小学生のA君から教わったつながりの話
私がキャンプリーダーだったグループに、A君がいた。
その子は小学校の中学年あたり。
ADHDの症状があるといわれていた。
私がA君と一緒になると知ったとき、正直不安だった。
他の子どもたちとうまくやっていけるかな。
私はうまくやれるかな。
グループのメンバーが最初に出会ったとき、不安が的中した。
A君は、静かにしなければいけないときも、大声で話しかけ、じっとしていられない様子だった。
上級生の子が正していたが、明らかにいらだっていた。
心配が増した。
移動が始まってからも、A君はしっかりと歩かない。
体が小柄なせいもあるのだが、すぐに疲れてしまう。
リーダーや上級生の子の手や肩を掴んで、体を預けようとした。
上級生ははっきり嫌がっていた。
私にもつっかかってきた。
しばらくの間、私は適当にさせたいようにしていたが、どうにもたまらなくなってきて、「やめてよ」と手を払った。
A君はそれから私に近づかなくなった。
「○○(私)は怖い」
そういって、A君は他のリーダーのほうに体を預けるのだった。
私は、ちょっと途方に暮れた。
A君はこのままキャンプを続けていけるのかな。
どうしたらいいのだろう。
自分がA君を嫌いになってしまう気持ちに襲われた。
あれは、キャンプ2日目の夜だったと思う。
私のグループでは、一日の終わりに絵を描いてその日一日をシェアリングする。
私がその日提案したテーマは、「今の気持ち」だった。
こども一人一人の趣向を凝らした絵が、感想と共にカンテラの中で踊っていた。
A君の番になった。
A君は画用紙の真ん中に小さなマルを書いて、その外側に七色の円が何個も囲んであった。
A君はゆっくりとこう言った。
「僕が真ん中にいる。周りにリーダーやみんながいる。僕はとても嬉しい。」
私はその瞬間をよく覚えている。
その時私は、A君の絵から暖かい空気が吹き出して、自分のグループをしっかり包んだように見えた。
ほっこりと暖かい空気に包まれたような気持ちになった。
それから、私は思った。
絶対にこのグループは大丈夫。
嵐が来ようが、何が来ようが大丈夫だと思った。
なぜなら、A君の言葉は、A君だけの言葉だけではなくて、みんなの言葉であり、私の言葉のような気がしたから。
そうだ。
みんなつながっている。
みんな人は違うけれど、同じキャンプに集まってきた仲間たち。
そして、私もみんなとつながっている。
私は、A君のことを疑おうとしていた。
けれど、何と言うこともない。
私の小さな見識や不安が招いたものにすぎなかった。
A君は今も歩いている。
彼のペースで。
それがどうしていけないというのだろう。
一緒に行こう。
私と一緒に。
A君は私の大好きな仲間になった。
相変わらず、歩くペースは全体と比べて遅かったけれど、グループで楽しく歩いた。
時には休んで、空を見上げた。
A君はいろんなことを教えてくれた。
虫のこと、学校のこと、自分のこと。
みんな大丈夫。
遠く離れていても、二度と会わなくても、私たちはつながっていて、共に歩いている。
全部、A君が教えてくれたこと。
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