既存の社会構造への違和感に寄り添い、問題を可視化する、集英社のウェブメディア「yoi」(ヨイ)
集英社の若手編集者の発案で、2021年9月にローンチしたwebメディア「yoi」(ヨイ)は、心・体・性における個の悩みに寄り添い、“自分軸のウェルネス”を発信するウェブメディア。メンタルヘルスや女性の健康、SDGs、ジェンダーなどのトピックの深掘りやインタビュー記事に加え、ファッションや美容についてもウェルネス視点にこだわった記事を配信しています。誰もが「自分(i)」と「他者(you)」の心・体・性を大切にし、趣味嗜好や社会的属性を超えて「わたしたちの(our)社会」で、お互いを認め合う関係の共創を目指しています。
(画像)「yoi」トップページ
2023年6月にリニューアルし、よりコンテンツを強化。2024年6月現在、月間UU数で前年同月比600%超、PVで400%超を達成し、好評を博しています。先進的な価値観を取りいれた“攻め”のテーマを多く扱いながらも、「安心して読める」との声をいただくことが多い「yoi」。急成長を遂げるメディアの理念とビジョンを、編集長の高井佳子が語りました。
(写真) 「yoi」編集長・高井佳子
違和感に寄り添い、問題の本質を可視化するメディアでありたい
「yoi」のコアターゲットは20代後半から30代前半の女性。その理由は、目まぐるしく価値観が変容する現代において「彼女たちが抱える悩みを、既存のメディアが拾いきれていないのでは」と感じたからだといいます。
(画像)「yoi」サイト画面
高井編集長(以下、高井)「20代後半~30代前半の女性にお話を伺うと、“同じ価値観を持つ友達が欲しい”とおっしゃる方がとても多いです。時代の変化に敏感な彼女たちは、周囲に話しにくいモヤモヤを数多く抱えています。例えば、生理痛を抱えながら男性と同じように働くことを求められること、上の世代から価値観を押しつけられがちなこと、女性が性に興味を持つのは恥ずかしいという社会通念、SDGsや環境問題、社会問題に対する意識や価値観のズレなどです。一方で身近な社会では共感してくれる人が見つけにくいため、同じ価値観のコミュニティとつながりたいと考えているのです。 急速に価値観が変容していく中で、既存の常識に最適化された社会構造に対して彼女たちが抱く違和感に『yoi』は寄り添い、問題を可視化できるメディアでありたいと考えています」
コアターゲットを設定する一方で、それ以外の年代や性別の読者を排除しないのも信条です。
高井「性別や趣味嗜好、社会的属性に関わらず、どのような背景を持つ方が読んでも傷つくことがないよう、一字一句の表現を精査し、コンテンツを作っています。LGBTQ当事者の方のインタビューから、男性の体に関するQ&Aなど、女性に寄り添うだけではなく、あらゆるバックグラウンドの人への理解を呼びかける記事も配信。『男性の生きづらさ』をテーマにした連載も秋に新しくスタートします。昨今、異性間、世代間、時に同性間でも様々な分断が生まれていますが、それらを生む原因のひとつに“知識不足”があると私たちは捉えています。『yoi』は 多角的な情報発信によって、相互理解が進むことを目指しています。新しい価値観を積極的に取り込む世代である20代後半~30代前半女性を中心とする読者に共感していただき、友人やパートナー、父親や母親にシェアしていただくことで、新しい価値観や問題提起が広がっていく――、そんな“正の連鎖”を生み出せればと考えます」
「モテ」「好印象」から距離を置く。「yoi」の提案する“自分軸”
「yoi」を「他にないメディア」として支持してくださる読者も多くいます。その理由は、“モテ”や“好印象”などの他者目線や、“マストバイ”といった正解を押しつけるワードを徹底的に記事から排除していることにあると、高井編集長は分析しています。
高井「誰しも“褒められたい”、“よく見られたい”という思いは抱くものですし、それらを否定する意図はありません。今は個人が複数のチャネルから情報を得る時代。『yoi』の読者にも、他のファッションメディアや美容メディアを併読されている方、SNSから情報を得る方も多くいらっしゃいます。その中で『yoi』を読んでいる間は、他者の評価を離れ、“自分軸”で心地よくいられるための情報に触れていただきたいのです。ファッションやビューティ、メンタルヘルスやジェンダーなど、あらゆる記事において正解を押しつけず、読者が何を選び取るか、その体験を大切にしています。そのため「問いかけ」に徹する記事を展開しているのも特徴です。読者からは、“他にない“唯一無二の媒体だ”というお声をいただく機会も増え、とても嬉しく思っています」
社会構造の問題から読み解く「心のウェルネス」
「yoi」が得意とするジャンルは2つあり、ひとつは「心のウェルネス」です。マウンティングや同調圧力、嫉妬と自慢の関係に関する記事など、公開した記事は軒並み大きな反響を得ました。ただ単に、回避策や解決方法を提案するのではなく、その原因を社会構造の問題と捉えて踏み込んで読み解いているのが特徴です。
高井「例えば、“マウンティング”というトピックは、一般的にはそれ自体を揶揄する切り口や個人の心がけに着地させるような内容の記事が多く見受けられます。『yoi』は、学問としてマウンティングを研究している臨床心理学者の方に取材し、女性が社会的に求められてきたロール構造など、その悩みの出発点から深掘りする記事を配信し、好評を得ました。他にも、アイドルグループ・乃木坂46の元メンバーで、現在は心理カウンセラーとして活動する中元日芽香さんの『推し活とメンタルヘルス』や、カリフォルニアに暮らすライター・竹田ダニエルさんがZ世代の価値観で心・体・性にまつわるさまざまな事象を語る『New “Word” New “World”』など、心のウェルネスをテーマにした連載も豊富にラインアップしています」
もうひとつのジャンルは、「体のウェルネス」の中でも“性”に関する記事です。特に『フェムテック&フェムケアアワード』は、2024年3月に第2回を開催し、大反響に。
高井「経産省の推計上2025年に見込まれる経済効果は約2兆円とも言われ、注目を集めるフェムテックですが、有識者がまだあまりおらず、正しい情報がまとまっているサイトも少ないのが現状です。「yoi」はビューティ業界で定着している『ベストコスメ』のように、吸水ショーツや月経カップなどの生理用品、デリケートゾーンワイプ(ふきとりシート)などのフェムケア用品をはじめ、コンドーム、セルフプレジャーグッズなどをジャンル別に紹介する『フェムテックアワード』を特集。他にも“そこが知りたかった”と思う性の悩みに関しても細やかに情報発信しています。性に関しては、親しい友人ともなかなか話題にしにくく、悩みをシェアしづらいもの。それらを丁寧にすくいあげることも、『yoi』の使命と考えています」
総合出版社として、ウェルネスを共創するメディアのトップランナーを目指す
編集者の多くは、コアターゲットと同世代の20~30代で、皆、集英社の女性向け取材誌でキャリアをスタートさせています。総合出版社が作るウェブメディアとして、内容の正確さはもちろん、最後まで飽きずにおもしろく読了いただくためにエンターテインメント性も追求しています。
高井「雑誌は、熱心なファンを創出してきた“濃い”カルチャーを有しています。『yoi」は、雑誌づくりのDNAを持った編集者の力を結集することで、新たなカルチャー、新たな価値を創出できるデジタルメディアです。読者の中心は、ティーンエイジャーの頃からSNSに触れ、写真などの自身で創ったクリエイティブを発信している世代。ビジュアルイメージへの目が肥えているので、写真やイラストの表現、色使いにいたるまで、視覚的な共感を得るのも楽しく読んでいただくためにはとても重要です。そのため、アートとして楽しめ、統一感のある世界観も大切にしています」
2024年9月からは、「Seventeen」「non-no」「MORE」「BAILA」「MAQUIA」「SPUR」「MEN’S NON-NO」「りぼん」「すばる」の、9編集部に属する若手編集者が「yoi委員」として参画する新しいプロジェクトが発足します。
高井「2024年9月に、『yoi』は3周年を迎えます。『yoi』と各編集部の持つ知見を掛け合わせ、様々な角度から社会性や公共性のある記事を制作・集積する予定です。クオーターライフクライシス(20代後半から30代にかけて人生について思い悩み、幸福感が低迷する時期)を題材にした、文芸作品や漫画作品とのコラボレーションも検討中。総合出版社として、新しいウェルネスの在り方をあらゆる形で社会に訴えていきます。さらに今後、記事が提供する“心地よさ”をリアルで感じていただけるよう、有料のコミュニティ会員制度も準備中。これからも心・体・性の悩みに寄り添い、“自分軸”のウェルネスを共創できるメディアのトップランナーを目指すべく、『yoi』は挑戦を続けていきます。」
◆「yoi」とは…
2021年9月に、集英社の若手編集者の発案でローンチした、新しい価値観を持つ読者に向け、心・体・性のウェルネスに関する情報を発信するウェブメディア。主に20代後半から30代前半の女性の心と体の生きづらさに寄り添い、「自分(I)」と「他者(you)が、趣味嗜好や社会的属性を超え、誰もが「自分(i)」と「他者(you)」の心・体・性を大切にし、趣味嗜好や社会的属性を超え、「わたしたちの(our)社会」で、お互いを認め合う関係の共創を目指す。
「yoi」URL:https://yoi.shueisha.co.jp/
◆「yoi」編集長 高井佳子(たかいよしこ) プロフィール
1996年入社、「non-no」編集部配属。その後「BAILA」、「éclat」、「Marisol」の各編集部に勤務し、各年代のインサイトに精通。2016年「non-no」副編集長に就任、「non-no Web」を立ち上げる。2021年「@BAILA」(雑誌「BAILA」の公式WEBサイト)編集長就任、2023年6月より現職。中学生男児の母。
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