伝統織物に新たな価値を!伝統織物に魅せられ創業。出会いが紡ぐものづくり、専業主婦20年からの物語
株式会社ITOHENは伝統織物と異なる素材を組み合わせて、現代の生活スタイルにも合う商品を作っています。ものづくりは単なる制作ではなく、経糸(たていと)と横糸で織物が完成するように、人と人、過去と未来を紡いで新しい価値を生み出す活動です。異なる素材を組み合わせることで、予想を超える未来への可能性を開いていくことが私たちの使命です。
(ITOHEN代表取締役・綿瀬麻意子)
この物語は、専業主婦だったITOHEN代表取締役・綿瀬麻意子がアクセサリーの制作をはじめたきっかけや、伝統織物との出会いやアクセサリー制作の試行錯誤を振り返ったものです。
今までにない立体的で細部までこだわった飛行機型の翼に、日本の伝統織物をまとわせた新商品「飛行機ピンバッジ」の魅力もお伝えします。
限りあるひと時を大切に。ものづくりを通じた、伝統織物との出会い
創業者である私、綿瀬麻意子は結婚するまでの5年間、空港のグランドスタッフとして勤務していました。娘が誕生し、生後半年で夫の転勤で、知り合いのいない埼玉へ移り住みました。その間に経験した産後うつや母の死を通して「死」を身近に感じたことが人生の転機となりました。それまでは「明日は必ずくる」と信じていましたが「限りある人生、一瞬一瞬を大切に一生懸命生きていかないといけない」と考えるようになりました。
生涯をかけて打ち込めるものが欲しいと感じ、自分が本当にしたいことを探しはじめました。すると子どもの頃から図画工作が好きだったことや、産後うつの時に私を救ってくれたスクラップブッキングのことを思い出しました。そこで「ものづくり」をしたいと思うようになりました。
娘が5歳の頃北九州に戻って、レジンを使ったアクセサリーを作って販売をするようになりました。手作り仲間6人で、黒崎のチャレンジショップに出店したこともありました。ある日知り合いの呉服屋さんに小倉織を見せてもらう機会があり、その美しさに魅せられてこの織物を使ったアクセサリーを作ってみたいと思ったのが創業のきっかけです。
(小倉織手織り 一般社団法人豊前小倉織研究会)
当時はレジンを使ったアクセサリーを作っていたので、織物をレジンで加工してみました。織物の美しい色をそのまま見せたいのに、レジンで処理すると色合いが変わってしまいます。そこでレジンで加工しても織物の色合いが変わらない方法を見つけるため、100通りほどの前処理を試しました。そしてとうとう、1年かけて色味の変わらないレジンの処理方法を考案し、実用新案も取得しました。この間に20年近く専業主婦だった私が個人事業主となり、itohen.Mを創業しました
伝統織物の厳しい現状を変えたい。「九州ピンバッジ」の誕生と受賞
(紅型作家 新垣優香さん)
九州をかたどったピンバッジに伝統織物を織り込んだ「九州ピンバッジ」を制作し、2019年の福岡デザインアワードに出品することになりました。当時は小倉織と博多織しか取り扱っていなかったので、九州各地の織元のところへ商談に出向きました。伝統織物について学ぶうちに、着物離れや後継者不足により織物生産量が減少の一途をたどっている厳しい現状も知りました。織元さんから直にどのように伝統を受け継いできたかというお話を伺ったことや、織物作りの現場を見学した経験は、2021年に設立した株式会社ITOHENのビジョンを支えています。
(豊後絞り 豊後遊草会)
九州各地の織元さんの協力もあり、沖縄を含む九州の織物15種類を使った「九州ピンバッジ」が完成し、2019年の福岡デザインアワードで銀賞を受賞しました。
(九州ピンバッジ「72」)
その後も新商品の開発を続け、2023年11月に日本の伝統織物を飛行機の翼に乗せた「飛行機ピンバッジ」を作り、伝統織物の良さを広く伝えて次世代に残せるようにとの思いで、クラウドファンディングに挑戦しました。(2024年1月9日まで開催)
伝統織物を翼に乗せた「飛行機ピンバッジ」企画の経緯
デザインの仕事をしている小学校時代の友人と再会し、その後ご縁がつながって全日空のクラウドファンディングをすることになりました。
昔から飛行機が好きだったことや、空港でグランドスタッフをしたこともあり、全日空のクラウドファンディングをするなら飛行機ピンバッジを作ろうと決めました。全日空の方との打ち合わせでは、偶然私が勤務していた時代にOJTをしてくださった方お二人とお会いすることもできました。
これまで作ってきた平面のピンバッジではなく、飛行機を立体的に表現しようと考えました。試作品第一号は飛行機のような飛行機でないような、微妙な形になりました。どうすれば飛行機らしく見えるのか、翼のシルエットを美しく見せるにはどうすればよいか、10回ほど設計図を書き直し試行錯誤を繰り返しました。
同時に織物をどこにまとわせるのかも検討しなければなりませんでした。織物を入れる部分は金属にある程度の厚みを持たせることと、織物を美しく見せるために面積もそれなりに必要です。翼の部分に伝統織物を入れることに決めて、3Dプリンターで飛行機を作り、織物が収まる金属部分の厚みを緻密に計算しなければなりませんでした。飛行機型の完成まで、8〜9カ月かかりました。
翼に織物を入れる場所は決まりましたが、織物の種類は13種類あり、織物の厚さがそれぞれ違います。そこで布が飛行機の翼部分にピッタリ入るように、布に加工を施して高さを合わせる必要がありました。
翼の面積はとても小さいので織物を翼の形にカットする際には、それぞれの伝統織物の特徴が出せるような部分を使うようにしました。
クラウドファンディングの中断と、再開による出会い
クラウドファンディングをするのは初めてのことで、最初は一人で何もかもしようと思っていました。2023年2月に準備をはじめましたが、知らないことややらなければならないことが山のようにあり、体調を崩したため延期することしました。
春になり体調が回復して再チャレンジをしようと思った時に、思いがけず次々と何人もの協力者に出会うことができました。自然と経糸と横糸でチームができていくような嬉しい感覚でした。
航空宇宙産業で成長を続ける株式会社ひびき精機の専務取締役・松山功さんとのご縁に恵まれました。2023年4月にアメリカで行われたSpace Symposiumで宇宙航空研究開発機構(JAXA)のパビリオンに出展したひびき精機のブースには、ITOHENの飛行機ピンバッジが置かれていました。
松山専務(左)の胸には飛行機ピンバッジ。真ん中の宇宙飛行士・星出彰彦さん、ひびき精機とパートナーシップ契約を結んだオプティマ社のデュエイン・ヘルツェル社長(右)。
飛行機好きのインスタグラマーとの出会いで、飛行機ファンにこのプロジェクトのことを広く届けることができました。
人々を飾るアクセサリーとして、飛行機は羽ばたく。伝統織物が引き寄せる出会いと、想像を超える未来へ
ANA Croudfunding WonderFLYで、2024年1月9日までクラウドファンディングに挑戦しています。第1目標額は達成し、現在333%を目指してがんばっています。
個性的なピンバッジを身につけていたら「会話が弾んだ」「声をかけられた」などの感想をいただき、とても嬉しいです。もっとたくさんの人に知っていただき、伝統織物を次の世代につなげたいと思います。
【ANA Croudfunding WonderFLYプロジェクトページ】
https://wonderfly.ana.co.jp/cf/ideas/1085
【ITOHEN公式HP】
https://www.itohen.shop/
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