地元の人々の交流を通して地域の文化に触れられるRPG型ファンラン『山賊ワイルドラン』。アクテビティを通して地域課題の解決に貢献する、新しい森づくりへの挑戦
株式会社ミドリカフェは、日本の自然環境を守っていくため、「資源循環」・「環境共生」を大切にした暮らしの提案を行なっているコンサルティング会社です。
これまで主に造園ランドスケープの設計デザイン・施工業務に携わってきましたが、数年前に兵庫県丹波地域で出来たご縁から、森づくりのコンサルティング業務も行うようになりました。
丹波地域全体で取り組まれている「森づくり(里山整備)」に関わる情報の発信や、森づくりに関わる研修会・イベントなどの企画も行ってきました。
本記事では、(株)ミドリカフェが運営に携わっている『山賊ワイルドラン』という丹波篠山市のマラソンイベントを通じて始まった、都市と里山を結ぶ新しい森づくりの形が出来るまでの背景や想いを紹介します。
ウチダ ケイスケ
1972年生まれ。京都工芸繊維大学工芸学部卒業後、造園コンサルタントに約8年従事。
独立後、神戸市東灘区に前身となる「ミドリカフェ」を2005年にオープン。2023年に「株式会社ミドリカフェ」として組織変更。2013年~2015年兵庫県立淡路景観園芸学校インストラクター。2015年~2019年神戸大学大学院農学研究科学術研究員。2019年~兵庫県認定里山づくりアドバイザーを務めている。
荒れ果てた山林の中にも「楽しめるアクティビティー」があれば、失われつつある「里山」の環境の整備につながる。
地域の約8割を山林が占める丹波地域では、高齢化や担い手不足など様々な要因が重なって、山と人との関係が分断され山の中は荒れ果て、獣害や土砂崩れなどの自然災害が頻繁に発生するようになりました。
かつて山と人を結んでいた、「里山」の環境は失われつつあります。
「森づくり(里山整備)へとつながる、何か新しいイベントの企画ができないか。」
古くから付き合いのある(株)なりわいカンパニーの代表・湯川カナさんやスタッフの方々と話し始めたのが、3年前のコロナ禍でした。
世間では、アウトドアや田舎で過ごすことへの関心が高くなっていて、キャンプや地方移住のブームが巻き起こっていました。
弊社も、兵庫県丹波篠山市に事務所と一緒に約5ヘクタールの山林を賃貸し、様々なアウトドアのアクティビティーやワークショップなどを介して、里山整備の体験会などを都市部の方対象に行ってきました。
中でも、山頂付近にある大きな岩場を利用したロッククライミングの体験は、アウトドアアクティビティー好きな私にとってはとても興味深いプログラムの一つとなりました。
当初、その岩場は鬱蒼とした木々で埋もれていて存在すら分からなかったのですが、アウトドアスポーツ好きの参加者さんたちによって、クライミングが楽しめるような空間として整備され、今ではクライミング愛好家たちが集うようになりました。
このように、荒れ果てた山林の中でも「楽しめるアクティビティー」があれば、人が継続的に山の中に入るきっかけになることが分かり、また間伐や道づくりなどの作業を通じて里山が抱える背景や課題について共有できる機会になることも分かりました。
既存のイベントに感じていた疑問。イベント参加者と里山で暮らす人々の間に交流がないのはもったいない。
そこで私たちが次に着目したのが、「マラソンイベント」でした。
もともと、私や共同企画した(株)なりわいカンパニーのスタッフさんが、数々のマラソンやトレランにも参加していたこともあって、「マラソン」と「里山整備」を掛け合わせたイベントができると面白そうだという話があがりました。
その背景の一つに、近年地方でのマラソンやトレランイベントなどが増えていく中で、「開催された地元地域には何が残るのか?」という疑問をずっと抱いていたからです。
丹波地域でも、ここ数年でマラソンやトレランなどのレースが増え、多くの人が訪れるようになりました。
ただ、せっかく豊かな里山環境が残る丹波地域を舞台にレースが繰り広げられているのに、里山で暮らす地元の方と触れ合う機会がないのはもったいないとも感じていました。
「都市と里山の関係性」が出来ているのに、“マラソン参加者は競技に集中、地元の方は声援を送るだけ”という構図は、結局交流をあまり生んでいないように見えたのです。
そこで私たちは、「マラソン」と「里山整備」をより深く融合させるために、地元住民と一緒に「里山文化」を体験できるアクティビティーを要素に加えることにしました。
地元の方とリアルな里山暮らしを体験し、地域の自然文化に触れられる、ファンマラソン『山賊ワイルドラン』。
私たちが企画した『山賊ワイルドラン』は、地域の良いもの(モノ・文化・自然など)を「刈りとる」ロールプレイングゲーム型のファンマラソンです。
4人一組のチームで走り、ただ良いものを「刈りとる」だけでなく、地元地域のリアルな里山暮らしを地元の方と一緒に体験することで、自身の“山賊力(=生きる術)”を獲得していきます。
具体的には、マラソンの道中で間伐や切った丸太を運ぶなどの林業体験があったり、地域の特産物である農作物(落花生・黒枝豆など)を収穫できる農業体験があったり、地元の小学生が探してくれた「地域の宝」を探すアクティビティーがあったりと、地域の里山生活に入り込みながら、地元の方との体験交流を通じて地域の自然文化に触れることができます。
また、レースの途中でお土産などの買い物も大歓迎で、レース終盤に近づくほど荷物が重くなっていき、最終的なマラソンの順位はタイムと重量(刈り取った農作物や購入したお土産などの重さ)の合計点で決まります。
実際の作業を通して地域の問題解決にダイレクトに貢献する、新しい協賛と参加の形。
昨年度に開催された『山賊ワイルドラン』では、(株)アシックス様などの協賛もあり、参加ランナーの総走破距離数に係数をかけた分の放置林を伐採し、その作業経費に協賛金を充てるという新しい試みを行いました。
実際に『山賊ワイルドラン』後の12月に、参加ランナーや協賛いただいた方々に参加いただき、放置林(竹)を82本伐採する“アフターイベント”を行いました。
参加者全員で放置林を伐採し、コースを開拓したことで、新しいマラソンのスタート地点が整備されました。
今回の協賛イベントを通じて、単に協賛金を開催経費に充てるのではなく、参加者がレース中に流した汗や、実際に作業した手によって、地域の問題解決にダイレクトに貢献していくという、新しい協賛のあり方を見出すことができました。
また、参加したランナーもマラソンを走って終わりではなく、その後の放置林の整備を通じて、自分たちが走るマラソンコースの環境整備にも参加するという、新しい形の「都市と里山の関係性」を構築できたことが、大きな成果だったと感じます。
『山賊ワイルドラン』は、今年も10月29日(日)に開催されます。
ぜひ、里山との新しい関わりを体験してみませんか?
(写真提供:NPO法人リベルタ学舎 川本まい)
【会社情報】
株式会社ミドリカフェ
〒669-2713 兵庫県丹波篠山市倉本141
代表取締役:ウチダ ケイスケ
【関連情報】
山賊ワイルドラン&炎の宴
行動者ストーリー詳細へ
PR TIMES STORYトップへ