「夢」か「安定」か? 〜超就職氷河期に二度内定を捨てた話し PART7 〜

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こうして無事にポジショニングが完了し、僕ら6人のグループディスカッションが始り、司会進行の彼がスムーズに話しを進めてくれた。

「まず、もらった資料からこの企業の問題点が何か話し合いましょう。そうですね、時間は10分間にして、各自が思う問題点を話し合いましょう。」

僕は内心「なんやこの人!実はコンサルの人!?学生に混じりながら本物がおった!?!?」などとアホなことを思いながらとても感心していた。

今までのグループディスカッションで「手練れ」が居なかったので、僕は初めて熟練者の人を間近で見ることが出来たのである。

「みなさん、何か思う問題点はありますか?」

「そうですね、、、新しく始めた企画の売り上げが良く無いような気がします。」

「確かに、それにお客様の声でもクレームが上がっていますね。」

などなど、みんな自分が思う意見を話し合っていた。

ちなみにディスカッションの内容は、ある大手企業の事業の中で売り上げが悪い部分がいくつかあり、それに対してどういったコンサルができるか?というもの。

こう聞くと自分がバリバリのコンサルの人のように思うだろう?ふふふ、完全にただの学生ですよ。ただの。笑

そんな冗談を言ってる余裕は無く、僕らは10分間とりあえず思いつく原因を出し合った。

「10分経ちましたー!」とタイムキーパーの人が言った時は、ラーメンで3分待っているより早いやろ!と感じたほどだった。

「じゃあだいたいの問題点は出たと思うので、その問題点についてどういった改善策があるのか考えていきましょう。」

僕はこの人のことを学生に扮したコンサル生ではないかと思った。

明らかに他の就活生とは違ってリーダーシップの発揮の仕方、ディスカッションの進め方をマスターしている。

「いったいこの人は何者なんや?」と僕は考えていた。

改善策を考えるのにも時間を決める必要があるといって15分間ディスカッションすることになった。

「ではみなさん、この問題点についてどんな改善策があると思いますか?」

彼の言葉がグループに響き渡った。

「僕はこの新しい事業をやめた方がいいと思います、、、そんなに売り上げも取れてないし。」

「私もそう思います。お客様からのクレームも出ていて、これが赤字の原因かと、、、」

「おぉ!この場面だけ切り取ってみたら僕らはもう一端のコンサル人だ!!」などと恥ずかしいことを考えながら、僕もディスカッションに参加していた。

とりあえず思いつくままに解決策を出していき、それを進行役の人がうまくまとめてくれた。

実力あるリーダーがいるだけでこんなにもディスカッションがまとまるものなんだと僕はその時学んだ。

そして15分間は過ぎ、ディスカッションの残り時間はあと半分となった。

「じゃあ解決策も出たことですし、これを発表できるようにまとめていきましょう!」

そう言うと彼は、書記の人が書いてくれた解決策案の紙をみんなに見えるように広げてくれた。

「色んな案が出ましたが、大まかに分けるといくつかのカテゴリーに分かれると思います。それをみんなでまとめていきましょう!」

「なるほど、こうやって出た案をまとめると発表しやすくなるんだな!」僕は心のメモ帳にこの戦法をばっちりとメモった!

(後に僕はこの方法を多用しまくったのである!)

彼の話したとおり出た解決策は3つくらいのカテゴリーに分かれて、ずいぶんとキレイな形にまとまった。

その時点で残り10分、バッチリすぎるタイムスケジュールである。

「じゃあ形もまとまった事ですし、残りの10分間は発表するための練習に使いましょう。石本さん、何か発表したいやり方はありますか?」

その質問に僕は肝心なことを思い出した…

「そうやー!!俺が発表するんやったわーーー!!!(泣)」

50分という長丁場と、彼のあまりにうま過ぎる司会進行に、自分が発表することをすっかり忘れていた。

「そ、そうですね、、、なら僕は前の方を発表します。」

前の方って何や?と自分で思いながらも僕は必死になって答えていた。

なら前半部分はお願いします!と彼は僕の言葉を理解してくれて、僕らは発表の練習をしていた。

書記の人がキレイにまとめてくれていたのでほとんどその内容を音読するだけでじゅーぶんだった。

発表の練習をした後、細かい部分の修正を加えてディスカッションの時間は終わりを迎えた。

「はい!みなさんお疲れ様でした!では今から発表の時間にしたいと思います!」

前に立っていた中村さんがいつの間にか司会をしていた。

「ではグループ代表の方は前に出て発表お願いします。まずは、、、Aグループの代表の方、お願いします!」

僕はその瞬間凍りついた。

テーブルの上にあったグループ名には間違い無く「A」と書かれていたからだ。

どっからどう見てもそれは「A」。逆さに置いたとしても絶対に「A」としか読めない。

僕はすぐさまCグループに逃げ込んでやろうかと思ったがそんなことは出来ず、まるで公開処刑を受けるかのように前の方へと進んでいった。

心臓の音が早くなるのが分かった。

前に立ってみると自分が思っていた以上に会場は広く100人以上の学生と会社の方々の視線が僕らへと向かった。

「ええい!読むだけや、、、読むだけや石本!わかっとるかー!!」と僕は自分に謎の喝をいれて紙を握っていた。

そして中村さんが笑顔で「はい、ではAグループの発表をお願いします!」といって拍手をすると、会場みんなも拍手を始めた。

「こりゃ大ごとになってきたわ、、、」

今更、自分が立候補したことを悔やんでも後には戻れない。

静まり返った会場の中で、僕は第一声を話した。

「、、、それでは、今からAグループの発表をしたいと思います。」

どうやら「ちゃんと挨拶から始めないといけない」という理性だけは残っていたようだ。

「Aグループがディスカッションした結果、僕たちの解決策については、、、」

スムーズにディスカッションを行えたおかげで、発表自体は詰まること無く話せた。

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