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2024年問題の解決を目指す物流拠点「首都圏DC」。持続可能な物流へ向けた取り組みとは

著者: YKK AP株式会社

「Architectural Productsで社会を幸せにする会社。」をパーパスとして掲げるYKK AP。窓やドア、インテリア建材やエクステリア商品、カーテンウォールなどの商品の開発・製造・販売を通して幸せな社会をつくることを自らの存在意義として事業に取り組んでいます。今回は「供給」を担うロジスティクスにおいて、在庫管理と輸送方法の転換によるドライバーの拘束時間を短縮し、棚搬送型ロボットの導入による効率的な仕分けを実現するYKK APの物流拠点「首都圏DC」についてお伝えします。

「首都圏DC」が入る「ESR加須ディストリビューションセンター2」の外観


物流業界では2024年4月から、働き方改革の一環としてトラックドライバーの時間外労働に対する上限規制が設けられます。これによりドライバーの労働環境改善が期待される一方で、運送能力が不足しモノが運べなくなる「物流の2024年問題」が叫ばれています。この課題は私たちのロジスティクスにも大きく関わってくるため、荷主企業として物流の効率化や生産性向上を進めてきました。2016年から輸送効率を高めるパレットの開発を着手し、トラックへの積み付け最適化システムも導入。荷物をパレット単位で効率的に運ぶ“ユニットロード”を進めてきました。そして、ユニットロード化の輸送体制が確立した今、持続可能な物流をさらに推進します。

※「ユニットロードの推進」についてはこちら:https://prtimes.jp/story/detail/jrwYdYUpMLB


2023年10月から稼働する物流拠点「首都圏DC」の取り組みについて、生産本部埼玉窓工場ロジスティクス課長 右谷光拡さんに聞きました。


首都圏エリアの供給体制を強化する物流拠点を開設

YKK APのモノづくりは、素材や部品の開発・製造から加工・組み立てに至るまで、すべての工程を自社の製造拠点で一貫生産しています。そして、高品質な商品を安定供給するため、物流拠点間を結ぶ輸送経路や物流拠点から納品先までの配送網を、社内のロジスティクス部門が管理しています。この物流拠点は、商品を在庫し出荷する保管型物流センター「DC(Distribution Center)」と、商品は在庫せず仕分け・荷捌きを行う通過型物流センター「TC(Transfer Center)」があります。DCは製造拠点の近くに、TCは中継地点として配送エリアの近くに位置します。これまで、1都7県の首都圏エリアに向けた供給は「首都圏TC」が担っていましたが、在庫を持つDCに機能を拡大。「首都圏DC」として開設し、首都圏エリアに向けた住宅用の窓やドア、エクステリア商品の供給体制を強化します。



YKK APの物流拠点(2023年9月時点)


在庫回転率を高め、ドライバーと構内作業者の働きやすい環境を実現

私たちの商品は、住宅向けやビル向け、窓やドアなど多岐にわたります。さらに、急ぎで必要な“即納品”もあれば、希望する日時にお届けする“期日指定品”もあります。例えば、これまでの首都圏エリアの即納品は、注文を受けた日の夕方に北陸DC(富山県)を出発し、夜間に首都圏TC(埼玉県)に到着。そこから仕分け作業を行っていました。そのため、もし荷物が運べない事態が生じた場合、翌日の納品に間に合わないリスクを伴っていました。さらにドライバーの労働環境は長距離輸送・夜間勤務と、大きな負荷になっていました。

この課題を解決するために、これまでの出荷状況をアイテム別・エリア別に細分化して分析し、売れ筋商品やエリア特性を把握。営業部門とも連携し、新商品や提案を強化しているアイテムなど、今後注文が増える商品を予測し事業環境の変化に対応します。こうした在庫管理の見直しにより、首都圏に出荷するアイテムを選定し、適切な量を在庫し在庫回転率を高めます。これにより、過剰在庫・欠品ロス・廃棄ロスの削減に加え、夜間の長距離輸送の回数を削減でき、輸送手段の選択肢も増えます。そして、納品された商品を仕分けする構内作業も、7割を夜間に行っていましたが、日中が7割になります。2024年問題にも対応し、働きやすい環境を実現します。


「首都圏DC」開設による即納品の作業工程の変化の例


ドライバーの拘束時間を短縮するモーダルシフトの推進、CO2排出量削減に貢献

適切な在庫管理は、期日指定品の効率的な輸送方法にもつながります。例えば、九州製造所で製造している商品を首都圏エリアで販売する場合、九州DC(熊本県)から首都圏DCへ、そして納品先へ輸送します。急ぎの場合はトラックによる幹線輸送となりますが、納品先の近くにあらかじめ在庫していればこのトラックによる長距離輸送をしなくて済みます。そしてこの在庫は、計画的かつまとめて輸送するため、時間的余裕を持つことができ、トラックから鉄道や船舶などへ輸送方法を転換するモーダルシフトを進めることができます。首都圏DCでは本格的な稼働に先立ち、フェリー輸送での九州DCから首都圏DCへの入荷を始めています。九州DCから首都圏DC間は約1,300㎞。トラック輸送の場合、ダブル連結トラックを2人で交代しながら走行し往復で3日必要となります。一方、フェリー輸送の場合、トラックでの輸送は“九州DC→港”と“港→首都圏DC”の2区間のみ。担当するドライバーはそれぞれ一人ずつで時間的にもそれぞれ往復約5時間で済むため、大幅な拘束時間の短縮になります。

2024年問題への対応、そして環境配慮の点からも輸送距離700km以上は輸送方法をトラックから鉄道や船舶に転換するモーダルシフトを推進。「首都圏DC」開設により各物流拠点の在庫バランスの適正化を図り、モーダルシフトによる2025年度のCO2排出量は2022年度比で30%削減を目指します。


内航船から出発するトラック


首都圏DCでは輸送の効率化の他にも、仕分け作業者の負荷を低減する仕分けシステムGTPをYKK APの物流拠点では初めて運用します。GTPについてロジスティクス部 技術開発企画室長 横井志朗さんに聞きました。



GTP (Goods To Person)システムの開発

GTPは棚搬送型ロボットとも呼ばれており、固定棚に保管されている商品を作業者が歩きながらピッキングする方法に対し、ピッキングを担当する作業者のいる場所までロボットが荷物を運んできてくれます。eコマース向けの物流現場ではすでに広く採用されていますが、窓やドアといった大きな商品を取り扱う建材分野では、まだ実例が多くありません。しかし、私たちの商品の中でもねじや部品、パーツなど、小部品の荷物は出荷全体の約10%を占めています。まずは軽くて小さく、ピッキングしやすい小部品を対象にGTPシステムの開発をスタート。中でも、最もこだわったのは細分化した方面別の仕分けです。

棚搬送型ロボット


在庫保管棚


ピッキングと100トラック方面の仕分けを1回で行うGTPシステム

これまでのピッキングは「注文ごとに、人が歩いて、棚からモノを探す」この工程で行われていました。しかし、この作業は体力的にもきつく、棚の場所を把握していた方が早く探せるため、属人作業になっていました。そこで、棚搬送型ロボットを導入し「商品ごとに、定位置へ、ロボットが棚を運んでくる」工程に転換。また、首都圏DCは1都7県の広域エリアへ出荷するため、まずは県単位の方面に、次にトラック方面に仕分ける2段階で行われていましたが、1回でピッキングとトラック方面に仕分けるシステムを目指しました。このシステムを完成させるため、過去の全出荷データを分析し、小部品が出荷した方面数を把握。約300種類の小部品を1人の作業者が捌けるように、適切な棚の数、棚からの荷物を取り出すための導線、効率的なレイアウトなど、さまざまな条件でテストを繰り返しました。こうして、システム制御に苦労しながらも1回で100方面の仕分けをするGTPが完成。ピッキングする商品数としては、1日当たり800~1,200個にもなります。これを歩きながらピッキングすると6~8時間かかりますが、GTPなら定位置にいながら3~4時間でピッキングと100方面の仕分けまで一気に対応することができ、構内作業者の作業時間の大幅な削減と、作業負荷が低減します。


注文ごとに、人が歩いて、棚からモノを探す様子


商品ごとに、定位置へ、ロボットが棚を運んでくる様子


持続可能な物流を目指し、選ばれる荷主になるために

在庫管理やモーダルシフトの推進、GTPシステムの導入など、進化した物流拠点である「首都圏DC」ですが、荷主企業としてやるべきことはまだまだたくさんあります。特に、2024年問題をはじめ、トラックドライバーの労働環境の改善は荷主企業として取り組まなければいけない喫緊の課題です。「在庫の持ち方、リードタイム別の輸送方法の選定など、荷主企業としてドライバーの負荷を低減する体制を整えていきたい」と右谷さんは言います。また、ドライバーに限らず構内作業者も人手不足が深刻化しています。「ロボットによる自動化を進めることで、だれでも簡単に無駄な体力を使わずに作業できる環境を目指したい」と横井さんは言います。「首都圏DC」での事例を他の拠点でも展開し、YKK APロジスティクス全体のさらなる効率化を実現し、選ばれる荷主を目指します。




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