抱っこの悩みを改善し、より快適な子育てに導きたい。ベビーラップ老舗メーカーが抱っことおんぶの専門家の養成をする理由とは
ディディモス(DIDYMOS)は、1972年に創業したドイツ発祥の抱っこ紐ブランドでベビーラップの老舗として世界中で広く知られています。日本には2005年に上陸し、多くのパパ・ママから支持を受けています。
ディディモス製品を日本で販売している株式会社オンフィリアは、単に製品の販売だけでなく「抱っことおんぶの専門家」の育成にも力を注いでいます。ディディモス社製品のみならず、その他メーカーの抱っこ紐全般の使い方を学ぶ専門家を養成しているのは当社だけです。
近年は、様々なタイプの抱っこ紐が増えており、ネットで情報はたくさん溢れている反面、抱っこ紐の選び方が分らない、抱っこの悩みが解決できない、負担が大きくしんどいと感じている養育者が沢山います。
親子の抱っこやおんぶの悩みにより幅広く寄り添い、サポートするアドバイザーを育成することを目的として、2016年より困りごとを抱えている養育者をサポートする取り組みを始めました。
近年はオンライン学習やデジタル教材の充実化により、地方にいる人、子育て中の人、本業と兼務で受講したい人に優しい学習スタイルを整え、助産師を中心に全国各地の医療従事者が受講しています。
このストーリーでは、抱っことおんぶの専門家を育成する「ベビーウェアリングアドバイザー養成講座」を立ち上げた経緯と開発者の想いについてお伝えします。
赤ちゃんと一体になれるベビーラップの誕生
1971年当時のドイツでは、日常生活のなかで抱っこ紐を使う文化がありませんでした。子育てにはベビーカーを使用するのが一般的でした。そのような時代、エリカ・ホフマンは南米からのお土産にもらった一枚布を使って子どもを抱き、上の子2人と双子の4人の育児をしました。
布を使って赤ちゃんを抱っこしながら街を散歩するエリカの様子がドイツの新聞や週刊誌に取り上げられると、国中から問い合わせが殺到するようになりました。当初、我が双子のために使用するつもりの布でしたが、同じ悩みを持つ親達の役に立てるならと、エリカは試行錯誤します。こうして1972年、世界初の「ベビーラップ」が製品化され、DIDYMOS社が誕生します。
ドイツ社会の子育てに関する考えを変えるために、ベビーウェアリング研究がスタート
当時のドイツ社会では、抱っこやおんぶに対する否定的な考え方がまだ根強かったが、ベビーラップの効果に着目した専門家は多く存在しました。1980年代より整形外科医、小児科医、動物行動学者などによる抱っこの効果や正しい抱っこ姿勢に関する研究が進められてきました。
助産師、マスコミ、そして何よりディディモス愛用者たちを通じて、抱っこのメリットは次第にドイツ社会に浸透し、ベビーラップが普及していきます。
1980年代中頃には、赤ちゃんを快適な「M字の姿勢」でぴったり密着させて抱っこすることを英語圏で「ベビーウェアリング」と呼ぶようになり、ベビーラップやスリングなどで赤ちゃんを身にまといながら日常生活を楽しむ親の姿が益々増えてきました。
さらに、養育者と赤ちゃんに快適な抱っこの仕方やベビーラップの着用方法を伝えるための専門家の育成が始まります。1997年には、世界初の本格的な「抱っこやおんぶの専門家」を育成する学校である「トラーゲシュレ」(抱っこの学校)がドイツで設立され、科学的なエビデンスに基づいたベビーウェアリング理論が教授されました。
この考え方はドイツからヨーロッパ他国、北米、南米、アジアなどに広まり、ベビーラップだけでなく様々な抱っこ紐やおんぶ紐の選び方と使い方を専門的に教える「ベビーウェアリング・コンサルタント」が増えていきました。
さらに、2000年代からは「ベビーウェアリングのプロフェッショナル向けの学術集会」が世界各地で開催され、最新の研究が発表される場として国際的にも重要性を増しています。
抱っこで赤ちゃんを甘やかすな』という考えが一般的だったドイツでは、母親が本能的に抱っこしたくても、周りから『抱き癖がつく』と言われ、愛着育児をする自信を持ちづらい背景がありました。ドイツ社会の子育てに関する考えを変えるには、様々な検証を行い、抱っこの効果を証明する、学術的なエビデンスが必要でした。そのため、ドイツはベビーウェアリング研究の先進国となったのです。とオンフィリアの代表、今成ディナは語ります。
ディディモスのベビーラップで娘を抱っこしながら家事ができるようになったことが、日本上陸のきっかけに
ドイツ生まれの今成は、2000年に神戸に移住し、2003年に長女を出産した際、我が子は日本の子育てスタイルで育てたいと決心します。今成自身は赤ちゃんの頃にあまり抱っこをされず、母親とのスキンシップが少ない伝統的なドイツのスタイルで育ちました。だからこそ、自分の子どもは母乳育児や抱っこ、添い寝など、日本の伝統的な子育て方法を取り入れたいと考えました。
しかし、当時の日本では、短時間のお出かけ用に設計された抱っこ紐が主流であり、ベビーウェアリングに適した商品がほとんどありませんでした。また、周りに手伝ってくれる家族のサポートがなく、日中は娘と2人きりでした。娘が抱っこを求めるたびに家事が滞り、ストレスが溜まる日々で、子育ては想像していたものと違いました。
そんな状況の中、ドイツにいる助産師の姉からの紹介でディディモスのベビーラップに出会います。長い一枚布の装着は、2〜3回巻いてみるとすぐにコツがつかめました。このベビーラップを使い始めると、娘がぴったりと密着し、安心を感じるようになり、泣くことが少なくなりました。自分自身も両手が自由になり、家事ができるようになりました。お出かけもしやすくなったこともあり、これまでにない解放感を味わいました。
そしてこのベビーラップは、育児や授乳の相談でお世話になった助産師にもとても好評でした。助産師は「この抱っこバンドを日本で広めなさい!」と強く勧めてくれたのでした。
自身の子育てに使うだけのつもりでしたが、このことがベビーラップを日本に広めるきっかけとなります。
そして、第2子の出産とほぼ同時にディディモスの日本代理店を設立し、輸入販売を開始しました。
安全で快適な抱っこの仕方を学ぶ場を提供するべく、日本でもベビーウェアリング・アドバイザーの養成をスタート
日本は長い間、おんぶ文化が根付いており、添い寝や母乳育児も一般的で、愛着育児が日常的に行われています。2000年代には海外からスリング、ベビーラップ、バックル式の抱っこ紐などが日本に導入され、抱っこ紐の選択肢が増えました。その結果、抱っこ紐の使用率は非常に高く、新米ママの約87%が抱っこ紐を購入しているというデータもあります。(2020年マクロミル調べ)
しかし、抱っこ紐の多様性が増した反面、どの抱っこ紐を選ぶべきかを判断するのが難しいと感じる人も増えています。現状では、取扱説明書をよく確認して抱っこ紐を正しく使っている人は少なく、抱っこ紐が体格に合っていない、装着がゆるすぎて赤ちゃんが快適な姿勢を取れない、事故や怖い経験(ヒヤリハット)など、抱っこに関する悩みが多く存在しています。
このような状況から、赤ちゃんにも大人にも安全で快適な抱っこの仕方を学ぶ場を日本でも提供することを、今成ディナは急務として捉えました。
特に、ディディモスのベビーラップを愛用するユーザーから、「ディディモスのベビーラップの快適さをもっと多くの人に伝えたいので、抱っこの理論や装着方法を専門的に学べる場を提供してほしい」という要望が多く寄せられるようになりました。これを受けて「抱っことおんぶの専門家」を育成するプロジェクトが立ち上げられました。
子育てに自信を持てるような、専門的に育児支援を目的とする幅広いカリキュラム
初期の養成講座では、ベビーラップ愛用者を対象に、主に「ベビーラップの巻き方」と「ベビーウェアリング理論(赤ちゃんの生理学的な条件)」を学ぶことを目的としたカリキュラムが組まれました。
しかし、2017年にディディモスから新たな抱っこ紐タイプである「リングスリング」や布製のキャリータイプの抱っこ紐が発売されたことを契機に、養成講座の内容が大幅に進化しました。抱っこ紐の種類や、養育者の悩みや要望に合わせた相談にも対応できる内容へと発展し、より「一人一人の親子のニーズを満たす専門的なサポート」に焦点を当てたものになりました。
この新しい講座内容は、子育てがより快適になることや養育者が育児に自信を持てるようになることを目指した、エンパワーメントを目的としています。アドバイザーは上から目線の指導ではなく「子育てのパートナー」として、養育者をサポートする役割を果たすことを学びます。養育者の自主性を尊重し、選択肢を提供し、否定しない支援の仕方や、養育者に自信を持たせる言葉遣いなど、抱っこ紐の使い方を伝えるだけにとどまらず、育児支援を専門的に学ぶ幅広いカリキュラムに発展しています。
素手抱っこの実技 赤ちゃんの快適な縦抱きを練習する
2019年からは、赤ちゃんのニーズや成長に合わせた相談が増加してきたため、赤ちゃんの成長と発達段階に関する学習もカリキュラムに組み込まれました。さらに、2021年からは他メーカーの抱っこ紐に関する単元を導入し、様々なメーカーの抱っこ紐をカテゴリーごとに分類し、その特徴や装着方法、調整方法、そして伝え方を学ぶ単元が追加されます。これにより、アドバイザーは単一の製品やメーカーに限らず、市場で入手可能な様々な抱っこ紐について知識とスキルを提供し、養育者の多様なニーズに適切に対応できるようになります。
さらに、2020年には新型コロナウイルスの影響により、完全オンライン対応のカリキュラムや専用教材が開発され、講座の内容とスタイルが大幅に変更されました。
抱っこ紐の実技 ベビーラップの巻き方を学ぶ
講座の内容を全面的に見直す中で目指したのは「初心者でもスキルを確実に身に付けて深い学び」ができること
初回の養成講座は、1日講座をトライアル(参加費無料)で始め、午前中は抱っこの理論、午後は実技というカリキュラムでした。対象者はベビーラップの巻き方に慣れている愛用者だったとはいえ、時間が不足し、巻き方の実技を一通り確認したのみで時間は終了してしまいました。時間の制約により、実技の細部にまで深く踏み込むことが難しかった経験を通じて、カリキュラムの改善点をより正確に把握し、講座プログラムを練り直しました。そしてその後は、3日間の対面講座として充実した講座内容に定着します。
カリキュラムを3日間に拡充することは、アドバイザー養成講座の充実にとって望ましい進化でした。3日間の講座を設けることで、受講者にとってはより深い知識とスキルを習得する機会が増え、実技や実践により多くの時間を割くことができます。これにより、将来的に親子をサポートする際により自信を持ち、的確なアドバイスができる技能とコミュニケーション能力を身につけることができるようになりました。
しかし、2020年のコロナ禍は、多くの教育プログラムやトレーニングに大きな変化をもたらしました。特に対面講座からオンライン講座への移行は、新たな課題が浮き彫りになりました。
オンライン講座においては、実技や実践の伝達が難しくなることがあり、いつもより多くの時間がかかります。そしてオンライン環境では、受講者の集中力や参加度を維持するために、講義の途中に質問やディスカッションのセッションを挿入するなどの工夫が必要でした。実技や実習の部分は自宅学習やオンデマンド教材を活用しました。リアルタイムのフィードバックや質問応答セッションもオンラインで実施し、参加者同士のコミュニケーションを促進する手段として活用できるようにしました。
養成講座がオンラインにシフトする際には、試行錯誤と準備が求められますが、その結果、遠隔地からの受講者へのアクセスを向上させ、より多くの人々に価値ある講座を提供できる可能性が広がりました。
他団体のセミナーも含めた、6時間以上の勉強会の受講が資格更新に必要
多くの認定資格を付与している団体では、更新料の納付で資格が更新されるのに対して、ディディモスでは、年間6時間以上の勉強会の受講を条件にしています。これにより、アドバイザーは常に最新の情報とベストな方法を学び、養育者に最適なサポートを提供できるようになります。
また、無料セミナーや他団体のセミナー・勉強会の受講が更新条件に含まれる柔軟性は、アドバイザーが多様な情報源から学び、様々な視点を取り入れるのに役立ちます。
加えて、アドバイザーがスキルと知識の向上にコミットし続けることは、子育て支援の質を向上させ、親子の時間を支える重要な役割を果たします。養育者は、ディディモスのアドバイザーが常に最善の情報を提供し、高い専門知識を持っていることに安心感を得られることでしょう。
こうしたアドバイザー制度に対して、今成は「アドバイザーは、子育て支援において素晴らしい貢献をしています。他の子育て支援もそうですが、その仕事の価値が社会的にもっと評価されるようになれば望ましいです」と語ります。
日本でも出産準備に抱っこ紐のサポートを受けることが一般的になることで、快適な子育てのスタートができるように
抱っこは子育ての一環として非常に日常的に行われており、一日数時間も続くことがあります。 しかし、赤ちゃんは成長と共に重くなり、長時間の素手抱っこはもとより、身体に合わない抱っこ紐の使用を続けると、大人の身体に負担をかけることがあります。「抱っこ紐相談を1回でも受ければ、親子にぴったりフィットする抱っこ紐に出会え、毎日の子育てが夢のように変わります。それなのに、日本ではその出費を惜しむ傾向があります。」と今成が見解を示します。
一方、ドイツでは出産準備の一環として夫婦で抱っこの講習を受けることが一般的であり、抱っこ紐を購入する前に専門家からアドバイスを受ける習慣が根付いています。これにより、最初から身体に合った抱っこ紐を選び、産後の負担を軽減しながら快適な子育てを始めることができます。
抱っこ紐講習を出産準備の一環として行うアプローチが日本でも一般的になれば、養育者が抱っこ紐を選ぶ際により適切な選択ができ、抱っこ紐を正しく使うことができるようになります。赤ちゃんの「抱っこして」という要求に応えながら、養育者の身体にも負担をかけずに子育てをスタートできるでしょう。
早い段階から抱っこ紐について専門家によるアドバイスを受け、それを正しく活用することは、子育ての喜びを増やし、赤ちゃんとの絆を深めるための貴重な手段となります。
助産師教育を通じて母親たちに正しい情報を、早い段階から継続的に提供していきたい
ネット上にはさまざまな情報が溢れており、その中には正確でない情報も含まれています。どれを信用してよいのか悩み、情報に振り回される母親も少なくありません。助産師は、子どもを授かった際に必ず女性と接する専門職です。高齢少子化の影響で、お産のお手伝いから産後育児の保健指導や産後ケアを行う事業へとシフトする助産師が増えている中「抱っこ紐相談」も要求されるケースが急増しています。
助産師が正しいエビデンスに基づいた知識を持ち、妊産褥婦に抱っこの方法や抱っこ紐の選び方・使い方を教育・アドバイスできるようになることで、産後の抱っこや抱っこ紐に関連して途方に暮れる女性を減らし、より良い育児を目指す女性の自信と安心感を支えられるのだと考えます。
他社製品も取り扱うことで、助産師をはじめとする子育て支援者を幅広くサポート
高知県の助産師で日本ベビーウェアリング協会の理事も務める森木由美子さんは
「分娩数の減少により産後ケアの事業が益々重要になっており、産後ケアの期間も生後1年以内に長くなっています。抱っこ紐の悩みを抱えている人が多いため、抱っこ紐の選び方相談や調整の需要は非常に高くなっています。特に「赤ちゃんの泣きへの対応」に苦戦している方は多く、快適なベビーウェアリングを実践することで赤ちゃんが落ち着き、母親の自信へ繋がるというケースを、地域の助産師として多く経験してきました」と言います。
ディディモスの養成講座のカリキュラムの中で、他社商品の抱っこ紐も取り扱うことによって、助産師が抱っこ紐の選び方から調整方法まで、幅広く多くの養育者をサポートできるようになります。
また、商品の使い方だけではなく、発達段階別の抱っこの仕方をはじめ、双子の抱っこや特別な支援を必要とする親子へのサポートと言った専門的な勉強できる場も設けているため、助産師が抱っこ相談を通じて有意義な支援を継続的に提供できるようになります。
助産師の教育課程に「抱っこ」や「ベビーウェアリング」の授業を実現
実際の育児行動の中では「抱っこ」が最も長時間必要となってきますが、助産師教育機関では、「抱っこ」について専門職から学ぶ機会はほとんどありません。抱っこで子育てが辛くなった母親たちの悩みに寄り添い、楽しい育児のサポートができるように抱っこの重要性や抱っこ紐の種類の基礎について学べる機会をすべての学生さんに提供できることが望ましいと考えます。
快適なベビーウェアリングによる妊産褥婦の支援にいち早く着目したのは、2023年度より日本助産師会会長に就任された神戸看護大学高田昌代教授です。大学院博士前期課程ウィメンズヘルス看護・助産学実践コースの子育て支援論の中で2021年よりベビーウェアリング・アドバイザーを講師として迎え、大学院生がベビーウェアリングの理論や抱っこ紐体験の講義を受講します。
抱っこの講義を大学院の授業に導入した経緯について高田昌代教授は次のように語ります。
「教育は、種蒔きです。学生時代に多くのことに触れ、学ぶことが必要だと考えています。(...) 助産師学生が正しく快適な抱っこの方法や抱っこ紐の種類などを学ぶことは、 学生が助産師になった時に、自分の学生時代の学びや経験をもとに、お母さんたちの子育てに寄り添える助産師として、具体的な提案ができるのは大事だと思ったことですね。」
ベビーラップの老舗、そして抱っこ紐を扱う企業として今成は
「少子化が加速するなか、助産学の学生に向けた情報発信や体験の場を他の教育機関にも広げて、安全で快適な抱っこに導く専門職の教育を充実させることを企業の社会的責任として捉えています」と語ります
専門知識を持つ助産師が養育者に対して、抱っこや抱っこ紐選びのサポートを提供することは、育児支援において非常に重要です。ベビーウェアリングの養成講座や勉強会の開催を通じて、知識の普及を続けることで、親子の健康と絆を支え、子育ての喜びを共有する手助けができるでしょう。これにより、これからの養育者がより自信を持って子育てを楽しむことができるようになります。今後の取り組みが、地域社会全体にポジティブな影響をもたらすことを願っています。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000126443.html
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