重工業向けSaaS「Proceedクラウド」開発の道のり。労働集約的な現場をデータで変え、人の労働価値を最大へ
株式会社東京ファクトリーは重工業の現場向けSaaS「Proceedクラウド」の開発を2020年4月の創業当初より行っています。直近で世界30カ国での利用が進むなどグローバルでの生産現場の可視化を実現するサービスとして成長してきました。
「Proceedクラウド」はこれまで現場であまり有効活用されていなかった写真データを活用することで、現場情報のデータベースを構築します。データベースの構築により現場の可視化を通したQCD改善、設備の安定稼働を行うことができるサービスです。
今回のストーリーでは、東京ファクトリーの創業者であり現在もプロダクトマネジメントを行っている池より、開発の背景とプロダクトの提供を通して実現したい世界観についてご紹介します。
プロダクト開発の出発点は、重工業の生産現場で感じた課題
池:私は2013年に川崎重工業に入社し、兵庫県の加古川にある工場で産業用のボイラを製造する生産技術エンジニアとして社会人としてのキャリアをスタートしました。
ボイラの中でも産業用や事業用に用いられる完成すれば数十メートルの高さにもなるようなものや、工場で完成品として出荷する際には20mほどの高さにもなるF-LNG用のボイラなどを担当していました。
製造工程のQCDS(品質・コスト・納期・安全)を満足させることをミッションに、生産の工程計画立案や製造予算管理はもちろん、品質確認や納期のフォローアップのために毎日半分以上の時間は工場で奔走していました。
入社4年目からは、日本国内だけでなく、海外の合弁会社や外注先での日本顧客向けの製作指導やSV(スーパーバイザー)業務などにも従事していたのですが、SVとしては部材を工場に入荷して製品を製造し、完成した製品を港でフォワーダー(貨物利用運送事業者)に引き渡すまで一連の業務も担当することができ、大きなやりがいを感じながら仕事をさせていただきました。
エンジニアとして充実した日々を送っていた一方で、以下の「重工業の生産現場は人が担う」という理由から重工業のオペレーションにはまだまだ改善を行いさらなる競争力を獲得する余地があるのではないかとも感じていました。
- 重工業の生産現場は製品が巨大であることや製造ロット数が少ないことから、自動車や家電製品のようにライン生産を採用してファクトリーオートメーションが進んでいる業態と比較して"人"が生産を担っている
- 人が生産を担うので、システムを導入し定量化されたデータを取得することが難しく、生産実績の記録は”エクセルで作成し印刷した工程表”や”現場の進捗管理板”に手書きで行ったり、現場の状況確認記録はデジタルカメラで撮影して実施するなどで対処している
現場で埋もれていたデータを活用することで、現場のレベルを底上げをしていく
川崎重工業に約4年半務めた後にコンサルティング会社にて製造業やエネルギー企業のDXやデジタルを活用した業務改革といった案件に従事していく中で、他産業と比較したときに改めて重工業の生産現場デジタル化の余地が大きくあることを実感しました。
特に自身の経験を棚卸していくなかで製造現場向けのサービスが複数アイデアとして出てきたのですが、その中でも特に現場で撮影はされるが個々人のパソコンに保存されている写真に着目して現在のProceedクラウドの原型となるアイデアができてきました。
現場でやり取りされるデータでまだまだ活用されていないデータは沢山あります。その中でも写真データというのは定型業務が少ない現場においては、トレーサビリティ確保のために非常に重要です。
Proceedクラウドは簡単に述べると、写真を部材×工程という2軸のマトリックスで表現することで写真の検索性を上げるだけでなく、遠隔地の進捗管理や不具合発生時の記録確認を迅速にするサービスです。
私は海外の現場で製作指導をしているときに、一方的に技術を国外に伝達していることに違和感を感じていました。Proceedクラウドのようなツールを活用し海外で製品を製造したときの情報のデータベースを構築することができると、一方的な技術の伝達を防ぐだけでなくその情報を新製品の設計に活かすなど、さらなるものづくり力の強化に繋げるとができると考えています。
世界30カ国で利用されるサービスへ成長
2020年4月に会社を設立、2021年2月にプロダクトをリリースしたのですが、現在は日系企業の海外拠点や外注先の確認などの目的で世界30カ国でご活用いただくサービスに成長しています。
当初は重工業の生産現場での活用を想定していたサービスですが、展示会などに出展し様々な業界の方とお話をするなかで、写真を活用することで自分たちが気づいていなかった様々な課題の解決ができることが明らかになってきました。直近では海運業界やプラントメンテナンス業界でのProceedクラウドの活用が広がってきています。
現場で働く人の労働価値の最大化に向けて、これまで使われていなかったデータを活用
日本の製造業の従事者数はこの20年間で150万人も減少しているなかで、労働人口の減少をこれまではベテラン社員の再雇用に加えてファクトリーオートメーション化の推進で乗り越えてきました。
しかし、どこまでデジタル化が進んでも、ものづくりから完全に人の関わりを無くすことはできないと考えています。
経済産業省「2023年版ものづくり白書」
我々は現場で活用されてこなかったデータを「クラウド」や「モバイル」といったテクノロジーの力を駆使し活用可能にすることで、人の労働価値の最大化を実現し、製造業の未来に貢献していきたいと考えています。
是非、今後の東京ファクトリーの取組にご期待ください。
■Proceed クラウド サービスページ:https://proceed-cloud.com/
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