多くの子ども達がかかえる口腔機能の問題を支援する場へ。歯科医院だけど”削る・抜く”をしない口腔機能発達支援センターの設立への想い。
愛知県常滑市にあるI Dental Clinicは初代開院1912年ごろと言われ100年を超える歴史ある歯科医院です。昭和のむし歯治療があふれていた時代に学び、4代目を受け継ぐ歯科医師井上敬介は使命として『この世から むし歯をなくす』を掲げ、予防歯科を本気で行っています。
令和の現在、子ども達のむし歯の数は減少しており、代わりに5人に4人は歯並びが悪いということが言われるようになりました。歯並びは口腔機能とのつながりが深く、発達発育にも影響します。子どもへの支援は親御さんも含めた子育ての支援でもあり、多くの方を支援したいという想いから2023年7月、むし歯治療は行わない、口腔機能発達支援センターをI Dental Clinic2階にオープンいたしました。
わたくしたちの歯科医院の理事長は歯科医師、院長と副院長は歯科衛生士です。予防歯科こそ歯科医師ではなく歯科衛生士が活躍するものだと井上の考えからです。歯を守ることに加え口腔機能不全も未然に防ぐという取り組みを歯科衛生士はじめ管理栄養士や保育士など多職種で作り上げています。
今回は、I Dental Clinic理事長で歯科医師の井上敬介と、院長である歯科衛生士の桑名亜季がセンターへの想いについて話をいたします。
左:院長 歯科衛生士 桑名 亜季
・2002年 愛知県歯科衛生専門学校卒業
・2022年 医療法人真稜会 I Dental Clinic院長
所属学会、資格
・口育士
中央:副院長 歯科衛生士 安井 あゆみ
・2007年 名古屋歯科医療専門学校卒業
所属学会、資格
・口育士
右:理事長 歯科医師 井上 敬介
・1997年 東京歯科大学卒業
・2007年 医療法人真稜会 後藤歯科医院院長
・2009年 医療法人真稜会 理事長
・2010年 医療法人真稜会 I Dental Clinic院長
・2022年 医療法人真稜会 I Dental Clinic理事長
所属学会
- 日本小児口腔発達学会、理事
- 日本補綴歯科学会
- 日本口腔インプラント学会
- 日本矯正歯科学会
- 日本小児歯科学会
- 日本睡眠歯科学会
- 日本顎咬合学会
- 日本小児呼吸学会
- 国際小児呼吸学会(CIPP)
本文(井上敬介)
生活に欠かせない歯科医療への貢献を目指して。技術の変化に伴って重要性が高まる予防治療
私たち井上家は、江戸時代から時計師を続けてきた家系です。手先が器用なこと、そして地味で細かい作業を緻密にこなす熱意が必要だったと思います。時計を扱う家業は10代ほど続いたそうです。明治時代に入り、西洋医学が日本に導入されると、初代井上眞平は時計師としての道を離れます。新たな職業としての歯科医師を選びました。時計師として身につけた技術を、歯科医療で活かそうと考えたのでしょう。思えば時計も歯科医療も人々の生活に不可欠です。眞平は専門学校へ入学しました。歯科である井上家の初代はこの井上眞平です。
眞平の決断は、後の世代に大きな影響を与え続けています。眞平以後わたくしたち一族は、歯科医療の進歩に合わせて、技術と知識を磨き続けるよう努めています。「歯」には元来「痛み」がつきものです。かつて歯の痛みを解消する主な手段は抜歯でした。時代とともに医療は進化します。歯は抜くのではなく、保存するという考え方が出てきました。2代目・井上稜の時代は、歯の保存治療が盛んになりました。抜かずに治療する方法が普及し始めたのです。戦後、そして高度経済成長期は、むし歯が多くなってきた時代でもあります。こういった時代を経験することで、日本の歯科医療は予防歯科への重要性に気がつき始めました。
困ってからの治療から、困らないための予防へ
現代の歯科医療で重視されるのは、むし歯や歯周病原因の予防です。早期発見・早期治療に努めることは、健康な歯の維持につながります。歯科医療は「困ってからの治療」から「困らないための予防」へと次第に変化してきました。わたくしたちは常日頃から、そうすることを目指しています。
父から受け継いだ予防歯科への取り組み
私が後藤歯科医院に戻って1年ほどたったころ、父は癌に侵され、闘病生活に入りました。それでも父は歯科医院の勤務を続けました。3代目の責任を、きっちり果たした医療者だと思います。父の志は、わたくしが受け継いでいます。父がそうしたように、予防歯科への取り組みを常に念頭に置き、歯科医師活動に励んでいます。「公衆衛生活動として成果も上げている」と、嬉しい評価もいただいています。
歯科医療に対する格差の問題にも取り組みを。地域社会への貢献
地域の健康を守るために、定期的な歯科検診や健康教育に力を入れています。おかげさまで地域の方々が、むし歯や歯周病で困ることが減少してきました。喜ばしいことだと思います。子どもたちも健康な歯と共に成長しています。ただ12歳の子どもたちの中で、むし歯が全くない子が9人、むし歯が多い子が1人という新たな格差が生まれました。これは医療格差の問題や社会的な側面からも、歯科医療を見直す必要があると示していると思います。
こども口腔機能発達支援センターの立ち上げ
むし歯や歯周病に加えて、歯並びや口腔機能にも注目する、これが現代の歯科医療です。歯科問題が全身の健康にも影響を及ぼすことが知られているからです。子どもたちの発達には特に関わるので、重要な課題といえましょう。歯科医師は、これらの問題に対しても新たな解決策を模索する必要があります。この夏、子どもたちの口腔機能発達を支援するために「こども口腔発達支援センター」を立ち上げました。子どもたちの歯並びや口腔機能の問題に対応し、健全に成長できるようにサポートすることが目的です。
(桑名亜季)
歯科医院としての機能だけでなく、子育ても支援できる支援センターへ
2023年7月、わたくしたちの歯科医院の2階に新しいスペースができました。診療台のない2つの大きな部屋です。ひとつは畳張り。道場のような部屋です。もうひとつはキッチン付き。料理教室に似ています。2つの部屋は歯科医院の一部です。でも歯の治療は行いません。削ったり抜いたりしない場所です。わたくしたちは歯科医院として、口腔機能の支援を行うことができます。また街のこども支援センターのように、歯科医院として子育てを支援したいという想いもあります。二つの思いからこのスペースを「こども口腔機能発達支援センター」と名付けました。センター長にわたくし桑名が就任した理由は、わたくしたち歯科衛生士こそ病気の予防に携わる人であると理事長は考えたためです。わたくし自身もそうですが医院には子育て経験をしたスタッフが多く、支援のお役に立てれば幸いです。
口腔機能発達支援センター
口腔機能の発達には乳幼児期が重要。正しく発達させるためには
口腔機能とはどのようなものだとお考えになりますか? 口は食べる器官です。口に取り込み、噛んで、飲み込むところです。話すこともできます。口を閉じて鼻呼吸をすることもできます。よい呼吸が睡眠の質を上げることはご存知の通りです。口腔機能はこのように、生きる上で重要な役割があることをおわかり頂けると思います。乳幼児期の授乳や離乳食、さらに幼児食は、正しい口腔機能を獲得するために重要です。適切な時期に口腔機能をうまく育てられないと、トラブルにつながります。口が開いている、硬いものを嫌がる、食べにくい、活舌が悪い、言葉が聞きづらい… 弊害は様々です。
支援センターでは、トラブルを防止するために毎月クラブ活動を行っています。対象者は乳幼児期の子どもさんです。ベイビークラスは0歳児が対象です。赤ちゃんの口腔機能を育てる授乳方法や、からだの発達と離乳食を支援します。チャイルドクラスは1〜2歳児が対象です。親子リトミックによる子どもさんのからだの発育と、歯みがきの支援です。どちらのクラスにも助産師、保育士、歯科衛生士、管理栄養士ら多彩な職種のスタッフが関わり支援を行います。
ベイビークラス 助産師の発達支援の様子
歯並びが悪いことは口腔機能が正しくないという結果の現れです。間違った機能はあごを成長させません。その結果、歯がきちんと並ばなくなります。こどもの歯並びの矯正治療をし、正しい口腔機能を会得するために、当院では「オルト矯正治療」を行っています。園児や小学生のオルト矯正治療をトレーニングする場として、「こども口腔機能発達支援センター」を活用して頂きたいと思います。
子ども歯並び治療 トレーニングの様子
子育て支援で親子が笑顔になる場へ。ママスタッフも多く在籍しています
今は、子育て情報をSNSで探す時代です。だからでしょうか、子育てに悩む母親が多いのは事実です。おっぱいを飲んでくれない。泣き止まない。あの子はできるのに自分の子はできない。離乳食をあげたいけど食べてくれない… 思ったようにならない。いつまでこの悩みが続くのだろう? 毎日か不安ばかり。特に初めての子育ての場合、わからないことの連続です。ママたちは困惑しきりです。
わたくしも子どもを1人育てている最中です。多くのママ達の話をうかがうにつれ、子育てに正解はないと実感する日々です。子どもの成長は様々。性格も十人十色。「◯ヶ月だからこれができる」と、育児書の記載が我が子に当てはまるとは限りません。こども口腔機能発達支援センターでは、親子の生活やママの希望を聞きながら、子どもさんお一人お一人の発達に合わせて提案をおこないます。「◯◯くんは背中の筋肉が硬いから触ってあげて。ほら、抱っこも丸く授乳しやすくなりましたね」。「◯◯ちゃんは座る姿勢が安定してきたね。椅子に座ってご飯を食べてみましょうか」。こんな具合です。
前回できなかったことが今回はできている、そんな成長をママ達と一緒に見守ることがわたくしたちの喜びです。話を聞いてもらったり、悩みが解決すると、ママ達はみな笑顔になって帰られます。
気軽に立ち寄れる歯科医院へ。患者さんのために今後も貢献していきたい
病院は数々ありますが、歯科医院は病気の予防ができる場所です。健康な人も通える場所でもあります。明らかな問題は抱えていない。”不安”だけでも来ることができる。それが支援センターです。どうぞ気軽にご相談いただければと思います。
井上家4代目として、これからも誠心誠意、地域の皆様の健康と幸せを願って尽力したいと考えています。最先端の技術と常に患者様のニーズに応える歯科医療を提供し続けることをお約束いたします。これからも地域社会に貢献しつづけられるよう、日々努力を重ねてまいります。
行動者ストーリー詳細へ
PR TIMES STORYトップへ