農業に絶望した僕が、ある包丁研ぎ師さんに救われた話
前向きな笑顔を作っている裏側で、
心の中ではこんな暗い気持ちが
どんどん大きくなっていたのです。
そして、決定的とも言える出来事がありました。
今まで一番信頼していたお客様に
こんなことを言われたのです。
「うーん……このジャガイモ、高いねぇ。
もう少し安くならない?」
と。
その方のお気持ちはすごくわかります。
家計のやりくりをしながら買って下さっているので、
その言葉やお気持ちはすごくわかるのです。
でも、アタマではわかっても僕の心はもう限界でした。
たぶんその瞬間、僕の中で何かが切れました。
「こんなこと、もうやめよう……」
そう思いました。
そして、以前のように
農作業に打ち込むことはなくなりました……。
* * * *
それから数ヵ月後、
農業から離れた僕の心は、全く別の場所にいました。
その居場所は、ネット。
インターネットを使ってビジネスをすることに
精力を傾けるようになっていました。
もともと小説を書く仕事をしていた僕は、
その文章の経験を活かして
誰かのお手伝いができないかと取り組んでいたのです。
そんな中、めぐり会って下さった方がいました。
それが、
「包丁研ぎ師」さんです。
とはいっても、今は本業で別のお仕事をされており、
包丁研ぎはこれからスタートされるとのこと。
同じように、ビジネスを始める者同士、
交流を持たせていただくようになりました。
そんな中、スカイプでお話ししているとき、
こんな不思議なことを言われたのです。
「ぼく、包丁の声が
聞こえるんですよ」
と。
「は?」
という感じですよね……。
僕も初めて聞いたときは意味が分からず、
きょとんとしてしまいました(^^;
「は?」
って…………。
ですが、よくよく話を聞いていくと、
何となくその意味がわかってきます。
毎日毎日 人の手に触れている包丁は、
その使い手の感情などに反応し、
メッセージを内包するのだそうです。
そして、そのメッセージを、その包丁研ぎ師さんは
包丁を研ぐ過程でキャッチすることができるのだとか。
「ホンマかな~~?」
そんな疑念もありましたが、研ぎ師さんの口調は
「当たり前ですよね?」と言わんばかり。
さらりと話される包丁研ぎ師さんに、
僕は引き込まれていきました。
「包丁の声が聞こえるかどうかはともかくとして、
この人になら 一度 包丁研いでもらいたいなー」
ビデオ通話の向こうの 笑顔と柔らかな雰囲気は、
そんな風に思わせてくれます。
そんなわけで、ちょうど
うちの包丁の切れ味が悪くなっていたこともあり、
実際に包丁研ぎを依頼することにしました。
もちろん、その
「“包丁の声”を伝えてもらう」サービス付きで♪
* * * *
研ぎ師さんのもとへ包丁を送ってから数日間、
「まあ でも、そんな大したことも無いだろう」
「“包丁の声”って言ったって、
結局は 主観で起こってくるメッセージだもんねー」
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