「お腹の子は、無脳児でした。」~葛藤と感動に包まれた5日間の記録~

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次話: 「お腹の子は、無脳児でした。」最終話 ~妊娠498日の約束~

「一人の男」に戻ったのだと思う。


無気力、倦怠感。重い。

何度か「つらい」と呟いた。


気がつけばまた、

「なにがいけなかったんだろう」

「どうしてこうなったんだろう」

と考えてしまっている。


「失ったものを嘆くより、

今あるものに感謝する。」

(生きられないことより、

今生きていることに感謝する)

って決めたのに。


昨日はなちゃんに、

偉そうにもの言ってた自分が嘘みたいに思える。


妻の7月9日

「やっぱり、会いたい」


この日の夜は、

中期中絶がどれ程痛いものなのか。

ネットでいっぱい検索した。


情報は全て読みつくした!

と言えるくらい、読んだ。


やっぱり痛いしツライし苦しいらしい。

読んでホッとできる情報なんて、

何一つなかった。


入院前日になって、

やっぱり赤ちゃんに会うべきじゃないのか?

という思いが強く出始めた。


でも恐怖心もまだまだあるから、

まずはわが子に会う練習として、

「無脳症」で画像検索をしてみることにした。


よし。見れた。

しっかり見れた。


誰の子かわからない子が見れて、

自分の子が見れないわけがない!


でもいざ会った時に

「かわいい」

と思ってあげられなかったらどうしよう、

と不安になる。


決心する。


不安になる。


の繰り返しだった。


会った時の自分の思いや感情に自信がなくて。


でも、親に顔すら見てもらえない赤ちゃんを思うと、

ひどい親だよなと落ち込んで。


はんちゃんに相談。


「俺は迷わず会うし、

会うのが楽しみなくらい。

俺がはなちゃんなら、会う。


でも、加藤さんが言うように、

会わないのも間違っていないとは思う。


色々な経験を踏まえた上で、

前に進むために映像として

残さなくていいと言う意見。


それも正解なんだと思う。

ただ、どちらを選んでも、

とにかく後悔をしないように。


後で会いたくなっても、

もう二度と会ってあげられない。」


正直不安はあるけど、

でも私だって自分の子に会いたい。


よし。

決めた。


会う。


加藤さんに明日伝えてみて、

それでも会わない方がいいと言うなら、

その意見を聞いて自分が納得したら会わないし、

それでも会いたい!と思ったら素直に会う。


なんかスッキリ。

後は自分が痛みを受け入れられるかの覚悟だ。



夫の7月11日

「妖精に会った」5:30






カーテンを閉め忘れたおかげで、

5時半に目が覚めてしまった。


台風が直撃した入院初日から一夜明け、

こんな日に限って素晴らしく良い天気だ。


ついに、はなちゃんが出産する。

ついに、赤ちゃんと会うことができる。

ついに、赤ちゃんとお別れする。



妻の7月11日

「妖精に会った」8:30

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