教育データを活用した「生徒の主体的で自律的な学び」を促進する機能を、先生と一緒に開発。「Libry」に込めた、子どもたちへの想い
株式会社Libry(リブリー)代表の後藤匠と申します。
私たちLibryは、デジタル教科書・教材プラットフォーム「Libry」を、中学・高校向けに提供しているベンチャー企業です。2024年6月現在、全国約700校の中学校・高等学校に導入され、学習者用デジタル教科書とAIドリル機能によって生徒一人ひとりの個別最適化学習をサポートしています。
ここでは、Libryのビジョンである「一人ひとりが自分の可能性を最大限に発揮できる社会をつくる」ために試行錯誤を重ね、4月に新たにリリースした「学習データレポート」機能に込めた想いや開発の背景について、お話しします。
■ Libryの願い「子どもたちには、これからの社会を力強く幸せに生きていって欲しい」
Libryは、全国の出版社と提携して、教科書や問題集をデジタル化し、書籍のどこを見て、どの問題を正解し、間違えたかなどの学習履歴が蓄積し、その学習履歴データに応じて類似問題や苦手そうな問題をオススメしたり、学習状況を可視化することができるサービスです。
Libryのビジョンは、「一人ひとりが自分の可能性を最大限に発揮できる社会をつくる」ことです。これは私が大学生のときに起業した当初から変わらぬ想いです。(当社創業の経緯にご興味がある方は、ぜひこちらの記事をご覧ください。)
https://note.com/libry/n/n00e2e3b02060
そして、その実現のために必要なのが、「子どもたちを学びの主人公にする」ことです。
グローバル化の進展や絶え間ない技術革新等により、これからの社会は、変化のスピードが急速でかつ将来の予測が困難な「VUCAの時代」と呼ばれています。同時にSNSやネットメディアの普及により価値観も多様化し、今の世の中には「画一的な幸せ」は存在せず、幸せのあり方も、人それぞれの世の中になっています。
そんな時代だからこそ、子どもたちには、人から与えられるのを待つのではなく、自らの価値基準を持ち、自らの意志で決断し、自分の足で自分の人生を走っていけるように成長してほしいと考えています。
文部科学省が今の学習指導要領に込めた願いとして、ほとんど同じことが書かれています。
「これからの社会が、どんなに変化して予測困難な時代になっても、自ら課題を見付け、自ら学び、自ら考え、判断して行動し、それぞれに思い描く幸せを実現してほしい。そして、明るい未来を、共に創っていきたい。」
■ 教育データは使い方次第で毒にも薬にもなる。子どもたちの主体性を育む手助けになる新機能をリリース
蓄積された学習履歴データをさまざまな形で活用できるのが、Libryの特長の一つです。
同時に「テクノロジーによる学習サポート」と「子どもたちや先生の”自分で決めている感覚”」のバランスに非常に気を使って開発をしています。
近年、教育のデジタル化や学習データの活用についてはさまざまな意見があります。
「監視社会のようで怖い」「AIの言いなりになり、”考えない子どもたち”が育つ」といったことを懸念する声も耳にしますが、私は必ずしもそうだとは思いません。
例えば、包丁は美味しい料理をつくることもできれば、人を殺める道具にもなり得ます。車のように、現代社会において必要不可欠なものである一方で、人を傷つけることもあります。「包丁や車はよいものか」という議論をすること自体がナンセンスです。
学習データの活用も同様で、それ自体を論じるのではなく、「どう使うと危険で、どう使うと子どもたちのためになるか」を考え、正しく効果的に使うべきです。
むしろ「教育のデジタル化によって、子どもの主体性を育む手助けができる」というのが私の考えです。Libryはその実現に向けて取り組んでおり、その一つの答えが今回リリースした「学習データレポート」機能です。
■ 先生と一緒に「教育的な意義」を追求し続ける
子どもの自律的な学びを促進するための手段の一つとして、紆余曲折を経て開発したのが、4月にリリースした「学習データレポート」機能です。
この機能は、学習履歴から導き出されるデータに基づいて、個々の学習進度や理解度を細かく分析し、可視化するものです。生徒の主体的で自律的な学習を支援し、先生が生徒の学習状況を把握しやすくすることで指導の質を向上させることを目指しています。
詳細は下記URLのプレスリリースをご覧ください。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000056.000054682.html
Libryに蓄積された学習データを生徒に可視化する仕組みとして、「振り返り機能」という機能はリリース当初から搭載されていました。しかし、もっと生徒の自律的な学習を支援する仕組みを作りたいと、ずっと考えていました。
この機能の開発は、さまざまな先生の意見を参考にして進めてきました。
いくつか印象的だったエピソードをご紹介します。
□ エピソード1:人間はデータを都合よく解釈してしまう
先生に「生徒の学習量のランキングを見せてはどうだろうか?」と聞いたときのことでした。
そのときに、先生は言いました。
「勉強がしたくない生徒は、どんなデータを見ても、勉強をしなくて済むような理由付けにそのデータを使ってしまうんだよね。」
例えば、成績のランキングを出したとします。
そもそも勉強したくない生徒の場合、
- トップの子は「自分はトップだから安心」
- 上位層の子は「自分は上位だし安心」
- 中間層の子は「まだ、下に半分くらいいるから」
- 下位層の子は「自分はまだ最下位じゃないからマシ」
- 最下位に近い子は「どうせやっても無駄だから」
などといったように、どういう状況であれ、その子は勉強しなくて済むための解釈をしてしまうということでした。そのため、生徒がデータを受け取る際の気持ちが重要であるということで、データを見せるときの、先生の声がけが大事だと考えているという話でした。
その話を受けて、このレポートを作成する際に、先生が生徒に声がけがしやすいように、先生用のレポートを同時に出力したり、生徒用のレポートの各グラフの下には「生徒がポジティブな解釈を得られるようなコメント」を表示するなどの改善に繋がりました。
□ エピソード2:データを見ても、その場で「へー」と思って終わり
これは、とある学校でデータを活用した実証実験を進めていたときにわかったことです。
その学校では、定期的に今の「学習データレポート」の前身となるレポートを出していたのですが、レポートが渡されたその場では注意深く見て興味を持ってくれるのですが、その後の学習改善に繋がらない生徒も多数いました。
それは、やる気がないわけではなく、自分の状況をグラフで見ただけでは、次に何をすればよいかわからないようでした。
せっかく自分の状況を把握したとしても、そこから行動の改善が行われなければ、自律的な学びが実現されたとは言えません。
しかし、次にやることを「指示」してしまっては、自律的な学習が実現されない。
そのため、自分が次に何をすればよいのかを、自分で考えられるように「自分が間違えた問題の中でクラス正答率が高い問題」を見せるなど、「自分が次に何をすればよいか」の具体的なイメージが湧きやすくなるようなガイドをつけることになりました。
□ エピソード3:先生は生徒に自信を持って指導ができない
これはたくさんの先生と話をしていく中で、気付かされたことです。
当初は生徒目線のレポートを作っていましたが、先生も、ひとりですべての生徒の日々の学習状況を把握するのは困難だということもわかりました。特に、理科の先生からは「数学や英語と比べて宿題を出さないため、生徒の日々の学習状況が把握しづらい」ということをよく聞きました。
気になる生徒に対して実態に合わせた声がけをしたいけれど、生徒の状況がわからないので、自信を持って声がけができなかったり、そもそも声がけがしづらいという話もありました。
そのため、Excel形式で先生向けに各生徒の学習状況が一覧で見えるようにし、かつ生徒のよい結果や気になる部分を色付けすることにより、先生が生徒に声がけがしやすくなるように改善しました。ここでも、なるべく生徒の学習状況そのものを先生に伝え、先生の言葉で生徒との人間臭いコミュニケーションが生まれるように工夫しました。
他にも先生の意見を参考にした改善を行いながら、「学習データレポート」機能を公開することができました。
□ 教育データは観点別評価にも活用される
学習データは、自律的な学習の促進だけでなく、「評価」にも活用できます。
特に、学習評価の3観点の一つである「主体的に学習に取り組む態度」については、評価が定性的になりやすく公平性を担保しにくい点や、公正さを追求すればするほど先生の負担が増えるといったことが課題となっています。
Libryの昨年度の実証の結果を掲載しておきますので、興味のある方はぜひこちらの記事もご覧ください。
●沖縄県立コザ高等学校との学習データを活用した観点別評価の取り組み
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000057.000054682.html
■ 教育データの利活用を“冷たいもの”から“あたたかいもの”へ
「学習データレポート」機能は、先行して導入していた実証校の先生から多くのよいフィードバックをいただき、複数の専門家からも高い評価をいただいています。
特に、それまでデジタルを敬遠していた先生から「こんなに効果的にデータを活用できるのなら、デジタルを積極的に使っていこうと思う」という意見を聞いたときには、この機能を開発して本当によかったと感じました。
それでも、現在のデータレポート機能はベータ版だと捉えています。
より多くの先生や子どもたちの意見を汲み取り、さらなる改善を続けていくことで、ICT
活用の意義を感じてもらえるサービスにブラッシュアップしていきたいと考えています。
教育のICT化が進む中で、データを活用した教育に対して冷たく無機質という印象を持つ方もいらっしゃいます。しかし、私たちはむしろデータが先生と子どものあたたかいコミュニケーションを生むためのツールになり、より人間味あふれる教育が実現できると考えています。
私たちも、先生や子どもたちと同じ“答えのない課題に向き合う学習者”として、先生方と協働しながら教育データのよりよい在り方を模索していきたいと考えています。
コーポレートサイト:https://about.libry.jp/
サービスサイト:https://libry.jp/
株式会社Libry
所在地:東京都港区芝浦3-3-6 東工大田町 CIC409
TEL:03-4405-3347
設立:2012年5月
代表者:後藤 匠
【お問合せ先】
株式会社Libry 広報担当
メールアドレス:pr@libry.jp
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