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今日が、残りの人生の最初の1日。

小田急ホテルセンチュリーサザンタワーが取り組む「地産地消」「心と身体のしあわせ」をテーマに掲げる料理人 石川 篤志 の「おもてなし」実現に向けた「東京産野菜が主役となるコース」が完成するまで

著者: 株式会社ホテル小田急サザンタワー

 

 東京 新宿駅南口より徒歩3分、小田急ホテルセンチュリーサザンタワー(東京都渋谷区、総支配人:宮越 真理子)内、20階のレストランや21階の宴会場では、主に東京産の野菜を使用し、新鮮で質の高い東京野菜のおいしさを多くのお客様にご好評いただいております。

 料理長の石川 篤志(いしかわ あつし)が惚れ込んだ東京産野菜へのこだわりや想い、東京産野菜を取り扱うまでの背景や、東京産野菜を通じて出会った生産者とのエピソードなど、現在に至るまでの取り組みをご紹介します。



~安全・安心で新鮮な食材でおもてなしがしたい~

(小田急ホテルセンチュリーサザンタワー 料理長 石川 篤志 / 以下 石川)


 当ホテルは海外のお客様の来訪が多く、何か日本らしい思い出に残る「おもてなし」ができないか?という想いから、Made in JAPAN、Made in TOKYOで喜んでいただきたいという願いを込めて、2018年より東京の食材でご用意する特別メニューの考案を開始しました。

 外国人ゲストは健康志向が高く、自然を大切にしてオーガニック、ビオなど無農薬に関心が強い。石川は、過去にフランスで修行した経験があり、現地のマルシェで色鮮やかに並べられた野菜やレストランで提供されている野菜料理の品々から影響を受けて自身でも野菜料理、さらには野菜だけのコースを創作したいと思い描いていたことと一致し、東京産野菜のコースの商品化に向けて本格的な行動に移しました。



地産地消が可能にする「新鮮」、安全・安心な食材を求めて

 


 石川)東京でも特殊な野菜(ヨーロッパ種の野菜)が多く生産されており、それぞれの品質が高いことに気づきました。生産者は土にこだわりがあり、農園ごとに土のタイプも違い、生産されている野菜の種類も異なり、東京産野菜のおいしさと魅力を感じました。そして、海外からお越しのお客様は農薬を使用した野菜の摂取をためらう方が多くいるために、安全・安心な野菜であることが非常に重要になると考えたときに、「農業生産工程管理」と呼ばれている、安全・安心な食材であることが可視化できるGAP(Good Agricultural Practices)の認証を取得している農園が都内にも多くあることから、東京産の「安全・安心な食材でおもてなしする」という自身のコンセプトに合致しました。


 このような背景が相交わり 、海外のお客様を東京産の野菜で「おもてなし」する。さらに国内のお客様には、都内にも多くの農園があり、高品質な野菜が育てられていることをたくさんの方に知ってもらうために、「地産地消」に取り組む東京野菜のコース「東京野菜が主役の“ベジフルコース”」を完成させることを決め、「地産地消」への取り組みと一料理人、石川の信念である「心と身体のしあわせ」というテーマを実現するために動き出しました。



~コロナ禍での行動制限を遵守し、止まることなく進めた都内の農園訪問~

<生産者との信頼を深めるとともにスキルアップを図る>


 

 石川は2019年から都内の農園に足を運び、料理に使用したい食材を自分の目で確認して回りました。しかし、2020年以降感染症の拡大があったことから、電話やメールで連絡を取り、関係性が途切れぬよう取り組みながらも、人数を縮小して農園訪問を継続しました。

 農園訪問時には、じゃがいもの種植えや収穫など農作業をお手伝いすることで、栽培することの大変さや食材のありがたみ、安全・安心であること、生産者の愛情が詰まった食材であることを再認識しました。調理スタッフだけでなく、ホールスタッフも作業体験を通じて今まで知らなかったことをたくさん学び、彼らのスキルアップにつながっています。

 さらに、この期間にメニューの考案をじっくりと行いながら、食材を扱う料理人として生産者からさらなる信頼を得られるようにと、石川は「野菜ソムリエ」の資格を取得し、自己啓発にも努めました。



~地産地消に取り組む「東京野菜が主役の“ベジフルコース”」~


 

 都内の農園に足を運び、対話と作業のお手伝いを通じて築き上げた絆と深めた信頼をもとに、コロナ禍を経て2021年8月31日(831 やさいの日)より「東京野菜が主役の“ベジフルコース”」の提供を開始しました。その後も季節ごとに主役となる東京野菜のラインアップを変更して提供を継続しています。



~地産地消への取り組みをきっかけにお付き合いが始まった都内農園の生産者に、農園を営むうえでの日々の苦労や料理人 石川の印象をお伺いしました~


今回は多くの生産者の中から、三鷹市「天神山須藤園」、三鷹市「田辺農園」と立川市「カラフル野菜の小山農園」の農家さん3名をご紹介します。


東京都三鷹市「天神山須藤園」園主 須藤 金一(すどう きんいち)氏


 「天神山須藤園」は東京都三鷹市で約300年続く植木生産農家です。土に根を張り、水分や養分を吸収する植木にとって重要なのは、やはり土です。近隣大学の馬術部より提供を受けた馬糞をもとに、自園で選定した枝のチップと混ぜ合わせ発酵したこだわりの堆肥を作っており、農園ではレモンや夏みかん、デコポン、平兵衛酢(へべす)など主に柑橘系の果実を栽培しています。現在は、オリーブの栽培も手掛けており、東京産オリーブオイルの製品化を目指しています。

 都内の住宅街に隣接する農園だからこそ、消費者が近く顔が見える関係なので、機械音や農薬散布など時間帯や風向きなど配慮が必要です。さらに子供たちにも興味を持ってもらえるように、伝統を維持しながら時代に合った農業を心がけています。オリーブの栽培もその一環で、オリーブオイルソムリエの資格を取得し、日々向上心を持ち取り組んでいます。

 また、都内に農園があり、東京でも質の高い食材が生産されていることを消費者に知っていただける機会ともなるので、石川をありがたい存在だと語ります。



東京都三鷹市「田辺農園」園主 田辺 陽介(たなべ ようすけ)氏


 田辺農園では「新鮮で安全・安心」をモットーに約30種類の野菜や果実を栽培しています。旬を大切にしており、時季に合わないものは栽培せず、種を植える場所や期間をずらしながら、シーズン中に野菜の提供が途切れないよう工夫しています。さらに学校給食や近隣にお住まいの方など消費者の存在が近く、顔が見える距離だからこそ皆様が喜ばれる姿が励みとなり、新鮮で、安全・安心な食材をお届けできるように農作業に取り組んでいます。

 石川の取り組みに対し、都内の住宅街に農園があることを多くの消費者に知っていただける機会を作ってくれて、たくさんの方にお召し上がりいただけるチャンスと生産者の想いを届けてくださるありがたい存在で感謝している、と語ります。



東京都立川市「カラフル野菜の小山農園」園主 小山 三佐男(こやま みさお)氏


 小山氏は、栽培方法に厳格な規則があり伝統を継承する「江戸東京野菜」の普及と、日本では珍しい西洋野菜の生産に力を入れるなどチャレンジ精神が高く、栽培した野菜は直接お顔を合わせて話をした、お付き合いのある方にのみお届けするというこだわりを持つ生産者です。

 「土を制する者は野菜を制す」という信念から、牛糞に消臭効果があるコーヒー豆(再利用のもの)を合わせて6か月熟成した堆肥を使用しています。そして、野菜は“鮮度”が命、顔が見える間柄の消費者や調理人に熱い気持ちとともに新鮮な野菜をお届けしています。さらに住宅地にある農園であるがゆえに、住民の方に迷惑がかからないように、畑作業もトラクターなどの機械音における騒音への配慮をしながら共存していくための工夫もしています。

 石川のことを「初めて出会ったホテルの料理長であり、これまでにたくさんの方が農園を訪れてくださいましたが、誰よりも多く足を運んでくれています。フレンドリーで農園にスタッフを連れてお手伝いにきてくれるなど、向上心が高く、親しみやすい人間性に惹かれています。」と語ります。



~東京産野菜を取り扱うにあたり、料理長 石川 篤志が苦労したことは~


 石川)東京産野菜を仕入れたいけれど、まず初めにどこに問い合わせをしたらよいのかわからずに途方に暮れました。幸いにも、健康食材(野菜)の取引先や東京都農林水産振興財団 チャレンジ農業支援センターなどから紹介いただきました。取引を開始するにあたり、ホテルの規模や日々使用する野菜の量など、東京産野菜をどのようにして使いたいかを丁寧に説明することで、生産者の不安を拭い、気持ちよく納品していただけることになりました。

 東京産野菜は地方産野菜とは異なり畑の生産スペースが限られるため、一種の野菜を長期にわたり継続して仕入れることが難しいがゆえに、取り扱ううえでリスクもあります。今では、ここ数年のお付き合いを通じて季節ごとに納品される野菜の種類や量を把握できていますが、「東京野菜が主役の“ベジフルコース”」の開発時は、メニューの構成にとても苦労しました。

 実は、2021年に「東京野菜が主役の“ベジフルコース”」の提供を開始した直後に、何の前触れもなく、取引先の生産者から野菜が納品できなくなる、と告げられたこともあります。後継者問題で農作業を継続できなくなる背景があったようです。このようなこともあり、東京産野菜の安定受給の確保のために複数の生産者の方とのお付き合いが必要であると感じ、現在に至ります。


~地産地消への歩みは止めない。料理長 石川 篤志の今後の展望とは~


 東京産野菜からスタートした「地産地消への取り組み」。第二弾は「東京産の卵」。本年2023年の小田急ホテルセンチュリーサザンタワー開業25周年を記念したテイクアウトメニュー、東京都立川市の伊藤養鶏場の“たまごころ”を使用した「サザンタワー特製こだわり卵の濃厚プリン」の販売を、今夏開始しました。

 都内の生産者と今日まで築き上げた絆と信頼関係から、野菜の生産者を通じて畜産農家を紹介していただき、地産地消を推進するバックボーンを構築できました。

 今後も「美味しい料理を食べると心が幸せになる」、「美味しいものを食べるには身体の健康を維持しなければいけない」という考えのもとに掲げている「心と身体のしあわせ」のため、SDGsの目標にも設定されている「地産地消」「フードロスの削減」など、料理人としてできることの取り組みを強化していきます。そして、さまざまな東京産食材を使用した地産地消メニューを進化させたいと考えています。









 

 





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