避病院の記憶

私の記憶で最も古いものは「病院の給食調理室のドア」だ。祖母に背負われて、その背中越しに白く塗られた木の枠と磨りガラスのドアを見ているというもの。そのとき嗅いだ美味しそうな匂いまで覚えている。
4歳だった私は持っていたおはぎと柿、お彼岸だったから青柿を、年長の誰かと交換して食べたのだそうだ。そしてひどい下痢をして疫痢と診断され、避病院に入院させられたらしい。当たり前だが、死にかけていたので、この辺の記憶はない。
記憶しているのは、給食調理室のドアと、病室のドアの横でクレゾール液で手を洗っている母の背中だ。
母の背中はまだ病状が悪かった頃で、給食調理室のドアは快復してからのものだと思う。おなかがすいてたまらず、「ご飯はまだか、まだか」とうるさかったと、後で祖母から聞かされた。マッシュポテトが美味しかった。
それにしても青柿を食べてみたり、避病院の給食を美味しいと思ったり、食に関する好奇心は生来のもののようだ。

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