「現場で使える技術」にフォーカスしたプログラミングスクールのLINEヤフーテックアカデミー誕生秘話。社内企画からスタートし、人事部門が事業立ち上げを成功させた裏側。
日本のIT人材不足という課題に対して、Yahoo! JAPANは2022年11月からオンラインプログラミングスクールの新サービス「Yahoo!テックアカデミー※(現:LINEヤフーテックアカデミー)」を運営しています。サービス公開3日間で定員100名を大幅に上回る申し込みがあり、急きょ定員上限を140名に増枠するという大盛況なスタートを切りました。
このサービスが生まれたきっかけはインターネットサービスの企業老舗であるヤフーが日本のIT人材不足のために何かしたいという熱い思いから。その詳細をキーパーソンの話をたどりながら紹介します。
※:2023年10月にヤフー株式会社やLINE株式会社などのグループ会社による再編を経てLINEヤフー株式会社が発足したことに伴い、Yahoo!テックアカデミーもLINEヤフーテックアカデミーと改称しましたが、記事では合併前の出来事を当時の社名、サービス名称で記載しています。
・IT人材不足の課題解決へ「Yahoo!テックアカデミー」を開設 - プレスリリース
https://about.yahoo.co.jp/pr/release/2022/11/30a/
・受講生の定員上限を100名から140名に増枠 - プレスリリース
https://about.yahoo.co.jp/pr/release/2022/12/09a/
2023年10月12日にリニューアルしたLINEヤフーテックアカデミーのウェブサイト
解決したい課題は日本のIT人材不足
最近はDXという言葉を新聞やテレビで目にする機会が増えてきましたが、各企業にとって日々の業務をデジタル技術によって大きく変革させるDXはとても重要で、業務の効率化のみならず新たな価値の創造においても重要な取り組みと言っても過言ではありません。
DXを推進していくためにはIT技術の活用がベースとなるため、ITを使いこなすためのプログラマーやプロジェクトマネジャーといったIT人材の活躍が必要不可欠です。ですが、今の日本ではIT人材が圧倒的に不足しており、経済産業省の調査によると2030年には最大で約79万人のIT人材が不足するという観測もあるほどです。
ヤフーは「情報技術のチカラで、日本をもっと便利に」というミッションを掲げ、世の中のあらゆる課題をITの力を使って解決することを目指してさまざまな領域で事業を展開しています。それゆえ、日本のIT人材不足はIT業界のみならず、日本の全ての産業の成長を阻害する可能性のある大きな課題であると感じていました。
・デジタル人材の育成 – 経済産業省
https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/jinzai/index.html
新規事業コンテスト「未来妄想会議」をきっかけに、IT人材不足の課題解決アクションがスタート
とはいえ、インターネットのサービスを提供するヤフーであってもIT人材不足解消のための新たな事業を立ち上げるのは簡単なことではありません。約100のサービスを提供する自社内においても類似の事業が存在していないため、既存事業の延長線上ではなく、全く新たな取り組みが必要とされました。
そんな中、2022年に社内で「未来妄想会議」という制度がスタート。既存の事業にとらわれることなく未来のヤフーの姿を思い浮かべて、世の中の課題に対してどういったサービスを提供すればいいか事業プランをまとめるという、全社員誰もが応募できる新規事業コンテストです。
この制度から実際に事業化されたのがYahoo!テックアカデミーでした。この未来妄想会議に事業案をエントリーした稲津に話を聞いてみました。
コマースカンパニー コマースCTO コマース技術本部 コマースプロダクト推進部 部長 稲津敬太
私も前職でシステムエンジニアやセミナー講師などをやってきていたこともあり、各社のIT人材不足を肌で感じていました。事業の成長のためにやりたいことがあっても、IT投資を推進できる人材がいないことでせっかくの機会を逸してしまっている企業を数多く目にしてきて、こういった機会損失を解決するために、まずはこれからのDXの時代を支えるIT人材を育成することが急務ではないかと考えるようになりました。
その後、私はヤフーに転職してプロダクト開発の現場に長年携わっていたのですが、自社サービスの開発・運営ノウハウがとても豊富であることに気づき、このノウハウを公開することで社会のお役に立てるのではないかという思いが募っていきました。
そんな中、社内で未来妄想会議という事業コンテストが行われることを知って、これまで思い描いていたプランを形にするチャンスと思いました。同じ課題認識を持つ仲間たちと協力して事業案を提出したところ、嬉しいことに事業化の対象として選定いただくことができました。
実際にサービスを作るのは人事部門。 IT人材の不足に対して最も感度が高いからこそ、適切なアプローチが可能だった。
新規事業をスタートさせるとなると、まずは担当部門を決めなければなりません。今回のようにお客様に提供するサービスであれば、日頃からサービスを運営している事業部門が担当するのが普通です。しかし事業の推進役として白羽の矢が立ったのは、なんと人事部門でした。
今回の事業は日本のIT人材不足という課題の解決を目指すもの。人事部門は社内外問わず多くのIT人材と接しているがゆえに、この課題に対して社内で最も感度が高い部門の一つです。新規事業を推進するためにはコアとなる課題を正しく認識して、課題を真正面に捉えたアプローチをしていくことが何より大切であるため、サービス運営のノウハウよりも課題認識に重きをおいてのアサインでした。
この時の様子を人事部門の責任者の湯川に聞いてみました。
人事総務グループ 人事総務統括本部 統括本部長 湯川高康
この事業を人事部門で推進すると聞いたときは驚きました。人事部門のメンバーはこれまでサービスを運営した経験もなければ、事業計画の作成や集客などの経験もないので不安もありました。ですが、私たちが普段の人事業務を通じてIT人材不足をリアルに実感しているというのは確かですし、なんとかしたいとい気持ちもありましたので、この事業にコミットしてやりきろうと覚悟を決めました。
これからITスキルを身につけようとしている人にとって事業会社の生きた技術を学べるのは大きなメリットだと思います。単純に技術だけを学ぶのと「この技術はこういったシーンで使われる」ということがわかって学ぶのでは吸収できることが大きく変わってきます。
とはいえ、人事部門だけではサービスは作れません。ITスキルを身につけるための講座を提供する事業ですから開発部門の協力は必要不可欠です。そこで真っ先に開発部門に協力を依頼したところ、IT人材不足解消の課題解決という意義に共感して全面的に協力してもらえることになりました。
大切なのはヤフーならではの価値を提供すること
事業の担当部門が決まり、部門を横断した協力体制が整ったところで、いよいよ事業案をサービス化するための具体的なアクションが始まりました。講座提供や受講管理といったプログラミングスクールの運営そのものは、「テックアカデミー」という名称でサービスを提供しているキラメックス株式会社と協業してシステムを構築していくこととしました。ですが、大切なのはヤフーがヤフーの名前でプログラミングスクールを提供する意味を作ることであり、ITスキルを学ぼうとしているお客様に「ヤフーの講座だから申し込もう」と思ってもらうことです。
いかにしてヤフーならではの価値を創出するか開発部門と協議を重ねた結果、カリキュラムの内容にヤフーで普段使われている技術や開発スタイルを盛り込み、定期的にヤフーの現役エンジニアと1on1で相談できる機会を設けることしました。
当時の様子を開発部門の責任者の冨川に話を聞いてみました。
SIグループ インフラ統括本部 統括本部長 冨川修広
IT技術は時代によって求められるものが変わるため、その時々にマッチしたものを身につけていくことが大切です。それゆえ、私たちがサービスの現場で使っているリアルな技術を伝えていけるようにしたいと考えてカリキュラムを設計しました。
今年の10月にヤフーとLINEが合併したことで、これまでヤフーにはなかったLINEのメッセンジャーなど社内で扱う技術の幅が広がったため、今後は講座で伝えられることの幅をもっともっと広げていきたいと思います。
初回は3日で申込定員に達する大盛況。受講生の変化から感じる社会的意義
ヤフーの技術を伝えられるプログラミングスクールを作ろうとさまざまな部門の協力で立ち上げたYahoo!テックアカデミー、一般に公開されたのは2022年11月のこと。世の中では多くの事業者がプログラミングスクールのサービスを提供している中、後発のYahoo!テックアカデミーがどこまで価値を認識してもらえるのか未知数でした。
そこで当初は市場性を確認する目的で定員を100名に設定して受講生の募集を行ってみたところ、募集開始たった3日で申し込みが定員の100名を突破。急きょ定員を140名まで増枠することに。想像を大きく上回る反響でした。
この時の様子を事業責任者の佐野に聞いてみました。
人事総務グループ 人事総務統括本部 人材開発・採用本部 LINEヤフーテックアカデミー推進室 室長 佐野ひかり
去年11月のサービス公開時は想像以上の応募をいただき、メンバーみんな驚きを隠しきれませんでした。お客様がなぜこのサービスを選んでくださったのか正しく理解するために、受講生へのアンケートや市場調査などを行ったところ、最も多く回答いただいたのが「ヤフーが提供しているから」であり、ヤフーがIT企業としてどれだけ多くの方に認識され、信頼されているかあらためて実感できました。
この時のフィードバックを元に講座内容もブラッシュアップして、10月12日からいよいよ本格展開のスタートを切れました。まずは前回ご好評いただいたウェブアプリ開発を中心としたコースから開始しますが、今後もみなさんのニーズに沿ったさまざまな講座を企画中です。ご期待ください。
受講生インタビュー – LINEヤフーテックアカデミー
https://yj-techacademy.yahoo.co.jp/interview/index.html
日本のIT人材不足解決に向けて、LINEヤフーならではのアプローチを続けていきたい
日本のIT人材不足という課題をなんとかしたいという熱い思いからスタートしたヤフー版オンラインプログラミングスクール事業のYahoo!テックアカデミー。今年の10月からヤフーはLINEと合併してLINEヤフー株式会社となったことに伴い、Yahoo!テックアカデミーもLINEヤフーテックアカデミーと名を変え、講座内容もブラッシュアップして本格展開をスタートしました。今後はLINEヤフーの名の通りLINEとヤフー双方の技術ノウハウを提供できるように講座をどんどんブラッシュアップしながら、「現場で使えるリアルな技術」を提供していきたいと考えています。
LINEヤフーテックアカデミー 第2期募集開始 – プレスリリース
https://www.lycorp.co.jp/ja/news/release/000866/
コース一覧 – LINEヤフーテックアカデミー
https://ly-academy.yahoo.co.jp/tech/
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