1300年続く伝統工芸「桐生織」で感動を届ける。コロナ禍のピンチをチャンスに変えたギフト商品「ハンカチドール」の開発秘話
株式会社i4は、1,300年続く桐生市の伝統工芸である桐生織(きりゅうおり)を始めとした繊維製品の企画、製造、販売を行う2017年に設立したベンチャー企業です。
「伝統」と「デジタル」をかけ合わせ、ファッショナブルでワクワクすることを創造していくことがパーパスです。
コロナ禍により人と人が距離をとって暮らす日々が始まった2020年、桐生織で作られたハンカチとデジタルメッセージ、写真、動画が送れるギフト商品「ハンカチドール」は、人々が心を通わせて得られる感動と喜びで幸せな時間を過ごして欲しいという想いから開発されました。
販売開始から3年が経ち、心を贈ることにスポットを当てたハンカチドールは多くのお客様から好評を得ております。
一枚のハンカチを人形のように見立て、プリンセスが花束を携えて贈り主の思いを感動的に届けるコンセプトに至るまでの秘話をお伝えします。
桐生織とデジタルの組み合わせで好業績も、コロナ禍で一気にどん底に
株式会社i4は、桐生市の繊維産業で中核となる団体、桐生織物協同組合にて23年間営業職に従事した私、石橋が、2014年に独立し3年間フリーランスで活動した後、2017年に法人化して立ち上げたベンチャー企業です。
伝統産業とデジタルテクノロジーをミックスし、産地の工場と消費者を直接結びつけるビジネスモデルを展開しており、具体的には、自社Webサイト「衣都の工房(いとのこうぼう)」にて企業、団体、一般ユーザーのお客様のオリジナルデザインによるネクタイやスカーフ、マフラーの製作を受注し、桐生市内の協力工場で生産して納めております。
創業から順調に業績を伸ばし、新たな繊維事業にも着手しながら活動の幅を広げ、2019年度の決算では2017年に続く2番目の売上と利益を上げるなど、着実に理想とするビジネスの形を描いておりました。
コロナ禍になるまでは、、、
2020年4月、未知のウィルスによる未曾有の事態に社会が混乱し、緊急事態宣言の発令とともに瞬く間に問い合わせが激減し、ともなって受注も減って行きました。突然背中を押されて崖から海に突き落とされた感じです。今までの流れが途絶え、世の中がひっくり返ったようです。
この年の決算では売上が40%まで落ち込み、黒字経営から一気に赤字に陥りました。
石橋 進(いしばし すすむ)
群馬県桐生市出身。平成3年桐生織物協同組合入社。23年に渡り桐生市の繊維製品販売に従事。共販部長代理歴任。2014年2月退職の後、「i4(アイフォー)」を設立しフリーランスで活動開始。2017年4月株式会社i4を設立、代表取締役就任。繊維産地のベンチャー企業として、伝統産業にイノベーションを起こすビジネスを繰り広げる。
コロナ禍のピンチから誕生したハンカチギフトの新プロジェクト
連日報道される医療従事者の方々の懸命な様子や、様々な人が自分の出来ることで社会に貢献していこうという姿勢に胸が熱くなりながらも、自分が何も出来ないもどかしさを感じながら鬱屈とした日々を過ごしてました。
そんなある日、ふとテレビを見ると病院の屋上でバイオリンを奏でる女性の映像が流れてきました。美しい音色に耳を奪われていると、医療従事者や患者の方々に祈りをこめた演奏であることが伝えられました。音楽の力で人々を応援する姿に感動し、私もファッションの力で何か出来ないかと考えるようになり、気持ちが前向きになった気がしました。
弊社はネクタイ、スカーフ、バッグ、ハンカチといったファッション雑貨を製作しており、お客様がギフトに利用されるシーンもあったため、コロナ禍で距離をとって暮らす世の中で心と心を繋ぐお手伝いなら出来るのではないかと考えはじめました。
仕事も減り、考える時間がたくさん出来るようになったのでスタッフとミーティングを重ねながら、ハンカチをギフト商品とする企画が進んでまいりました。そこにはハンカチを売るのではなく、思いを伝えるお手伝いをして世の中を明るくするんだという熱い想いが共有され、危機的な状況ではありましたが新しいブランド設計にワクワクしながら議論が進んでいきました。
ギフトハンカチ開発の転換点。1+1+1=10の価値追求
「箱を開けた瞬間、ワクワクが止まらない!」という商品コンセプトのもと、ギフトハンカチのファーストサンプルが出来上がりました。オルゴール式のギフトボックスにレースのハンカチ、可憐なドライフラワーのブーケとメッセージカード。上品で豪華な出来栄えに、私は満足して何度もしげしげと眺めながめ惚れ込んでました。
自慢のサンプルの感想をいろいろな人に聞いていたのですが、そんなある日、1人の人物が弊社を訪れてきました。彼は市内の団体職員の方で、私よりも一回り以上若いS君です。そのS君に「S君、これどう?これで行こうと思うんだけど、、、」と意見を求めたところ、「石橋さん、これじゃぁ売れないですよ!!」と衝撃のひとこと・・・。「ハンカチ、ドライフラワー、メッセージカードの1+1+1が3にしかなっていない!1+1+1が10にならないと・・・」「これだと単なる豪華なハンカチにしか見えないですよ、」とバッサリ、、、
その瞬間、心臓をわしづかみされたような衝撃が走りました!!実は私自身も何かが足りないといった心に引っかかったものがあったのですが、豪華なハンカチの出来栄えの良さにその部分をごまかしていたような感じがしていたからです。見事に私の本心を引きずり出してくれました。
商品コンセプトを1からやり直す決意をし、この日を境に計画が降り出しに戻りました。そして、そこから1+1+1が10になる商品アイデアを生み出す苦難の日々が始まりました。
ハンカチがプリンセスに変身。メッセージギフトの進化
四六時中ハンカチのアイデアを模索していたある朝、何気にイラストレーターでトルソー(洋服のディスプレイに使用される人形のマネキンのようなもの)を描いて印刷してみました。それにハンカチを着せてみたらどうかなぁ〜って感じで、そこには全く意図がなく、直感的にふと思って実践した行動でした。トルソーにハンカチを一周くるっと巻いてスカートのようにたくし上げ、腰にリボンを巻いてみました。
その人形風に巻いたハンカチをドライフラワーとともにギフトボックスに入れてみました。一人の女性スタッフに見せたら、「全然、響かない・・・」とクールな一言。やっぱなんか違うよなぁということで、そのまま作業机の上に置き去りになってしまいました。
ある日、リモートで仕事していた女性スタッフが久しぶりに出社しました。置き去りにされていた人形風に巻いたハンカチですが、最後に彼女の反応を見てから片付けようと思いました。
その日のミーティング、商品企画となると話は停滞し一気にムードが重くなります。議論が噛み合わず混沌とした時間が流れているときに、その彼女がスマホで何やら一生懸命検索してました。すると「こういうのどうですかねぇ〜」とお菓子を人形に見立てた写真を見せてくれました。「それじゃぁ、ハンカチを人形にしてみたらどうかなぁ?」と手元にあった人形風に巻いたハンカチを自立させてドライフラワーをブーケのようにして持たせてみました。すると興奮した感じで「これですよっ!!」「いい、いい!」と今まで重かった空気に一気に光が差し込んで、喝采とともに開放された雰囲気に包まれました。
人形風に巻いたハンカチを寝かして箱に収めると単なる人形のハンカチ。それを自立させることでハンカチがプリンセスとなり、一気に世界が動き出したのです。さらにドライフラワーのブーケを持たせることで一層デザイン性が向上し、何よりもメッセージ動画が再生されるQRコード付きのメッセージカードをプリンセスが大切にお届けに上がるといったストーリーが生まれました。
ハンカチに世界観とストーリーという新たな要素が加わり、それはもうハンカチギフトではなく、思いを伝えるメッセージギフトへと生まれ変わりました。
ユニークなギフトボックス開発。ハンカチドールを支える人々
こうしてハンカチドールとして商品開発が始まりましたが、ここで困った問題が持ち上がりました。それはギフトボックスです。
箱の製作は30年近くお付き合いのある桐生市内の製箱屋さんが協力してくれることになりましたが、人形のハンカチを自立させて収める前例のないギフトボックスづくりはどのように進めてよいか分かりません。私たちもギフトボックスの開発は初めてで全くノウハウがありません。
試行錯誤の末、まずはこちらからたたき台となるサンプルを手作りし、それをもとに試作を行って検証し、またサンプルを作る。この繰り返しで最終的に仕上げていく作業になりました。
こんな無理難題に対し製箱屋さんの社長さんは断ることなく、嫌な顔も一切見せず、むしろ自分ごとのように親身になって一緒に考えてくれました。このときの製箱屋さんの協力がなければ、ハンカチドールは誕生しませんでした。社長さんの男気には本当に感謝してます。
ハンカチドール配送テストが失敗?完成品の最終確認へ
やっとの思いで出来上がったハンカチドールのファーストサンプル。ようやく配送テストまで漕ぎ着けました。
ハンカチドールとドライフラワー、メッセージカードをセットした完成品を遠方に配送して戻してもらい、乱れや崩れなどがないか確認します。
遠方へ発送、受け取りのスケジュールを組み、いよいよテスト開始。ハンカチドールが無事に戻ってくることを祈りながら着荷日を迎え、無事に荷物を受け取りました。
心臓の鼓動が高鳴る中、「お願い!頼みますっ」と手を合わせダンボールを開封。中から現れたギフトボックスを慎重に取り出し、恐る恐る中を確認したところ「あ〜!ダメだった、、」とため息…。メッセージカードが落ちていたのです。2点の溝でメッセージカードを支える仕様だったのですが、そこが甘かったようです。
早速、製箱屋さんに行って問題点を打ち合わせしました。メッセージカードを支えるのに下側に受けを作れば大丈夫じゃないかということになり、もう一度試作をお願いしました。
ハンカチドールの公式デビューと地元産業の結束力
配送テストもクリアし、最終段階を経てハンカチドールは完成し、2020年12月10日自社サイト「ローズプードル」にてお披露目となりました。
リリース後は新聞、テレビ、ラジオに取り上げられ、ハンカチドールがたくさんの人たちの思いを繋ぐ架け橋となってます。現在は、おすわりドール、プリンセスハンカチ、サンリオの人気キャラクター「シナモロール」とコラボしたハンカチドールも誕生しました。
このハンカチドールのプロダクトは、ハンカチ、ギフトボックス、ドライフラワー、システム開発に至るまで全て桐生市内の企業と協業して作られており、地場産業の力を集結した商品です。ハンカチドールはお客様と桐生市の地場産業を繋ぐ架け橋にもなってます。ハンカチドールが思いを伝えるお手伝いをして世の中を明るくすることで桐生市の地場産業の活性にも繋がり、弊社のミッションである三方良しの精神を具現化します。
今日もハンカチドールのプリンセスがサプライズとともに喜びの花を咲かせ、世の中を幸せの香りで包み込みます。
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