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今日が、残りの人生の最初の1日。

SDGsをテーマに能登の魅力をボトルに込めヒット商品を次々生み出すNTG。次なる挑戦ノンアルコール飲料「のトニック」の開発ストーリー。

著者: NTG


#開発ストーリー #新規事業 #ノンアル飲料


2021年に首都圏から、能登半島の最先端石川県珠洲市に移住してスタートした個人事業NTG。のとジンの頭文字をつけたこの事業は、能登半島の魅力をボトルに詰めて多くの方々に知っていただこうと手がけた、クラフトジンの開発・販売を行っています。

2023年から発売を開始したノンアルコール飲料「のトニック」が、地域でヒット商品となり発売後すぐに完売、現在再販を繰り返しています。これまでのご当地サイダーとはちょっと違ったコンセプトでシリーズ化を試みており、2023年12月に第三弾「のトニックゆず」を発表。地域課題をSDGs観点で解決しようと製品化したところ、美味しさが好評で大手百貨店や首都圏の飲食店でも採用が決まった人気商品になりました。

製品開発に込めたこだわりと新商品の魅力を、代表に聞いてみました。


NTG代表 松田 行正(まつだ ゆきまさ)

クラフトジンの製造と能登の魅力発信という目的の合流

いつかは蒸留所で働きたい。そんな漠然とした夢を持ちながら、現実を引き寄せられないまま50歳を迎えようとしていたNTG代表の松田行正。2019年、折からのクラフトジンの世界的な流行に自分の夢を重ね合わせ、具体的な一歩を踏み出そうと模索していました。そんな時に出会ったノトヒバの香り。コロナ禍で室内の除菌、防菌に効果があると注目を集めていました。「これならいけるかも」の直感から、能登半島の植物を調べ始めた松田に、金沢大学能登里山里海SDGsマイスターから声がかかります。「リモート参加で一緒に学んでみませんか?」手を差し伸べられた幸運に、2020年8月から受講を開始しました。学ぶ中で、能登半島にある様々な魅力と課題に触れることで、地域の課題解決とクラフトジンの事業を重ね合わせることで、事業化できるのでは、との思いが高まりました。そして、2021年2月に作った試作品の評判を受け事業化を志し、2021年3月に移住をしました。東京での仕事をリモートで続けながら副業として事業を開始し、現在に至ります。

2022年発売のクラフトジン「のとジン」

能登の魅力を幅広い層に伝えたい。ノンアルコール飲料への挑戦へ

2022年4月に能登のクラフトジン「のとジン」を発表したNTG。これまで国内外で数々の賞を受賞し、高い評価を得てきました。一方で、「のとジン」の事業化を進めていくごとに、課題に直面します。馴染みのないアルコール、珍しいパッケージ、高価な価格などから、市場での浸透が進みません。能登への思い、能登の素晴らしさを伝えたい一方で、なかなか伝わらないもどかしさにいつも悩まされていました。能登を伝えたい、と言う思いだけでは、アルコールの世界では伝わらない。むしろ、もっと広く、どんな方にも、どんなシーンでも楽しんでいただけるには、ノンアルコールの商品で訴求していくことが必要なのでは、と感じていました。ノンアルコール飲料への思いを具体化してみたい、と言う意欲が、アルコール事業をやればやるほど、徐々に高まっていきました。


しかしながら、炭酸飲料やノンアルコール飲料の分野も全くの素人。石川県内には炭酸飲料の事業者はなく、他に生産拠点も分かりませんでしたから、広く全国の事業者様にお声がけして、可能性を模索していました。ある程度の数量がなければ生産ができないこと、低価格帯商品のため数量限定で商品化していくことがとても難しいこと、付加価値をどうつけていくか、差別化はどうするか、など課題はあげればキリがない状況でした。考えを進める度に暗礁に乗り上げ、ノンアルコール飲料の事業化はもうできないのでは、と諦めかけていました。

いくつものコラボレーションが自然発生して開発が軌道に

そんな中2022年夏、能登半島の中心地、七尾市のフレンチレストラン「ひのともり」の日野貴明シェフが独自の健康的で化学調味料を使わないドリンクをお店で提供していて、それがとても美味しいと言うことを知りました。日野さんとは以前から面識があったので、すぐに相談に行きました。日野さんは、コラボレーションでの製品開発に前向きに承諾してくださり、レシピ開発を開始しました。これまでにも日野シェフは能登の自然の恵みを形にしてこられており、地域ではその美味しさで定評がありました。レシピが決まることで、前に進み始めました。


七尾市 フレンチレストラン「ひのともり」のディナーとオリジナルドリンク


その後、2022年11月に参加した産学官連携のマッチングハブの会場で、長岡造形大学の関さんに面白いお話を伺いました。長岡造形大学でデザインを勉強している学生の皆さんでコンペを行って、デザインを採用させていただけるというのです。ちょうどラベルのデザインをどうするか、については悩んでもいましたので、またとないご提案でした。すぐにお願いをさせていただき、学生の皆さんに冬休みの間制作いただくコンペを持たせていただきました。


コンペで採用となった浦山ひなさん(当時長岡造形大学四年生)のデザイン画


またなかなか目処がたたなかった製造拠点の方も、2023年に入り、見通しが出てきました。佐賀県唐津市の小松飲料様をご紹介いただいたことで、少量での製造が可能になる可能性が出てきました。2023年5月に唐津市を訪れ、実際に製造現場を確認させていただき、実現性について相談をさせていただいたところ、十分製造への可能性があることが分かりました。

ところが、実際のボトリングを行うには、大量のシロップを製造しなければなりません。炭酸飲料のフレーバーを決めるシロップのレシピは決まっても、それを実際に大量に作る作業場の確保は大問題でした。そんな中、石川県珠洲市の能登学舎にある「へんざいもん」の沢谷さんがご協力いただけることになりました。「へんざいもん」は、能登里山里海SDGsマイスタープログラム受講生向けに昼食を提供していらっしゃる食堂です。その「へんざいもん」でシロップを作成して、製品化することはマイスタープログラムを通じて学んだ成果を証明することにもなり、またとないオファーでした。

このようないくつものコラボレーションが、自然と重なり、一気に開発が進み、製品化が現実のものになりました。


のトニック初入荷のボトル(珠洲市内の公園にて撮影)

SDGsの理念に基づく資源の有効活用。ゆずの果汁も「のとニック」に採用

石川県珠洲市は、能登半島の先端に位置し、過疎高齢化の社会課題は最先端に進んでおり、将来への持続可能性を常に考えながらの事業展開を迫られます。そうした地域課題を解決するべく、NTGでは積極的に地域の材料の利活用を行っています。今回のノンアル炭酸飲料「のトニック」でも、落葉すれば廃棄されるだけのいちじくの葉や、間伐材として廃棄される月桂樹の葉を採用しています。そして、第三弾のフレーバーとして、課題を抱えていた「ゆず」の果汁を商品化することに取り組みました。


大きく育ったゆずの木


石川県珠洲市には、柚子農家の方はいらっしゃらず、地域の方々がご自宅やご近所で生活の中で消費するために、ご自宅の庭や畑で、数本の木を育てていらっしゃいます。ところが、過疎高齢化のために、柚子の木も徐々に手入れされなくなり、柚子の実も時期がくれば落ちて廃棄されるだけのものも少なくありません。こうした柚子の活用法を考えて、クラフトジンに採用しました。しかしながら、クラフトジンの香り付けで使用するのは、皮の部分のみ。果汁を含んだ実の部分は、酸味が強く、また保存も効かないため、廃棄するしか方法がありませんでした。


SDGsと言いながら、廃棄物を産んでしまう活動に心を痛めていましたが、この果汁を使って「のトニック」として商品化することを決意しました。実は、2022年の柚子収穫時にも、果汁は絞っていましたので、プロセスとしては可能性を感じていました。ところが2022年のものは保存状態も不十分で全て廃棄されました。そこで2023年は事前の準備を行いプロセスを見直し、商品化を目指すことにしました。


皮だけを活用し廃棄してしまっていたゆずの実(2022年撮影)

2ヶ月で2023年製造分の半数以上を出荷。自然派の味わいと柚子の香りが能登の魅力を表現

製品化にあたっては、日野貴明シェフにレシピ開発をお願いしました。柚子の果汁は酸味が強く、そのままではとても美味しく飲めるものではありません。そこで、これまで通り、自然な甘さでやさしい味わいの天然甘味料であるきび砂糖を活用し、味の調整を行いました。その後、より飲みやすくする香りとして、こぶみかんの葉を採用することで、レシピがまとまりました。他のゆず炭酸飲料にはない自然な味わいとやさしい香りが、能登のゆずをとてもよく表現する商品になりました。


年明け1月の発売後は、「とても美味しい」、「お酒に割っても合う」という評価から、2ヶ月ですでに2023年製造分の半数以上の800本を出荷しました。


さらに、今回2024年1月1日の能登半島地震を経験することにより、これまで実を付けていた柚子の木の多くが被害に遭い、今後同じ量の柚子の果汁を採取できなくなりました。今回の「のトニックゆず」の味はこれが最後の商品になります。各地で広がる能登半島地震復興応援の機運も相まって、ますます出荷に拍車がかかっています。


例えば、大阪の大手百貨店京阪百貨店で、のトニックの採用が決まり、フロアに並べられました。さらに、のトニックの美味しさが話題になり、東京渋谷でノンアルコールや低アルコール飲料を提供しているSUMADORIーBAR SHIBUYAでも採用が決まりました。ますますおしゃれで高付加価値のあるノンアルコール飲料の需要が高まる中、能登の香る「のトニック」への注目が高まっています。

試行錯誤を繰り返し、ようやく製品化された「のトニックゆず」

復興への思いとともに能登の魅力を継続的に発信

最後に、これからの「のトニック」事業について、代表の松田行正に聞いてみました。


「能登の魅力を香りで表現しよう、というコンセプトは全く変わりません。この1つのボトルを通じて、能登に思いを馳せていただける方が一人でも多くなることを願っています。今回、能登半島地震で大変な被害を受け、今後の安定した生産も懸念はされますが、復興への思いを少しでも灯し続けるためにも、継続的にのトニックの販売は続けていきたいと思っています。

今年の夏には、新しいフレーバーにも挑戦する予定です。能登の魅力の一つである、健康的で明るく元気で働き者の女性を現代風に表現したボトルラベルもシリーズ化して、製品の魅力を高めていきたいと考えています。

能登の魅力を感じていただき、一人でも多くの方が能登に足を運んでいただけたらうれしいです。」


のトニック3種類のフレーバー ゆず・ローリエ・いちじく




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