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未来の「遠隔操作施工」へのチャレンジと新たな人材創出を目指す(社)運輸デジタルビジネス協議会の オープンイノベーション(共創)の取り組み

著者: 一般社団法人運輸デジタルビジネス協議会

一般社団法人 運輸デジタルビジネス協議会(以下 TDBC)は、運輸業界の課題解決を推進する非営利団体です。貨物、旅客、建設事業者と技術を持った企業が共創して、運輸業界を安心・安全・エコロジーな社会基盤に変革し、業界・社会に貢献していく活動をしています。対象としている貨物、旅客、建設業界は、いずれも数々の課題を持っており、中でも共通する人材不足という課題は、それが市民生活に大きな影響を及ぼすことは明白です。

TDBCでは、このような社会課題に対してデジタルテクノロジーを利用し解決に取り組んでいます。


TDBCの建設業界に特化したワーキンググループでは、重機の遠隔操作の実現により、新たな人材の創出、重労働の軽減を目指しています。

今回は、これまでの遠隔操作(e建機®)の実現に向けた取り組みをご紹介します。


建設業界の人材不足の解消を目指して、現場の生産性向上の取り組みを開始

建設業界に特化したワーキンググループ(WG07)は2019年9月に立ち上がりました。当初は建設現場における作業の生産性向上のための自動化により施工後の資材の種別認識や資材の保管場所の認識を行う実証実験を行いました。

その後、建設機械をモニターを見ながら操作をするという行為は、プロゲーマーやeスポーツプレイヤーとの親和性が高いのではとの仮説のもと、そういった人材のセカンドキャリアへの可能性を見出しました。また、若い就労困難者がチャレンジできる可能性も考えられました。


遠隔施工の実証実験としての「e建機®チャレンジ大会」開催までの歩み

Caterpillar Cat Command(通称CATコマンド)というラジコン操作による遠隔施工の技術が存在し、それとウェアラブルグラスとを組み合わせ、実際の建設機械を遠隔操作するシステムを実験しました。そして、360度カメラの利用などを用いてより現実に近しい操作環境を構築して実験しました。しかしながら、逆光、日陰での視認性の大きな劣化、距離感が掴めないなどの新たな課題が現れました。さまざまな技術の探索のなかで、TDBC会員の伊藤忠TC建機株式会社がARAV株式会社と建設機械の遠隔操作実用化に向けた開発を進めているとのことから、TDBC WG07によって、実証を進めていこうとなり、建設機械のオペレータ向けトレーニング施設を持つ一般社団法人千葉房総技能センターを会員に招待し、実証実験へ歩みだしました。

e建機®チャレンジプレ大会の開催から本大会へ

2021年度では、ワーキンググループとしてこの技術の実用化に向けた実証実験の場をe建機®チャレンジ大会として開催することにし活動を始めました。

e建機®チャレンジ大会の開催目的は以下の通りです。

まず、本大会前にプレ大会を実施することにし、2022年5月開催を目指し計画が始まりました。プレ大会では本大会に向けて①安全性の担保、②プレイヤーの操作性の確認、③競技ルールの策定などを目的として実施しました。

プレ大会では、通信品質の課題があげられました。会場の通信環境が悪く、見学者のスマートフォンの帯域圧などで、スムースな稼働ができない部分もありましたが、おおむね検証したかった①安全性の担保、②プレイヤーの操作性の確認、③競技ルールについては解決策を含めて目的は達せられたので、本大会の開催を決めました。本大会は10月26日に開催することとして準備が始まりました。

国土交通省においても遠隔施工技術の研究が進められており、国土交通省とのタイアップ企画として開催の承認をいただきました。そして、本大会ではご挨拶をいただき、国土交通省主催で11月開催「遠隔施工等実演会~施工DXチャレンジ2022~」に参加することになりました。本大会では、TDBC事務局(ウイングアーク1st株式会社内)のある六本木の高層ビルから千葉県夷隅郡大多喜町にある一般社団法人千葉房総技能センターの筒森AIセンターの建設機械を操作しました。

やはり通信の問題で途中、競技が中断するというトラブルはありましたが、現地調整などを行い競技は最後まで行われ、目的は達成できました。

本大会では、多くのメディアに取り上げていただきました。業界紙、地方一般紙、全国紙、ネットニュース、eスポーツメディアなどをはじめ、下記のTVニュースでも取り上げられました。

2022年10月27日 テレビ朝日 ANNニュースワイドスクランブル

2022年11月8日 NHK 首都圏ネットワーク

2023年1月11日 NHK おはよう日本

第2回 e建機®チャレンジ 2023の開催へ

第1回大会を無事に終え、さらに遠隔操作システムの改良、新たな映像技術の模索、通信課題の克服、安全対策を行い第2回大会の実施の計画が始まります。


第2回のテーマを、“Challenge to evolution”として、第1回からの進化を見せる大会を目指しました。また、9月1日の防災の日の実施として災害復旧支援としての有効性を示そうと考えました。

「第1回からの進化」

1. Distance:距離 70Km⇒400Km

2. Communication:通信技術 衛星/閉域網/LPWA/屋外Mesh WiFi

3. Video technology:映像技術 3Dカメラ

4. Safety technology :安全技術 AI警報装置等

5. Pilot :プレイヤー 学生/女性/eゲーマー

6. Co-creation :共創 電力業界との業界を超えた連携


9月1日当日は非常に天気が良く、六本木の高層ビル36Fからは富士山がはっきり見えました。(夏では珍しい)

開催挨拶として、TDBC代表理事 小島薫より挨拶いただき、続いて、国土交通省 大臣官房 参事官(イノベーション)グループ 施工企画室 企画専門官 矢野公久様よりご挨拶をいただきました。

当日は、遠隔操作技能競技に加え、e建機®チャレンジ大会の目的を果たす技術を紹介しました。

  • 株式会社大林組が開発する自動・自律・遠隔操作建機:デモンストレーションにより遠隔操作技術、安全ガイドラインの適用状況を披露
  • ソニー株式会社が開発をすすめている3Dモニター:実用化されることで映像による操作のリアリティ向上の可能性を披露
  • 災害救助現場におけるレスキュー隊員のバイタルのリアルタイム監視:事前に訓練現場にバイタルセンサーを装着しての訓練の様子を撮影した動画放映によって、災害救助現場の隊員の安全管理体制の向上の可能性を披露
  • 中部電力パワーグリッド株式会社の安全や映像に関するソリューション:ウェアラブルカメラ、傾斜センサー等を利用して高度な遠隔操作の実現性を披露
  • サナース株式会社 スパイダー:起伏や、障害物が多くある災害現場での活躍が期待されるスイス製のスパイダーという建設機械のデモンストレーションを披露


TDBCが目指すオープンイノベーション

下図に示す通り、e建機遠隔システムプラットフォームはオープンイノベーション(共創)のもと、技術を持った企業の共創により実現されています。


e建機®チャレンジ2023は2つの遠隔操作システムを紹介しています。1つ目は伊藤忠商事、伊藤忠TC建機、千葉房総技能センター、ARAVが開発しているシステムです。こちらのシステムで千葉県大多喜町筒森の建機の操作で競技を行いました。

もう一つが、株式会社大林組が開発している自動・自律・遠隔操作建機です。こちらは、六本木会場から大阪枚方にある大林組の西日本ロボティクスセンターの建機を操作します。

競技の模様と結果について

競技参加は4チームです。2名一組でバックホウの操作とキャリアダンプの操作をそれぞれ行います。

参加操作パイロットチーム

  • 建設エキスパートチーム:丸磯建設株式会社で働くプロの建設機械オペレータ
  • 学生eSportsチーム:駒澤大学eSportsサークルの所属
  • 社会人チーム:コンタクトセンター業務企業の社員
  • プロゲーマーチーム:プロゲーマーであり、1名は建設機械のオペレーションができる方


第1回に参加された方も再び参戦しています。特に建設エキスパートチームはプロですので前回の屈辱を果たすべく、前回よりも熟練者を率いての参戦でした。


途中に建機からの映像が届かなくなるというトラブルが発生しました。すぐに原因究明の調査を行い、1時間程度で回復しました。原因は突き止められており、運営上のチェック体制を強化すれば全く問題ないことが判明しています。

前回と比べて、通信環境を映像の中継の分離、衛星回線を利用することで飛躍的に改善されました。


当日は非常に暑く、建設機械会場の作業は過酷でした。熱中症対策を施し、体調を崩す作業者は出ませんでした。


建設機械会場での作業者のバイタル計測、操作パイロットのバイタル計測も行うことができました。センサーからのデータ送信周期がもっと短くなることでよりリアルタイム性が増し、万一の場合の迅速な対応が可能になります。


競技の結果は、以下となりました。

かなり均衡したタイムでありましたが、建設エキスパートチームは見事リベンジを果たし、プロとしての意地を見せた結果になりました。

優勝

建設エキスパートチーム

準優勝

プロゲーマーチーム

第3位

学生eSportsチーム

第4位

社会人チーム


当日のライブ配信動画(ダイジェスト版)はこちらからご覧いただけます。

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e建機®遠隔操作プラットフォームとしての社会実装に向けて改善を続けてゆく

結果として、建設機械のオペレータが優勝しましたが、建設機械のオペレータではない人材でも、少しのトレーニングでプロの熟練の建設機械オペレータに遜色のない操作の実現が可能であるとの実証結果が得られました。

さらに、3Dモニターの活用による奥行の把握とデータ圧縮技術の進化による映像データ転送遅延(レイテンシー)の改善が行われることにより、作業品質と作業効率(生産性)が向上し、精密な建設機械のオペレーションが可能になるはずです。

今後も改善を行い、実証実験を進め社会実装へと進めていきます。

「e建機」を商標登録し将来広くこの言葉が認知され社会と業界が変わることになればと願っています。


最後にe建機®チャレンジ2023へご支援いただいた各社様へ厚く御礼申し上げます。

開催スポンサー様

伊藤忠商事株式会社 矢崎総業株式会社 ウイングアーク1st株式会社

株式会社大林組 中部電力パワーグリッド株式会社 株式会社ベルシステム24

遠隔機材・会場等その他支援企業様

ソフトバンク株式会社 大塚製薬株式会社 一般社団法人千葉房総技能センター

EP Rental株式会社 伊藤忠TC建機株式会社 サナース株式会社 ARAV株式会社

加賀電子株式会社 ソニー株式会社 株式会社イーエスエス スカパーJSAT株式会社

運営・配信等支援企業

株式会社フルハウス 株式会社プラスループ


国土交通省でも遠隔操作による施工の実現を目指した活動が行われており、TDBCでも協力をしてまいります。


TDBCはこのプラットフォームの社会実装を目指し、新たな人材の創出による人材不足と安全な施工、災害支援活動への未来を目指していきます。

一般社団法人 運輸デジタルビジネス協議会 (TDBC)

https://unyu.co

所在地

〒106-0032 東京都港区六本木三丁目2番1号

六本木グランドタワー ウイングアーク1st株式会社内 TDBC事務局

連絡先

tel.03-5962-7370 / fax.03-5962-7316 / unyu.co@wingarc.com




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