「細タペ」は、横10×縦170cmとその名の通り細長い形をした手織り麻のタペストリーで今年2023年、誕生から20周年を迎えました。

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20周年を迎えるにあたって、2023年1月に特別なコラボ商品を発売。また、同年5月にはSDGsの達成・貢献を意識して開発された「森と海の細タペ」の販売を開始しました。


本ストーリーでは、2003年から始まった本商品の歩みと、サステナブルに対する取り組みを行ってきた私たちの挑戦についてお伝えします。

「むっくり」と美しい麻織物との出会いをきっかけに、麻布へ惚れ込む。「細タペ」の誕生秘話。

ルシエール・ジャパンは、1975年に村田工芸として創業。以来、京都で培った織物や染色の技術を活かして、和装小物を多く手がけてまいりました。


人々の暮らしのスタイルは大きく変わり、和装小物の需要が大きく減ってきた1985年ごろに転機が訪れ、手織りの麻布との出会いがあり、今までの染色の技術を活かしてその麻布に手染めを施したところ、見たことのない麻布の質感や色合いが表現されたのです。

その手織りの麻織物が持つ独特のツヤと「むっくり」とした質感にほれ込み麻製品の製造が開始されました。


それに伴い会社は、麻製品の染色の道へと大きく業態変換。麻のれんなどの室内インテリアを次々と発表し、会社名もルシエール・ジャパンへと屋号を変更して現在に至ります。


「細タペ」のきっかけは、創業者である村田俊一が、2000年に10センチ巾の手織の麻織物を開発、織りあげたところから始まりました。その当時はのれんやタペストリーに使用されてきた広幅(30~45センチ)の麻布が主流でした。そんな中、10センチという細い幅の生地を見せられた社員は困惑。何が作れるのかの試行錯誤が始まりました。


きっかけは、ある展示会の出展が決まり、ディスプレイを考えていた時でした。その時に何色かに染めていた10センチ巾の麻布を等間隔に配置することにしたのです。出展ブースの壁の高さは2メートル以上。その生地を壁の高いところへ留めても、下からくるくると巻き上がってきてしまいます。それを防止するためにつけられたのが、今の細タペにも使用されている鱗文様の三角形の重りでした。そのおかげで長かった生地でもピンと張り、細タペの原型が出来あがりました。


2006年当時の海外展示ブース


そのディスプレイから始まった10センチ巾の麻布に、柄を手描きすることになり、初めて描かれたのが金魚の柄でした。お客様からも好評で、夏らしい飾り物というお声をいただき、手ごたえを感じ始めます。

当初2メートル近かった長さも家庭で飾りやすい170センチの物へと移行していきました。そして和室から洋室・戸建てからマンション暮らしなど、生活スタイルの変化にも着目。時代に合ったデザイン設定に必要性を感じ、当初2メートルほどあった長さも、家庭で飾りやすい170センチに変更。“現代のインテリアに合う、季節を感じるモノづくり”というコンセプトが生まれました。


そんな試行錯誤を経て、「細タペストリー」という名で2003年に完成。スリムなスタイルは、『リビングルームや寝室、玄関先など場所を選ばず飾りやすい』『数本組み合わせた好みの空間づくりも手軽にできる』とご好評をいただけるようになりました。


洋室中心の現代のインテリアへの提案として開発された「細タぺストリー」は、その後自社ブランド「京都洛柿庵」誕生のきっかけともなりました。

季節感を感じていただけるモノづくりは、「四季折々のやすらぎを、空間に」という会社の経営理念に引き継がれ、今現在でも細タペに描かれる柄デザインの礎となっています。

20周年を迎えた細タペストリー

発売以降、ご愛用頂くお客様も徐々に増え、2022年には月間およそ2500本を製作する人気商品へと成長しました。そして、「細タペストリー」の商品名はいつしか「細タペ」と呼ばれるようになり、20年の節目に商品名そのものを改称します。

「すえながく、うつくしく。10センチから広がる世界」というコンセプトを掲げ、これまで以上に愛される製品づくりを目指すきっかけとなりました。



「細タペ」は全て一つ一つ職人の手作業で染め上げています。いわゆる手染めと言われるのですが、刷毛で染め上げる〈引染〉や〈型染〉、筆や小刷毛を使って描く〈手描き〉〈手彩色〉など様々な技術を駆使して描かれます。その中でも肝となるのはやはりデザイン。10センチのキャンバスと見立てて柄を表現するのは困難を極めます。柄の伸びやかさや色合いの美しさ、そして柄の広がりを想像していただけるデザインとなって1枚の細タペがようやく完成します。



20周年というタイミングに合わせ、「細タペ」では誕生20周年コラボシリーズ全5種類を発売。職人の優れた染色技術とデザイン力で人を魅了する「細タペ」に、日本各地の5つの工芸の職人技を組み合わせたコラボレーションを行いました。京組み紐やホタルガラス、お香といった日本の技術と組み合わせる挑戦を行ったのです。


また、細タペ誕生20周年の特別展示を全国各地で行うなど、麻の魅力はもちろん、コンセプトを体感していただけるような挑戦を行ってきました。

自然の景観をデザインとして表現するだけでなく、森を守る取り組みにも着手。「森と海の細タペ」開発の裏側



そんな周年に当たる2023年5月19日、京都洛柿庵では「森と海の細タペ」の発売を開始しました。


朝日と共に目覚め、歌い始める小鳥たち。森の奥で夜の訪れを待つ小さな動物。流れに乗り、広い世界を泳ぐ海の生き物。森や海という大自然に守られ、時には生態系の中で闘いながら命を育む動物たち。その姿は逞しくもあり、儚くもあります。私たちもまた、森や海と深く関わり生きるために必要なたくさんの恩恵を受けています。


この自然の恵みへの感謝と、動物たちへの慈しみを表現したいという思いから、「森と海の細タペ」のデザインに落とし込みました。自然な彩りに満ちた空間と、優しい心で過ごす、穏やかな時間をお楽しみいただくことを願いとして込めています。


売上の一部は「緑の募金」として、森林保護に役立てられます。

ルシエール・ジャパンは2023 年 1 月に 【 フォレストサポーターズ 】 に参加しました。フォレストサポーターズとは(公社)国土緑化推進機構が展開する「美しい森林づくり推進国民運動」の一環として展開されているプロジェクトです。


日本人は古くから、暮らしや産業などのさまざまな場面で森の恩恵を受け森と共に暮らしてきました。しかし近年では「森づくりの循環」が途切れているといわれ、森は元気を失い、本来の森に力が失われつつあるそうです。そこでフォレストサポーターズでは、国民一人ひとりが、みんなが手を取り合って元気な森のチカラを取り戻すことを目標に、森のためにできる 4 つのアクションを呼び掛けています。


ACT1森にふれよう ・ ACT2 木をつかおう

ACT3 森をささえよう ・ ACT4 森と暮らそう


今回の「森と海の細タペ」のカタログ紙にはFSC 森林認証紙を使用しており、ACT2の活動へ。さらに、ACT3 「森をささえよう」の活動として「森と海の細タペ」の売り上げの一部を「緑の募金」へ寄付することで森林保護に貢献していきます。


フォレストサポーターズを通じた、元気な森づくりの活動がSDGs のゴール 15 「陸の豊かさも守ろう」の具体的なアクションとなると考えました。 また森は土壌保全の役目を果たしながら、降る雨に地中の養分を加え、やがて川へ海へと流します。森林が元気になることで海も豊かになり、ゴール 14「海に豊かさを守ろう」へとつながってゆきます。


京都洛柿庵ができることの一つとして制作した「森と海の細タペ」。お部屋に飾って楽しんでいただきたいという気持ちと共に、日本の美しい自然を守っていくことの大切さを皆さまと共有したいという思いで取り組みました。自然に寄り添う心と暮らしのご提案が、いつしか豊かな森や海を育む助力となればと願っております。

京都洛柿庵の商品を通してSDGsの取り組みと麻織布の今後


麻との出会いから始まった「細タペ」ですが、麻布として織り上がるのには非常に手間暇がかります。本来、麻の栽培には農薬 や化学肥料を使う必要がほとんどないサステナブルな素材の側面を持っています。しかし、そこから先はすべて手作業にて行われる原始的な織物なのです。糸を取り出すのも機械ではなく、麻の繊維を手で細かく裂き、その繊維を1本1本繋いで糸にして、それを経糸横糸として一枚の麻布を織り上げていくのです。


日本では昔、麻の栽培が盛んに行われていました。しかし明治以降、服装の変化や綿など他の素材の増加といった影響を受け、苧麻の栽培と麻織物の生産は、とくに戦後になると激減し現在では、国産苧麻の麻織物はほとんど見ることができなくなりました。


現在使用している麻布は中国の四川省にて生産・手織りを行っています。

細タペに使用される麻布は幅の広い生地を裁断するのではなく、10センチ巾で織り上げていきますので、広い生地巾を織るのと比較しても、それほど手間暇が変わらないのです。合理化、機械化が進む昨今、手間や時間のかかる手しごとが次々に姿を消していきます。人の手にこだわったものづくりを続けていくことは簡単なことではありませんが、京都洛柿庵では、手しごとならではのぬくもりこそが、人々の暮らしにやすらぎを感じさせるのに欠かせないことだと考えています。今後も中国の麻の産地と協力し、麻の織物が届けられるよう取り組んでまいります。


そしてその細タペは麻の織物の魅力を生かした美しいタペストリーです。京都洛柿庵は、サステナブルな素材である麻の魅力を伝えるとともに、SDGsに貢献する商品やフォレストサポーターズとの連携を通じて、自然と人々の暮らしにやすらぎを届けることを目指します。麻の織物の手しごとを継承し、日本の伝統文化を守っていくことが私たちの使命です。今後も「すえながく、うつくしく。10センチから広がる世界」にご期待ください。




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