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人々が“出会い、つながり、再会する”「人」を起点としたたびづくり「再会の旅」プロジェクトの現在地とこれから

著者: ツナガル株式会社

ツナガルは「ツナガリを生む」「ツナガリで解決する」「ツナガリを考える」という三つの領域で、事業を展開しています。

その中のソリューションの一つとして、地域と旅人との間に持続的なつながりを創出する旅行商品を造成しています。


ツナガルの旅行事業のユニークな点は、事前に旅人と旅先の人々との間に出会いをつくる、オンラインでの「旅マエ」体験を提供していることです。

さらに、オンラインで出会った人を巡り、関係を深める「旅ナカ」体験まで一連で提供することにより、「人」を起点とした旅づくりを行っています。


人気のある観光スポット「ゴールデンルート」だけではなく、日本のローカルエリアで活躍する人々にフォーカスしたツアーを展開することで、オーバーツーリズムの解消と地方への持続的な観光収益をもたらすことを目指しています。今回のストーリーでは、地域と旅人との間に持続的なつながりを創出する「再会の旅」プロジェクトの誕生秘話と今後の展望についてお伝えいたします。

「人」起点の旅ができるまで。台湾と北海道が出会う旅の企画

台湾の旅人たちを対象に実施した、北海道に住む「漁業」「農業」「酪農」「林業」の一次産業に携わる人々を巡る「再会の旅」になります。


この旅は、ツナガルの台湾出身メンバー・許雅媚(雅)がかつて得た体験から始まりました。



学歴社会の台湾で育ち、農業や酪農に縁遠かった雅ですが、北海道で参加した農業体験プログラムを通して、「一次産業に関わる楽しさ」や「人生設計にゴールデンルート以外の選択肢があることへの気づき」を得られたといいます。


その後、ツナガルのオンラインツアーサービス「LIVE Travelers」の北海道ナビゲーターを経験し、東京での勤務等を経て、雅は再び思い入れの深い北海道に戻ってきました。


旅で見つけた好きな場所に根をおろす -そんな彼女の実体験をもとに、北海道に住む人達を基軸にした旅を通じ、旅人の行動変容を促す「再会の旅」の企画が生まれたのです。


雅とともにプロジェクトを推進する札幌在住のプロデューサー・森村俊夫は、北海道と台湾の人々の双方向にプラスに作用する観光を企画したかったと話します。


旅をプロデュースした森村俊夫(左)と許雅媚(右)


それぞれの生き方や想いを持って一次産業に携わる北海道の人達と交流することで、台湾の人々に、もっといろんな未来の選択肢を見せることができたら。


定番の観光エリアに客足が集中する北海道側にとっても、知られざる魅力を持つエリアを紹介することで、観光収入の分散化や持続的な収益獲得の仕組みを提供できたら。


台湾と北海道の二つの地域の間で関係を構築することで、来訪や購買などの行動を伴う持続的な関係をつくれたら。


そんな2人の想いを受けて立ち上がったのが、この「再会の旅」です。

持続可能な観光への第一歩。北海道の一次産業を「出会い」で応援することとは

北海道は世界でも有数の雄大で美しい自然を有する地域。

土地には、一次産業をはじめ、さまざまな産業が根付いています。


豊かな観光資源を所有する北海道ですが、観光領域においての課題は少なくありません。


ガイドブックで紹介されるような特定の土地に観光が集中することで、自然環境に負荷をかけてしまっていることや、観光コンテンツのプロデュースができていない地域は観光先に選ばれにくく、道内でも収益獲得に格差が生じてしまっていることなど、解決すべき課題があります。


一方で、大学進学率が8割を超える「学歴社会」が進む台湾の教育現場では、異なるバックグラウンドを持つ人々との相互理解を深め、多様性に触れる教育へのニーズが高まっています。


とはいえ台湾の多くの人にとって一次産業は遠い存在。

国土の狭い台湾では農業や酪農ができる土地が限られていることや、就業先として一次産業に目が向けられにくいことなどが理由で、なかなか触れ合う機会がありません。


そんな双方のニーズや課題へむけてツナガルが一つの回答として提供するのが、「再会の旅」なのです。


地域で活躍する「人」を起点にした新しいツーリズムの形で、地方のローカルな文化資源を観光コンテンツとして台湾の人々に提供することで、地域の文化を守りながら、観光収入の分散化や持続的な収益獲得の仕組みづくりを目指します。


「再会の旅」で出会う北海道の人々

「これやって何になるんですか?」社内から疑問の声も

走り出した「再会の旅」の企画。

しかし、そこには障壁がありました。


効率的な観光業は大量搬入、大量消費が基本。

ツナガルがやろうとしている関係作りのスキームはリソースがかかり、ビジネス視点で見ると効率が良くありません。


利益率が高くない観光業においてどのようにこのツアーを収益化していくのか。


大手旅行会社のように、旅行客を目いっぱい送客することは難しい。

しかし、自社の利益を増やすために受け入れ地域に値下げの交渉をすることもしたくない。


「収益化」という壁にぶつかる中で、「これをやって、何になるんですか?」という社内からの疑問の声もありました。


この障壁を乗り越えたのは、多面的な物の見方があったからでした。


1回の旅行で、今日1日で考えると大量搬入型の観光が適しているのかもしれないけれど、継続的にという目線で見れば、関係構築型の観光は意味がある活動なのではないか。

例えば、ある観光地では物を観光地価格で高値で販売していますが、それは人の流入が安定していないから。

観光客流入の見込みがたてられない状態なので、価格を高くせざるを得ません。


けれどもし、国内でも国外でも継続的に買ってくれる人がいたら?

消費者と持続的な関係を作ることができたら、生産者は安心して仕事を続けられ、安定した価格で供給することも可能になります。


捉え方を変えることで、チャレンジすることに新しい意義が生まれたこの企画は、再び動き出しました。

出会う前に「出会う」?「旅マエ」オンライン交流

2023年6月24日には、台湾の旅人と北海道で来日を待つ一次産業従事者の方をオンラインでつないで「旅マエ体験」を実施しました。


「旅マエ体験」の目的は、旅先の雰囲気を事前に知ったり、参加者同士にあらかじめつながりを作ったりしておくことで、旅当日のコミュニケーションを円滑にしたり両者の関係をより強固にすること。





北海道斜里町で漁業を営む圓子瑞樹さんは、名産である鮭の生態や漁の実態について説明をしてくれました。


さらに圓子さんが生産した鮭を使った料理体験や、北海道滝上町にて農業を営む藤村利史さんが生産した和はっかのアロマオイルを楽しむ体験など、五感で楽しむことのできるアクティビティを通じて北海道の一次産業への興味・関心を高める活動を行いました。


北海道の食材を使った料理体験の様子


圓子さんが生産した鮭と藤村さんが生産したミントをのせたカナッペが完成

ビデオレターと手紙の交換。好評だったアナログな体験交流




さらに、来日前の台湾と北海道の人達が心の距離を近くする体験設計として、ビデオレターを用意しました。


ビデオレターで北海道の生産者の口から語られる「なぜその場所で」「どのような思いで生活を送っているか」といった話に台湾の参加者たちは熱心に耳を傾けます。

ここで大きな反響を得たのは、滝上町の酪農家・井上秀幸さんが語る「食のプロセスと命の循環」の話。


台湾ではいま、食の安全やエコフレンドリーへの関心が高まっています。

動物を守っているかどうか、無農薬栽培か、地球にフレンドリーかといったキーワードに注目する彼らを深く印象づけるエピソードとなりました。


ビデオレターのお返しに、台湾の参加者から北海道の生産者に手紙を送りました。

参加者の気持ちが込められた手紙を受けて、きっと生産者も前よりもっと会いたい気持ちを高めてくれたはずです。

そして、「再会」

「旅マエ」交流から2ヶ月後の2023年8月に、ついに二つの地域の人々は北の大地で再会しました。


ツアーでは生産者と参加者が交流しながら、漁業見学、酪農見学や、はっかの収穫体験、料理体験といった、見る・知る・体験するアクティビティを実施。


生産、収穫から口に入るまでの一連のプロセスを体験してもらいました。



旅を経て、台湾の参加者から寄せられたコメントがこちらです。


他の環境に住んでいる人たちがどんな生活をしているか知りたいという好奇心で旅に出ました。

「再会の旅」は、一般のツアーと違って、土地の住民と触れ合うことができます。

ゲストハウスに泊まり、地元の人とたくさん話をしたり案内してもらうことで、北海道に暮らす人々がどのように生活しているかを見せてもらうことができました。

また、この人たちに会いに北海道に行きたいです。


そして、北海道で参加者を出迎えた漁師・圓子さんからのコメントはこちら。

船の案内や魚をさばく体験など、いつも僕らがやっている一連のことを台湾の参加者に案内できたのは良かったと思います。

魚がどんな風に切られてどんな風に食べる状態になるのかというのを、みんな見てわかってくれたと思うので、普段スーパーで魚の切り身を見たときに、今日のことを思い出してくれたら嬉しいですね。

今回のようなかたちでの観光への寄与も、機会があればぜひ続けていきたい。

教育という意味でも、鮭の価値を上げていくという意味においても、魚を漁ってから個人に届けるまでのストーリーを伝えていきたいです。


再会の旅は、「人」をテーマにし、「人」との交流をメインにした旅でした。

だからこそ、双方の心に作用し深く印象に刻まれる旅となったのです。

ツナガル旅のこれから

ツナガルは、今回のイベントを通して台湾と北海道の人々のあいだに持続的な関係を構築することを目指しており、継続して物を売り買いできる環境整備や、次の来日時に向けてのツアーアレンジといった、事後の関係性づくりのための準備も現在進行形で進めています。


さて今後の観光事業の取り組みについてですが、台湾はもちろん、タイや韓国でのツアー催行も視野に入れています。


「来てくれてありがとう」「会えて嬉しかった」と言いあえるような双方向の良い関係、人と人のつながる関係の創出を目指し、ツナガルはこれからもプロジェクトを進化させていきます。


繋日之旅HP




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