兵庫県丹波篠山市 狩場一酒造が地域に密着した新たな日本酒造りに挑戦。「100人ではぐくむ名前はまだ無い日本酒」に込める想い
狩場一酒造株式会社は1916年(大正5年)の創業以来100余年、兵庫県丹波篠山市で日本酒を造り続けている酒蔵です。
2022年、丹波篠山市古市地区から未来に向けたプロジェクトとして始動した「ミチのムコウ」の「100人ではぐくむ名前はまだ無い日本酒」企画の日本酒造りを行いました。 2年目となる今年も本プロジェクトに参加し、新たな日本酒造りに挑戦しています。
このストーリーでは、「100人ではぐくむ名前はまだ無い日本酒」に取り組むことになった背景と、新たな日本酒造りに込める想いをお伝えします。
地域の方に支えられてきた酒蔵にできること
狩場一酒造は、「ミチのムコウ」プロジェクトの舞台である、古市地区で長年地域の方に飲み続けていただき事業を続けてきました。
2022年「ミチのムコウ」は、リーダーの吉良佳晃氏を中心にスタートしました。日本各地の里山が荒廃し、耕作放棄された農地が増えつつある状況の中で、里山の活性化に向けて自然環境と調和した持続可能な生き方を実証するプロジェクトです。
「100人ではぐくむ名前はまだ無い日本酒」のお話を伺ったときに、「ミチのムコウ」というさらに大きなビジョンと構想があることを知りました。「ミチのムコウ」プロジェクトでは、里山の荒廃や農業の担い手などの様々な問題の解決の糸口を、実際に田んぼや畑、さらには山の中で体を動かして、新しい里山つくりの形を模索していくものだと知りました。
私たちの蔵のある地域でも、手入れのされなくなった里山が徐々に増えつつあり、また使われなくなった農地も増えてきています。こうした現状の解決の糸口を探る「ミチのムコウ」プロジェクトは、地域の方に支えられてきた私たちにとって決して他人事でないと感じ、ぜひ同じ方向を向いて歩んでゆきたいと思いました。
地域に密着したお酒造りプロジェクトがスタート
2022年の「100人ではぐくむ名前はまだ無い日本酒」プロジェクトでは、高齢化により続けるのが難しくなった農地や、一部休耕田になっていた農地に酒米の五百万石を植え、そのお米で新たなお酒を仕込む、地域に密着したお酒造りに挑戦しました。
プロジェクトの参加者募集には定員を超える申込があり、お酒が好きな方、里山の空気を味わいたい方、子どもや孫に体験をさせたい方など、多様な方々が全国から参加してくださいました。田植えや稲刈りはもちろん、クワで畦塗りをしたり、竹を切り出して稲木を組んだりといったニッチな作業や、畑で黒枝豆を茹でて食べるといった里山ならではの楽しみも味わっていただきました。
フィールドとなっている古市地区は、同じ山からの水を使い酒米を育て、さらにお酒の仕込み水として利用します。参加者のみなさまには、山に適切に人の手が入ることで豊かな水や伏流水がうまれる背景をお伝えします。
このプロジェクトを通して、お米からお酒まで、一気通貫して自分たちではぐくみ、お酒の名前やラベルも自分たちで考えるその取り組みが、地域の資源をつなげ、より豊かで持続可能な里山づくりにつながっていることを感じてもらいたいと考えています。
一方で1年目は、予想よりも酒米の収量が少なく、悔しい思いをしました。
休耕田や、長く畑として使われていた土地など、栽培履歴の異なりによる成長のばらつきや、コシヒカリと比べて早くに実がなるため、カメムシの一斉被害にあうなどしました。農地の再生や、新しい品種に挑戦する難しさもありますが、これから数年をかけて土づくりに取り組みながら、安定して栽培できるようにしたいと思います。
発泡性の日本酒造りに初挑戦
「ミチのムコウ」プロジェクトの話を伺った際に、私たちの蔵でも何か挑戦をしてみたいと思い、発泡性の日本酒を造ることに決めました。
そこで今回のプロジェクトでは、瓶内二次発酵の発泡性の日本酒に挑戦しました。
瓶内二次発酵は、細かい泡が得やすい点・複雑な香味が出る点に加えて、他の日本酒に比べ手作り感のある仕上がりになるとされています。その一方で瓶に詰めてからの温度管理が難しく、温度調整ができるリーファーコンテナで、目指す酒質まで管理しました。
瓶詰め以降は、毎日1本ずつ開栓し発行具合を観察する必要があり、とても手間が掛かり僅かな変化に気づかないといけない緊張の中での作業になりました。
また、プロジェクトで造るお酒はお客様に引き渡す日が決まっており、その日に味わい、アルコール度数、発泡感を揃える必要があったことも大きなプレッシャーでした。
なんとか完成させることができ、名前はプロジェクト参加者からの公募で「ユメノツヅキ」に決定。「日本酒を造って終わるのではなく、まだまだこの活動が続いてほしい」という想いが込められています。
プロジェクトを通してより地域に貢献したい
私たち狩場一酒造にとって、「100人ではぐくむ名前はまだ無い日本酒」の活動への参加は、今まで実現したいと思っていてもなかなか挑戦ができなかったことがかなう絶好の機会になったと思います。
特に瓶内二次発酵のお酒「ユメノツヅキ」は、出来上がったお酒の味わいや、プロジェクトへの共感の点で、想像以上の反響があり、店頭に並んでから3日で完売。「もう一度呑みたい!」という声がたくさん寄せられました。2023年には、多くの方がリピートで申込んでくださり、プロジェクト全体に満足していただけたのかなとうれしく思います。
今回の企画を通して、地域が少しでも元気を取り戻す活動に参加させていただき、感謝の気持ちとおいしいお酒を造る責任を感じています。2023年も引き続き当プロジェクトに参加しますが、今年は昨年以上に積極的に関わっていきたいと考えています。
そして今年のお酒は「瓶内二次発酵」のお酒の他に、一夏を常温で貯蔵し秋頃に出荷する「ひやおろし」も予定しています。今年度はプロジェクトで作った酒米を増やして仕込むため、どのような仕上がりになるのか楽しみです。
「100人ではぐくむ名前はまだ無い日本酒 」は、プロジェクトもお米作りも私たちの関わるお酒造りも、新しい試みと挑戦であふれる素敵な企画だと思います。少しずつ荒廃していく地域を目の当たりにすることは、誰にとってもつらいことです。今回の活動を通して、微力ながら地域に貢献ができればと思います。
≪今後のスケジュール≫
■100人ではぐくむ名前はまだ無い日本酒2023
8/6 【畦豆企画】 畦の草刈り ※畦豆(あぜまめ)は丹波の黒大豆を栽培
9/8,9,10,12 稲刈り(酒米)
9/17 【コメ部】 稲刈り ※コメ部は飯米のコシヒカリを栽培
10/22 【畦豆企画】 収穫
11月 【コメ部】 収穫祭
12月以降 開栓式
≪募集事項≫
「100人で育む名前はまだ無い日本酒2023」は参加者を募集しております。
※1口3万円、720ml×6本 体験付き(事前にご予約が必要です)
※田植えや生き物観察会など、すでに終了した企画への参加できません。
※お酒のみのご予約は10月頃からを予定しております。
https://michinomukou.org/sakamai2023/
《ミチのムコウ 各種募集》
■ミチのムコウ「黒枝豆」×狩場一酒造「秀月」セット
2023年8月 販売予約開始
■「Be Satoyama 2030」
2023年10月 2期生募集開始
■「100人ではぐくむ名前はまだ無い日本酒2024」
2024年2月 募集開始
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