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絶版になりながらもSNSを中心に話題が絶えなかった『総合英語able』(第一学習社発行)。なぜ支持され続けたのか、なぜ電子書籍としての復刊だったのか、その真相と本書の魅力に迫る。

著者: 株式会社第一学習社

株式会社第一学習社は、2023年6月26日(月)に『総合英語able』をKindleストアにて発売しました。

本書は、2014年に学校専売品として初版を発行して以来、多くの慧眼の読者に支えられてきました。惜しまれつつも、2019年の印刷を最後に廃刊となりましたが、こうした読者からの根強い復刊リクエストに再び力を得ました。

『総合英語able』電子書籍版、いざ出来。電子書籍化までのストーリーやいかに。

国語は古典も扱う一方で、英語は常に「現代の英語」が用いられる

英語に限らず、国語にしても、その他の教科にしても、大学入学共通テストでは複数のテクストや資料を読み取って、情報を比べたり統合したり、それをもとに思考を深めたりすることを試す出題がなされています。

現代に溢れる情報は玉石混淆。単一の情報に頼るのは、時に危険でさえあります。信頼できる情報ソースはどれか、その情報はファクトなのかオピニオンなのか。これらを見定めるリテラシーが現代を生き抜くためには必要であり、こうした力を試験で見取るのは必定でしょう。

高等学校国語科では、論理的・実用的な文章から情報を読み取ったり、論理的・実用的な文章を表現したりする「現代の国語」と、これまでの日本の言語文化を彩ってきた文学作品、古文、漢文を扱う「言語文化」とが必履修科目となっています。

一方、英語は現代も全世界で日常的に使われている言語です。リトールドされた文学作品などを読むこともありますが、わざわざ「現代の」と言わなくても、英語は常に「現代の英語」です。

こうした事情から、現代の英語力とは、情報を正しく読み取れる力、実用的に書いたり話したりできる力であり、その正確性や実用性を支えるのが英文法であると捉えることも可能でしょう。

時代に合った学びを。第一学習社の英語教材が追求してきたこと

2014年刊行の書籍版『総合英語able』の企画の経緯をはじめにふり返ってみます。英文法の本質を解き明かす詳しさとわかりやすさが経(たていと)ならば、織り成す緯(よこいと)にはさまざまなコミュニケーション場面における「実用」に着目した新しい時代の英文法を。これを企画の基本コンセプトに据えました。

初版編集当時、第一学習社が発行していた外国語科用文部科学省検定教科書のうち、「聞く」技能と「話す」技能を育成する「オーラル・コミュニケーションI」と「オーラル・コミュニケーションII」の各教科書において一定の評価を得ていました。『Voice Oral Communication II』については、学習指導要領が改まってもデータでもよいので使いたいという声が寄せられました。『総合英語able』だけでなく、この教科書も廃刊になってもなお先生方から評価され続けました。

「話す」「書く」といった表現に結びつく実用的な教材を目指して

2013年度からは、「聞く」「読む」「話す」「書く」の4技能を総合的かつ統合的に育てる「コミュニケーション英語」と、「話す」「書く」といった表現する技能を伸ばすための「英語表現」が本格実施されようとしていました。「実用」に適うこと、「話す」「書く」といった「表現」に結びつくこと。これらが本書の企画の根幹の一つであることは、いわば自然の成り行きでした

デジタル技術の進んだ出版界でも、編集工程は手仕事の連続、連続。経と緯は、こんがらがり、縺れ合ったまま。無理をして解こうとすれば綻びます。企画の経と緯に雁字搦めになって前に進めないこともあり、編集作業は一進一退、苦労続きでした。こうして、丹精して編みあがったのが、一例文ごとの丹念な解説や「CORE」「WHY?」といったコラム類から成る経と、「コーパスで知る」や「Communicationの扉」という緯による『総合英語able』だったのです

なお、「コーパスで知る」は「コーパスを知る」ではありません。目的なのではなく、あくまでも手段。コーパスは、現代を生きる人が発した英語、すなわち「現代の英語」を、活用可能な形に編集したデータの集積です。言語使用の実態を、話し手や書き手の心的態度の背後ではたらいている文法を明らかにしてくれます。

二度の改訂は電子書籍化を兆していた!

その後、二度の改訂を経ました。最初の改訂は、類書にはない優れたコラムであると評価されていた「コーパスで知る」や「辞書を引こう」を、いっそう充実させるものでした。これにより、本書の緯はずいぶんと太く丈夫になりました。

続く改訂版が、今般の電子書籍版のプロトタイプとなるものです。この二度目の改訂では、レイアウトレベルから改善し、「一項目一例文主義」というステップ・バイ・ステップの構成を踏襲しながら、よりわかりやすく学びやすい記述になるように解説を全面的に整理し直しました。また、図解を多く取り入れることにより、関係詞を含む文の構造などをわかりやすく示すことが可能になりました。簡潔にして不足のない記述と図解により、本書の評価はいちだんと高まりました。

レイアウトが端整であること、「一項目一例文主義」により必要な情報へのアクセスが容易であること。改訂してきたことは、電子書籍においても必要不可欠な要素です。さらに、「コーパスで知る」はまさしくデジタル技術の産物そのものです。メタ認知的な発見ではありますが、書籍としての『総合英語able』は、電子書籍化に向けて成熟していったと実感しています。電子書籍化は、本書の宿命観だったわけです

一般の方々も対象とする電子書籍へ

新しい時代には、新しい英文法の学びを、という企画に、高校・大学の先生方から、また、大学生以上の方々のネットワークから、大きなご賛同をいただきました。生徒用ご採用校以外の学校の先生が、ご自身のデスクに献本見本を置いてくださったり、内容に関するご指摘をくださったり、一般の方から本書に関するご要望をいただいたりしました。ご指導や研究活動、日々の英語学習にご活用いただいていたのだと思います。誇らしいことです。

この事実は、しかし、二つのことを意味していました。

高校生の文法学習書としては、ヒット作にはなりませんでした。高校生以上の読者を満足させる情報量が、かえって災いしたのでしょう。高校生にとっては難しいのではないかと。また、企画がやや前のめりすぎると捉えられてしまうきらいもあったのでしょう。他社の先行書籍の切り崩しができず、残念でなりませんでした。

一方で、一般の方々をも対象とする電子書籍には向いているのではないかという推察が成立しました。電子書籍化以前から、高校生以外の読者から支持を得ていたからです。

絶版という憂き目を味わいましたが、こうして電子書籍として再び世に問うことができました。あるいは、憂き目を味わったからこそ、と言うべきかもしれません。

「英文法は教わったように教えるな」、を実践するなら使ってほしい

教わったように教えるな。これにまつわるエピソードをご紹介します。

全国の高等学校の先生方とお話しをさせていただく機会がありました。たとえば、古文。大学で国文学を専攻しない限り、高校卒業後、ほとんどの高校生は古文にふれることはないでしょう。では、なぜ学ぶのか。古典文法や重要古語を覚え込んで大学入試に通るためである、そう矮小化しないでほしいと思います。

鴨長明の哲学は災害大国日本の住まい観に、『とりかへばや物語』は当今のジェンダー問題に示唆的であったりするので、高校生には古文を通じて〈いま〉を思考させてほしい。そんなことを先生方とお話ししますと、指導方法を変えなければなりませんね、といったお声を頂戴することがあります。まさに、教わったように教えるな、です。

英語を指導される際、英文法は教わったように教えるな、を実践するのなら、ぜひこの電子書籍を活用してください。英文法は何のために学ぶのか。大学入学共通テストでは英文法を直接問う問題は出題されないのに。もっと言えば、センター試験時代からその第2問Aの小問数は減っていたのに。英文法は、英語を正しく深く理解して、豊かに表現するために必須です。「実用」に根差した本書の出番です。

「実用」に役立ててこその電子書籍

鴨長明の教えになぞらえて言うと、転居のたびに書籍を手放さざるを得ないのは物理かもしれませんが、電子書籍であれば、そんなことはありません。端末さえあれば、いつでもどこでも知りたい情報にアクセスできて、学びを続けることができます。電子書籍の利点でしょう。

本書は、家宝のように書棚に眠らせていたり、積ん読したりするのに似つかわしくありません。だから、電子書籍なのです。「実用」に役立ててください。

大学生や社会人の読者の方々には、学んだように学ぶな、の精神で読んでいただきたいと思います。ぜひ本書を英語学習の新しいメルクマールとしてください

使える英文法の習得が、英語力を向上させる鍵に

最後に、監修者の赤野一郎先生(京都外国語大学名誉教授)からのメッセージを紹介します。


受験対策で英語力を向上させたいと思っている高校生の皆さん、専門書を読みたいと思っている大学生の皆さん、仕事の必要性から英語力をブラッシュアップしたいと思っているビジネスパーソンの皆さん、英文法が英語学習の基本であり要です。英語を正確に読み、場面に応じた適切な英語を話し、書くためには「使える英文法」の習得を目指す必要があります。そのための2つの方法を紹介します。一つは本書の「はしがき」に書いた方法ですが、基本例文と解説を読み、繰り返し例文を音読・筆写し、知識を英文とセットにして学ぶ方法です。もう一つは、英語を読んでいる時、書いている際中に、表現上疑問に感じたり、自信がない箇所が出てきたら、関連すると思われる文法項目を目次から、語句を索引から見つけて該当ページを読む方法です。あたかも辞書でわからない単語を調べるように本書を使います。遭遇した文法問題が文法書で解決できれば、使える確かな知識になります。本書を活用し、英語力が向上することを願っています。

赤野一郎

書籍概要

総合英語able New Edition

監修者:赤野一郎

著作者:石原健志 衛藤圭一 境倫代 澁谷竜昇 土屋知洋 仁科恭徳 三村仁彦

吉川裕介 吉村由佳

英文校閲者:Stanley Kirk

定価:1,650円(税込)

発売日:2023年6月26日(月)

ページ数:640ページ

発行所:株式会社第一学習社

株式会社第一学習社について

会社名:株式会社第一学習社

所在地:〒733-8521 広島市西区横川新町7-14

代表取締役:松本洋介

設立:1960年

URL:https://www.daiichi-g.co.jp/

企業使命:私たちは、社会の持続可能な未来を支える子どもたちを教育の力で育むため、良質な学びの環境を提供し続けます。

経営姿勢:私たちは、教育と未来をみつめる企業として、次のことを大切にしています。

1. 学ぶ喜びが実感できる、教科書・副教材などの出版物・デジタル商品を発行する。

2. バランスよく「生きる力」を育成するため、文章表現・運動などの各能力の向上に貢献する。

3. 学びを通した成長を支援するため、常に現場の声に耳を傾け、積極的な価値創造を行う。

4. 仕事を通して成長したいと願う仲間に寄り添い、全力で支援する。

事業内容:文部科学省検定高等学校教科書(9教科:英語・国語・地理歴史・公民・数学・理科・保健体育・家庭・情報)、学習図書、視聴覚教材、学術図書の出版

小論文添削指導

小・中・高・成人用新体力テスト、幼児・高齢者・企業向け体力テストのデータ集計分析処理

進路適性診断テスト

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